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第38回:ポストはいらん

新政府の役職を記した目録を前に龍馬は、一人ニヤニヤが止まらなかった。

「外務大臣、坂本龍馬……ええ響きじゃ。タマ、わしが大臣になったら、おんしゃには最高級の鰹節を毎日用意しちゃるき」

龍馬は「明日までに返事をする」と見栄を切り、内心では既に大臣気取りでいた。だが、その晩、タマが冷たく言い放った。

「……正気かい? 君みたいな計算もできない、約束も守れない男が大臣なんてなってみなよ。日本は夜明け前に沈没して、魚の餌食になっちゃうよ」

「な、何を! わしが大政奉還を……」

「あれはアンタの寝言を後藤が勝手に勘違いして書いただけでしょ。君は、ただ寝ぼけて寝言を言ってただけ。分をわきまえなよ、また噛みつかれたいのかい?」

タマに痛いところを突かれ一晩中泣き明かした龍馬は翌朝、腫らした目で後藤の前に現れた。

「……わしゃあ、ポストは要らんがぜよ。世界の海へ……行くきに……」

声を震わせ、涙を飲んで辞退する龍馬の姿に周囲は震えた。

「なんと……私心を捨て、次代に全てを譲るというのか!坂本君、君は無欲の聖人だ!」

龍馬は聖人と崇められながら「噛まれるのは嫌じゃき」と号泣するのであった。

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