34 誓い
そのひとは“彼女”によく似ていた。
いつも見る夢であたしが大好きだった友達に。
周りの状況に付いていけず、混乱して取り乱してばかりだったあたしを根気強く宥め、気が済むまで甘えさせてくれた、やさしいひと。
あんまり似ているから、何だか時々勘違いしそうになる。
“違う人”なのに。
どうして?って思うくらい大事に甘やかされて、いつの間にか“彼女”と同じくらい大好きになって。
そしたら急に怖くなった。
“彼”とあたしの間には、何の繋がりも無いと気が付いてしまったから。
友達じゃない。家族でもない。
眠りから覚めた瞬間、夢が消えるみたいに“彼”もあたしを置いて居なくなるような気がして。
たまらなく怖かった。
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それから数時間後。
体調が戻って正気(?)に返ったシュシュは、あの後運び込まれた寝台の上でキョトンとした顔を僕に向けた。
………うん。まあ、そうだよね。
半ば意識が飛んでたし。
無意識に口走った(声にはなってなかったけど)内容まで覚えてるはずないか。
ほんのちょっとだけ残念な気持ちもあるけど、僕にとって一番重要なのは彼女の記憶の有無じゃない。
例え現在のシュシュが真珠と全く無関係な存在だったとしても、もう既に手放す気なんか更々無いし。
どうやって君に伝えよう?
誰よりも何よりも、君の近くに在りたいのだと。
強すぎる執着をいきなり露にして怯えられでもしたら、本気でヘコむ。
ここはひとつ慎重に………………。
再びぐるぐると思考のループにはまりかけていたら、不意に柔らかな腕が首に絡まってきた。
いつものしがみつくような仕草とも違う、ふわりとした抱擁の感触に僕が戸惑っていると、頬に唇が寄せられて、ちゅっと可愛らしいキスをされる。
いままで散々僕の方からはしてきたけれど、シュシュが自分からキスをくれたのは初めてだった。
熟れた苺みたいな真っ赤な顔で、ふるふると震えながら小さな唇が懸命に紡いだ言葉の形は。
『 はなれないで そばにいて 』
「―――…シュ…」
―――― ぷちん ――――
この瞬間、獣化した僕を誰が止められようか。
細い頤を捉えて唇を合わせ、角度を変えて何度も深く繋がる。
逃げる小さな舌先を追いかけて更に奥まで侵入し、舐る。
もっと、もっと、と。
息を奪われ、酸欠一歩手前のシュシュに胸元を叩かれて漸く我に返れば、シュシュは息も絶え絶えの様子でくたりと崩れ落ちた。
「――――うわっ!またやり過ぎ…っ」
赤い顔で恨めしげに見上げてくるシュシュを抱き返しながら、その耳許に願いの答えを囁く。
『――――離さない』
………見た目10歳の相手にナニやって……。




