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34 誓い

そのひとは“彼女”によく似ていた。

いつも見る夢であたしが大好きだった友達に。


周りの状況に付いていけず、混乱して取り乱してばかりだったあたしを根気強く宥め、気が済むまで甘えさせてくれた、やさしいひと。


あんまり似ているから、何だか時々勘違いしそうになる。


“違う人”なのに。


どうして?って思うくらい大事に甘やかされて、いつの間にか“彼女”と同じくらい大好きになって。


そしたら急に怖くなった。


“彼”とあたしの間には、何の繋がりも無いと気が付いてしまったから。


友達じゃない。家族でもない。


眠りから覚めた瞬間、夢が消えるみたいに“彼”もあたしを置いて居なくなるような気がして。


たまらなく怖かった。   






********************






それから数時間後。


体調が戻って正気(?)に返ったシュシュは、あの後運び込まれた寝台の上でキョトンとした顔を僕に向けた。


………うん。まあ、そうだよね。

半ば意識が飛んでたし。

無意識に口走った(声にはなってなかったけど)内容まで覚えてるはずないか。


ほんのちょっとだけ残念な気持ちもあるけど、僕にとって一番重要なのは彼女の記憶の有無じゃない。

例え現在いまのシュシュが真珠と全く無関係な存在だったとしても、もう既に手放す気なんか更々無いし。


どうやって君に伝えよう?


誰よりも何よりも、君の近くに在りたいのだと。

強すぎる執着をいきなりあらわにして怯えられでもしたら、本気でヘコむ。

ここはひとつ慎重に………………。


再びぐるぐると思考のループにはまりかけていたら、不意に柔らかな腕が首に絡まってきた。


いつものしがみつくような仕草とも違う、ふわりとした抱擁の感触に僕が戸惑っていると、頬に唇が寄せられて、ちゅっと可愛らしいキスをされる。


いままで散々僕の方からはしてきたけれど、シュシュが自分からキスをくれたのは初めてだった。

熟れたベリーみたいな真っ赤な顔で、ふるふると震えながら小さな唇が懸命に紡いだ言葉の形は。


『   はなれないで   そばにいて   』


「―――…シュ…」


―――― ぷちん ――――




この瞬間、ケダモノ化した僕を誰が止められようか。


細いおとがいを捉えて唇を合わせ、角度を変えて何度も深く繋がる。

逃げる小さな舌先を追いかけて更に奥まで侵入し、ねぶる。

もっと、もっと、と。


息を奪われ、酸欠一歩手前のシュシュに胸元を叩かれて漸く我に返れば、シュシュは息も絶え絶えの様子でくたりと崩れ落ちた。


「――――うわっ!またやり過ぎ…っ」


赤い顔で恨めしげに見上げてくるシュシュを抱き返しながら、その耳許に願いの答えを囁く。




『――――離さない』




………見た目10歳の相手にナニやって……。

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