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過去と未来を繋ぐ者達へ  作者: 卵飯好男
【獣王国ディアナ編】第4章 大獣技場

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第77話 予選開始

第77話 予選開始


 選手用の通路を抜けた瞬間、腹の底まで響くような歓声が降ってきた。


「……うわ」


 思わず足が止まる。


 昼間に外から見た時点でも十分に大きかった。


 けれど、中から見る《大獣技場》はまるで別物だった。


 円形に広がる観客席は何段にも積み上がり、そのほとんどが人で埋まっている。獣族が圧倒的に多いが、人族らしい姿もちらほら見えた。


 その中心にあるのは、巨大な円形の闘技場。


 夜空の下、周囲に並べられた無数の灯りが舞台を照らしている。


 歓声。


 笑い声。


 誰かを呼ぶ声。


 全部が混ざり合って、巨大な塊になって押し寄せてくる。


「すごい人だな……」


「うむ」


 隣に立つシウンは、驚いてはいるものの怯んではいなかった。


 むしろ楽しそうだ。


「これだけの者が戦いを見に来るのか」


「年に一度らしいしな」


「面白い」


「お前、さっきからそればっかりだな」


「面白いものを面白いと言って何が悪い?」


「悪くはないけど」


 反対側を見る。


 セレーネはいつも通りだった。


「緊張してないの?」


「してない」


「だよな」


「朝陽は?」


「……ちょっとだけ」


「そう」


「そこはなんかないの?」


「頑張って」


「軽いなあ」


 でも、不思議と少しだけ肩の力が抜けた。


 参加者用の待機場所には、すでに大勢が集まっている。


 五十人。


 改めて見ると多い。


 武器も体格もばらばらで、剣を持った人族もいれば、武器らしいものを何も持っていない獣族もいる。


 その一人一人が、今日ここで勝つために来た。


 そう思うと、さっきまでとは少しだけ気分が変わった。


 観光のついでに参加することになった大会。


 でも、出る以上は遊びじゃない。


 腰に下げた剣の柄へ触れる。


 今の俺がどこまでやれるのか。


 せっかくなら、確かめてみたい。


「おい!」


 聞き覚えのある声がした。


「……ん?」


 振り返る。


 少し離れたところに三人組がいた。


「あ」


「てめえ!」


 シバ・コタロウ。


 その後ろにアキタ・ゴウとキシュウ・スズ。


 昨日、冒険者ギルドで俺に喧嘩を売ってきた《カグラ愚連隊》だ。


「お前らも出るの?」


「当たり前だろ!」


 コタロウが胸を張る。


「俺らはこの大会で名を上げんだよ!」


「昨日三人がかりで負けたばっかりなのに?」


「うるせえ!」


「朝陽、それは言ってやるな」


 シウンが止めてくる。


「お前も結構ひどいこと言ってるぞ」


 コタロウの後ろでは、ゴウが腕を組んでいた。


「今日は昨日みてえにはいかねえぞ」


「いや、別に俺と当たるとは限らないだろ」


「当たったらって話だ!」


「なら最初からそう言えよ」


「細けえな!」


 スズが額を押さえる。


「もういいって。こいつと話してるとコタロウがどんどん馬鹿に見えるから」


「誰が馬鹿だ!」


「元からでしょ」


「お前どっちの味方だよ!」


 相変わらず騒がしい。


 昨日と何も変わってない。


 でも、三人とも武器を持ってここにいる以上、本気なのだろう。


 コタロウの腰には刀。


 ゴウは大きな武器を携え、スズも短弓と短刀を持っている。


「まあ、お互い頑張ろうぜ」


 そう言うと、コタロウが一瞬だけ黙った。


 それから鼻を鳴らす。


「言われなくても勝つ」


「そっか」


「本戦まで残れよ。今度こそ俺が倒すからな!」


「はいはい」


「はいは一回だ!」


「子供かよ」


「子供じゃねえ!」


 昨日と同じことを言っている。


 思わず笑っていると、別の方向から大きな歓声が上がった。


 まだ試合は始まっていない。


 なのに、観客席の一角だけが急に騒がしくなっている。


