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第39回:バックレ龍馬
無欲の聖人と絶賛された龍馬に新政府は「せめて相談役として会議へ!」と連日の招待状を送った。だが、龍馬は潜伏先の布団の中で出席を拒んでいた。
「タマ、しっちゅうか?相談役なんて物は名ばっかりで給金は大臣の半分以下じゃ。それなのに会議には毎日出ろと、そんな割に合わん話があるかえ!」
龍馬にとって、金にならない名誉など空腹時の絵餅に等しかった。
「……大臣になれなかったのは、君の日頃の行いの悪さだろ。自業自得を聖人君子にすり替えられたんだから大人しく隠れてなよ」
「わかっちゅう! だからこうして、隠密行動のフリをしてバックレとるんじゃ!」
龍馬が路地の台車の裏に身を潜めていると周りでは役人たちが血眼で探していた。
「坂本先生がいない! さては新政府の財政難を予見し、独りで海外資本との極秘交渉に向かわれたのか……どこまで先を見据えておいでなのだ!」
「……ただのケチな給料泥棒が今や日本の救世主扱いだ。世も末だよ」
タマがゴミ箱の上であくびをする中、龍馬は「安い給料で働かされてたまるか」と鼻をすすりながら泥にまみれて逃走を続けるのであった。




