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第43回:タマの悪い予感

慶応三年十一月十五日。近江屋の二階では、龍馬と中岡慎太郎が火鉢を囲み風邪気味の龍馬が鼻を真っ赤にしながら軍鶏鍋が届くのを待ちわびていた。

「寒いぜよ……タマ、懐に入って温めてつかぁさい。おんしゃあ、本当にあったかいからのう」

龍馬がいつものようにタマを抱き寄せようとしたがタマは、鋭い声を上げてその手を撥ね退けた。

「……今日の君は、死ぬほど縁起が悪い匂いがする。髭の先がさっきからビリビリして、おかしくなりそうな位なんだ」

タマは部屋の隅々を警戒し、何度も襖の向こうを睨みつけた。その尋常ではない様子に龍馬もようやく顔を上げた。

「……そんな怖い顔して、わしが鼻かんだ紙をまたタンスの裏に隠したきに怒っちゅうがか?」

「馬鹿な事言ってる場合じゃない、そんなことより今すぐここを出るんだ。君にもしもの事があったら誰が僕を世界の海へ連れて行くんだよ!」

タマは、龍馬の裾を必死に噛んで出口の方へ引きずろうとした。

「わかった、わかったき! 軍鶏鍋が来たら、真っ先にタマの分を分けてやるきに……」

龍馬が呑気に笑ってタマを抱き上げたその時、一階から「十刻とつこく!」と叫ぶ足音が響いた。タマの警告は、ついに最悪の形で現実になろうとしていた。

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