「なんだ?」


 そちらへ目を向ける。


 一人の男が選手用の入口から入ってきたところだった。


 長い金属の棍を肩に担いでいる。


 猿系の獣族だろうか。


 本人は集まった視線を気にするどころか、観客席へ向かって片手を上げていた。


「よっ! 今年も来たぞー!」


 さらに歓声が大きくなる。


「誰?」


 俺が呟くと、コタロウが信じられないものを見るような顔をした。


「お前、ゴクウ知らねえのか!?」


「知らない」


「マジかよ!」


「カグラ来たばっかりなんだから仕方ないだろ」


「サルトビ・ゴクウ! 去年の優勝者だぞ!」


「去年の?」


 改めて見る。


 サルトビ・ゴクウ。


 去年の《カグラ武闘獣杯》優勝者。


 もっと厳つい男を想像したが、見た目だけなら随分と軽い。


 本人も観客に手を振りながら歩いている。


「おー、今年も多いな!」


 緊張感がない。


 本当にあれが優勝者なのか。


 そう思っていると、今度は別の場所から声が飛んだ。


「ゴクウ!」


「あ?」


「今年は俺が勝つ!」


 どこかの獣族が叫んだらしい。


 ゴクウはそちらを探すように顔を動かすと、笑った。


「いいぜー! まず本戦まで来いよ!」


 周囲から笑いが起こる。


「……軽いな」


「だが」


 シウンがゴクウを見たまま言った。


「強そうだ」


「分かるの?」


「なんとなくだ」


 シウンの目が少しだけ変わっている。


 それだけで、俺ももう一度ゴクウを見た。


 ふざけているようにしか見えない。


 ただ、あれだけ長い棍を肩に担いでいるのに、歩き方にまるで無理がない。


 力んでいる感じもなかった。


「ふうん……」


 そのとき、再び観客席がざわついた。


 今度は歓声というより、期待するような声だ。


 現れたのは虎系の獣人だった。


 武器は持っていない。


 大柄で、歩いているだけなのに妙な圧がある。


「……あっちは?」


「トラガミ・ジン」


 答えたのはスズだった。


「去年の準優勝」


「準優勝……」


「去年の決勝がゴクウとジンだったの」


 なるほど。


 観客が騒ぐわけだ。


 去年の優勝者と準優勝者が、今年も揃って出場している。


 ゴクウもジンに気づいたらしい。


「よっ、ジン!」


 棍を担いだまま手を上げる。


 ジンはそちらを見た。


「今年は逃げんなよ」


「逃げてねえって!」


「去年もそう言って走り回ってただろうが」


「戦い方って言えよ!」


 また観客席から笑いが起こる。


 仲がいいのか悪いのか分からない。


 ただ、二人の周りだけ空気が違う。


 俺は無意識に二人を見比べていた。


「朝陽」


「ん?」


「楽しそう」


 セレーネが俺を見ている。


「……そう見える?」


「うん」


「まあ……ちょっとな」


 強い奴がいる。


 そう分かった瞬間、緊張よりも別の感情が勝っていた。


 戦ってみたい。


 自分がどこまで通じるのか、知りたい。


 そんなことを考えるようになった自分に、少しだけ驚く。


 バルカンで冒険者になったばかりの頃なら、たぶん逆だった。


 できるだけ強そうな相手とは当たりたくないと思っていたはずだ。


「朝陽」


「何?」


「顔、変」


「なんでだよ!」


「にやけてる」


「嘘だろ」


 慌てて頬を触る。


 セレーネが小さく笑った。


 絶対嘘だ。


 そう思ったところで、会場全体に大きな音が響いた。


 空気が変わる。


 選手たちの声が少しずつ静まっていく。


 いよいよ始まるらしい。


 組み合わせが順番に告げられていく。


 予選は一対一。


 勝てば次へ。


 負ければそこで終わり。


 五十人から、たった八人。


 名前が呼ばれるたび、選手が闘技場へ向かっていく。


 最初の試合が始まった。


 剣を持った人族と、狼系の獣族。


 合図と同時に二人がぶつかる。


 観客席から一斉に声が上がった。


「おお……」


 思っていたより速い。


 狼系の獣族が低く踏み込み、人族の剣士が横へかわす。


