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45 僕の機嫌が悪い理由 ④

「剣は論外」「素手の組み手も嫌だ」と言われ、仕方無く手合わせは棒術で行う事にした。


実際日常の捕り物なんかだと棒術の出番が一番多い。

大抵は相手に手傷を負わせずに捕らえなければならないからだ。





――――――ガツッ!!


鈍い音と同時に白木の棒が空中に跳ね上がる。


一瞬前までクリムヒルトの掌にあった物だ。


「つッ…!参った、降参だ」


「じゃあガレ隊長、もう一戦お願いします」


「………勘弁してくれー」


「もうかれこれ半刻は打ち合ってると思うぞスォード。俺達もそろそろ仕事に戻らないと」


「じゃあ、最後に2対1で」


「……お前さんどんだけ体力有り余ってんだ。騎士時代にどんな鍛え方したらそうなるんだ!?」


「――――どんなって…普通に?」


「嘘つけ!!」


「君の普通は普通じゃないから」


失礼な。


でもまぁ、戦闘に特化した騎士と武官と文官を足して割ったような都市警備隊の隊員じゃ、鍛え方が違うのは当たり前なんだけど。

そこは『職業軍人と警察官の差』てやつに近いかもしれない。


「………にしても、アレはどうにかならないのかいスォード」


クリムヒルトがえらく微妙な顔で顎を引いた方向を見ると、中庭の石畳の上にでろんと横たわる物体が目に入った。


「―――――――しかばねだな…」


ガレが生暖かい目で呟く。


飛来したその日に散々暴れて電撃撃ちまくり、南支部を恐慌状態に落とし入れた獣は現在、行き倒れのていで半ば魂を飛ばしたような姿に成り果てている。


「今なら多分踏んづけても反応しませんよ。試してみます?」


「………これはあれか、お前んとこの嬢ちゃんが原因か」


「もうかれこれ三日はこんな感じだけど、流石にかなり弱ってるんじゃないのかい?」


「死にゃしませんよ。僕としてはあの子の暑気当りの方が心配です!只でさえ食が細いのに、殆ど何も口に出来なくなってしまって――――」


思わず拳に力が入る。


老医師の豆知識によれば天翅はかなり標高の高い土地――――つまり気温の低い場所で生活していた可能性が高いという。

ミスルギのように温暖な気候の地域での夏は、あの子にとってかなり厳しい環境であるらしい。

殺しても死なないような凶悪生物の心配なんかしてる場合じゃない。


「それにしてもこう暑さが続くとなぁ……」


「ああ…」


「何か懸案でも?」


「――――ヒクイドリだよ。猛暑になると活動範囲を広げて南から北上して来るんだ」


クリムヒルトの説明によると、それは一種の災害のようなものらしい。


ミスルギから更に幾つも国を跨いだ南の地域から、かなり大型の猛禽類が群れを成してやって来て、家畜や作物を荒らすのだという。

おまけに鳥の癖に夜目が効いて、人の寝静まった夜中を狙うため対策が遅れ、毎回壊滅的な被害を被ると。


僕が中央プラティスから南部エムローザに移り住んでからこっちの期間は襲撃が無かったため、寝耳に水の事態だ。


「――――前回は7・8年前だったか?まぁ、決まった周期があるわけじゃないからかなり間が開く事もあって、油断した頃にやって来る厄介な相手さ」


「……ちなみに大きさは?」


「子牛や羊を掴んで飛べるサイズだ」


おい!!!!


それは本当に鳥なのか!?


……………鳥……………。羽根がある。


嫌な予感がする。






























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