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第45回:十一月十五日の奇跡
「坂本龍馬、覚悟!」
刺客たちが狭い二階に雪崩れ込み、一斉に刀を振り下ろした。だがその瞬間、龍馬は床を這うタマを捕まえようと無様に五体投地のような姿勢で伏せた。
「待ちやタマ、懐に戻れと言うに!」
龍馬の背中のすぐ上を数本の白刃が空を切る。刺客たちは驚愕した。
「……なんと、伏せながら躱しただと!? おのれ!」
再び横薙ぎに振られた刃を今度は龍馬がタマに手を噛まれ「痛いっ!」と飛び上がった拍子に絶妙なタイミングで回避した。刺客たちの目には、それが計算され尽くした神速の身のこなしに映っていた。
「この男、動きが読めん。まるで猫の様ではないか!」
「……猫は僕だよ。この男はただ、僕に振り回されてジタバタしてるだけの、みっともない人間さ」
タマは三本の尻尾を器用に使い、飛んでくる火鉢や茶碗を叩き落として刺客たちの足元を混乱させる。
「おんしゃあら、軍鶏も持ってこんと人の部屋で何をしちゅうがぜよ!」
龍馬がキレて落ちていた鞘を振り回すと、それが偶然刺客の眉間にクリーンヒットした。阿鼻叫喚の混乱の中、龍馬はタマを抱きしめ奇跡的にまだ五体満足で立ち尽くしていた。