 剣が振られ、爪が弾く。


 ほんの数度の攻防。


 最後は獣族の男が相手の懐へ入り、そのまま身体ごと押し込んだ。


 人族の剣士が境界線を越える。


 場外。


 あっという間だった。


「勝者――!」


 名前が告げられ、歓声が上がる。


「こういう感じか……」


 殺し合いじゃない。


 でも、遊びでもない。


 勝つためなら場外でもいい。


 相手を倒し切る必要もない。


 依頼で魔物と戦うのとは、まるで違う。


「朝陽」


「ん?」


「呼ばれてる」


「え?」


 セレーネに言われ、慌てて前を見る。


 本当だ。


 俺の名前が呼ばれていた。


「早く行け」


 シウンが背中を軽く押してくる。


「分かったって」


「負けるなよ」


「そっちもな」


 セレーネを見る。


「行ってくる」


「うん」


 短い返事。


 それだけで十分だった。


 俺は闘技場へ出る。


 さっきまで外から見ていた場所。


 実際に中央へ立つと、観客席がさらに大きく感じる。


「うわ……」


 何千人いるんだ、これ。


 視線が一気に集まってくる。


 さすがに緊張する。


 向かい側から対戦相手が入ってきた。


 犬系の獣族。


 俺より頭一つ大きい。


 手には片手斧。


 知らない相手だ。


 当然、向こうも俺を知らない。


「人族か」


「そうだけど」


「悪いな。俺は本戦に行く」


「俺もそのつもり」


「なら――」


 男が斧を構える。


「勝った方が行けばいい」


「……そうだな」


 剣を抜く。


 金属音が、歓声の中に消えた。


 審判が俺たちの間に立つ。


 右足を少し引く。


 呼吸を整える。


 相手の肩。


 腰。


 足。


 斧の位置。


 いつものように見る。


 合図。


 男が地面を蹴った。


「おおおっ!」


 速い。


 でも――見える。


 振り下ろされた斧を半歩ずれてかわす。


 風が頬を抜けた。


 そのまま剣を返す。


 刃は使わない。


 剣の腹を相手の腕へぶつけ、斧の軌道を外へ逸らす。


「なっ――」


 空いた胴。


 一歩。


 踏み込む。


 掌を突き出す。


「《イグニス》」


 爆ぜた炎が相手の身体を正面から押した。


「ぐっ!」


 吹き飛んだ男が地面を転がる。


 それでもすぐ起き上がった。


 強い。


 けれど、もう境界線が近い。


 男も気づいた。


 次の瞬間、地面を蹴って一気に距離を詰めてくる。


 斧が横薙ぎに振られた。


 受けない。


 下がらない。


 懐へ入る。


「っ!」


 相手の腕が伸び切る前に、肩を押し込む。


 体勢が崩れた。


 そこへ足を掛ける。


 昨日、コタロウたちを相手にしたときと同じ。


 力で止める必要はない。


 向いている方向を少し変えるだけでいい。


「うおっ!?」


 男の身体が俺の横を抜ける。


 一歩。


 二歩。


 踏ん張ろうとした足が、境界線の外へ出た。


 一瞬の静寂。


「場外!」


 審判の声。


「勝者――真白朝陽!」


「……よし」


 思わず拳を握った。


 観客席から拍手と歓声が降ってくる。


 知らない人間が俺の勝利に声を上げている。


 変な感じだ。


 でも――悪くない。


 剣を鞘へ戻す。


 対戦相手も悔しそうではあったが、すぐに立ち上がった。


「やるな」


「そっちも」


「次、負けんなよ」


「うん」


 軽く拳を合わせて別れる。


 選手用の通路へ戻ると、シウンが待っていた。


「随分と余裕だったな」


「そう見えた?」


「見えた」


「結構緊張してたんだけど」


「嘘だな」


「なんでだよ」


 その後ろにいたセレーネも頷いた。


「楽しそうだった」


「またそれ?」


「うん」


「……そんな顔してた?」


 二人とも頷く。


 どうやら本当らしい。


「次はわたしだ」


 シウンが前へ出る。


「もう?」


「うむ」


「頑張れよ」


「誰に言っている」


 自信満々に笑う。


「すぐ戻る」


 その言葉通りだった。


 シウンの試合は、驚くほど早く終わった。


 相手は大柄な獣族だった。


 開始と同時に真正面からぶつかり――押し負けた。


 シウンはほとんど動いていない。


 逆に相手の方が驚いている間に、身体を掴まれ、そのまま場外まで運ばれた。


「……いや、雑!」


 戻ってきたシウンに言う。


「勝ったぞ」


「見れば分かるよ!」


「何か問題でもあるのか?」


「ないけどさ!」


「ならよいではないか」


 本人は満足そうだ。


「次、わたし」


 セレーネが立ち上がる。


「お前まで一瞬で終わらせるなよ」


「どうして?」


「いや、なんとなく」


「意味分からない」


 そして――。


 本当に一瞬で終わった。


 相手が動くより早く、セレーネの魔法が足元を捉えた。


 何が起きたのか理解した頃には、相手は場外にいた。


「……」


 戻ってきたセレーネを見る。


「何?」


「いや」


「勝った」


「うん」


「褒めて」


「なんでシウンより要求増えてんだよ」


「朝陽は?」


「……すごかったよ」


「そう」


 満足したらしい。


 少しだけ機嫌がよくなった。


「なんなんだよ……」


 その後も予選は進んでいった。


 コタロウたちも、それぞれ試合へ向かう。


 ゴウは力任せに押し切ろうとして、経験のある獣族にいなされて場外へ。


 スズは弓で距離を取って粘ったが、最後は間合いを詰められ敗れた。


「くそっ!」


「仕方ないでしょ」


「まだコタロウがいる!」


 二人は悔しそうだったが、すぐに仲間の応援へ回っていた。


 そしてコタロウは――勝った。


「っしゃあああ!」


 相手を場外へ押し出し、観客席へ向かって拳を突き上げている。


「見たかコラァ!」


「誰に言ってんだあいつ」


「全員ではないか?」


「元気だな」


 シウンが感心している。


 昨日俺に完封されたとは思えないくらい、生き生きしていた。


 強いかと聞かれれば、まだ分からない。


 少なくとも、この大会で頭一つ抜けているようには見えない。


 それでも必死に食らいついている。


 ああいう奴が一番しぶといのかもしれない。


 試合は続く。


 勝者が残り、敗者が去っていく。


 五十人いた参加者が、少しずつ減っていく。


 俺も二戦目を勝った。


 一戦目より苦戦した。


 相手は槍を使う獣族で、間合いへ入るまでに時間がかかった。


 魔法で無理やり崩すこともできたが、せっかくの機会だ。


 相手の動きを見て、剣で捌き、最後は風の魔法で踏み込みをずらして場外へ送った。


 勝てた。


 でも、まだ先がある。


 そんなことを考えながら待機場所へ戻ったときだった。


「朝陽?」


 聞き覚えのある声。


 足が止まる。


「……え?」


 振り返る。


 人混みの向こう。


 大きな剣を背負った男が、目を丸くして立っていた。


「ガイウス……?」


 一瞬、ここがカグラだということを忘れた。


 バルカンを出るときに別れたはずの顔。


 俺が冒険者になって間もない頃から、何度も世話になった男。


 大剣の扱いも。


 魔法と武器を一緒に使う戦い方も。


 最初に真似したのは、この人だった。


「お前……なんでカグラにいるんだ?」


「それ、俺の台詞なんだけど」


 数秒。


 お互い顔を見合わせる。


 それからガイウスが笑った。


「ははっ! そういやお前、こっちに向かったんだったな!」


「ガイウスこそ何してんだよ!」


「見りゃ分かるだろ。大会だよ、大会」


「バルカンからわざわざ?」


「依頼ついでだ。せっかくカグラまで来たんだから、祭りも見て帰ろうと思ってな」


「マジか……」


 こんなところで会うとは思わなかった。


 嬉しくなって、自然と笑ってしまう。


 ガイウスも俺を上から下まで眺めた。


「しかし……」


「何?」


「剣、変えたんだな」


「ああ」


 腰の片手剣を見る。


「色々あって」


「そうか」


 ガイウスはそれ以上聞かなかった。


 ただ、少し嬉しそうに笑う。


「似合ってるじゃねえか」


「……ありがと」


 そのとき、次の組み合わせを告げる声が響いた。


 俺たちは揃ってそちらを見る。


 そして。


「――真白朝陽」


 俺の名前。


 続いて呼ばれた名前に、思わず固まった。


「――ガイウス」


「……」


「……」


 また顔を見合わせる。


 先に笑ったのはガイウスだった。


「はっ」


 背中の大剣へ手を伸ばす。


「こういうこともあるんだな」


「……みたいだね」


 俺も腰の剣へ触れた。


 昔なら。


 この人を相手に戦うなんて、考えもしなかった。


 背中を追いかけて。


 戦い方を見て。


 真似をして。


 少しずつ覚えてきた。


 そのガイウスが、今は俺の対戦相手として目の前にいる。


「朝陽」


「うん?」


「遠慮すんなよ」


 いつもの兄貴分の顔だった。


 だから俺も笑う。


「そっちこそ」


「言うようになったじゃねえか」


 二人で闘技場へ向かう。


 大剣と片手剣。


 半年前とは違う。


 俺がどれだけ変わったのか。


 今なら――この人を相手に、確かめられる。


 歓声の中、俺とガイウスは向かい合った。

「魔法について」


 この世界に存在する基本属性は、全部で七つ。


 闇・火・水・木・風・土・光。


 魔法にはその扱いの難しさによって等級が存在し、F級から始まり、E、D、C、B、A、Sと上がっていく。


 今回は、その中でもB級までの基本魔法を紹介する。


【闇属性】


F級《シェイド》

 小さな影を作り出す魔法。

 周囲を完全な暗闇にするほどの力はなく、視界を僅かに遮ったり、明かりを弱めたりする程度。闇属性の魔力操作を覚えるための初歩的な魔法。


E級《ダークボール》

 闇属性の魔力を球状に圧縮して放つ基本攻撃魔法。

 構造が単純で扱いやすく、闇属性を持つ者が最初に覚える戦闘魔法の一つ。


D級《シャドウバインド》

 対象の影へ干渉し、短時間だけ動きを鈍らせる魔法。

 直接的な攻撃力よりも、相手の行動を妨害することに長けている。


C級《ダークランス》

 闇属性の魔力を槍状に収束して放つ魔法。

 ダークボールよりも高い貫通力を持ち、中級以上の闇属性魔法使いが扱う代表的な攻撃魔法。


B級《ナイトフォール》

 一定範囲を暗闇へ落とす高難度魔法。

 単純に光を遮るだけではなく、範囲内にいる相手の視覚や感知能力そのものを低下させる。


【火属性】


F級《イグニス》

 指先ほどの小さな炎を発生させる魔法。

 攻撃よりも着火や照明などに使われることが多く、火属性魔法の基礎となる。


E級《ファイアボール》

 炎を球状にして撃ち出す基本攻撃魔法。

 単純ながら扱いやすく、火属性を持つ者が実戦で最初に覚えることの多い魔法。


D級《フレイムランス》

 炎を槍状に収束して放つ魔法。

 ファイアボールよりも射程と貫通力に優れ、単体への攻撃能力が高い。


C級《バーニングウェイブ》

 広がる炎を波のように前方へ放つ魔法。

 複数の相手を巻き込める範囲攻撃であり、火属性魔法使いが一人前と呼ばれる領域の術式。


B級《インフェルノ》

 指定した一定範囲を高熱の炎で焼き尽くす高難度魔法。

 単純に巨大な炎を撃ち出すのではなく、範囲そのものを炎で覆うため、回避が難しい。


【水属性】


F級《アクア》

 少量の水を生み出す魔法。

 飲料や洗浄など日常生活でも利用され、水属性魔法の基本となる。


E級《ウォーターボール》

 水を球状にまとめて撃ち出す基本攻撃魔法。


D級《アクアランス》

 水を槍状に収束し、高速で射出する魔法。

 水圧を一点へ集中させることで高い貫通力を生み出す。


C級《タイダルウェイブ》

 大量の水を波として前方へ押し流す魔法。

 攻撃だけでなく、相手を押し流したり行動範囲を制限したりすることもできる。


B級《メイルストローム》

 大量の水を操り、巨大な渦を作り出す高難度魔法。

 強い水流によって対象を巻き込み、移動そのものを困難にする。


【木属性】


F級《グロウ》

 植物の成長を僅かに促進する魔法。

 木属性魔法の基礎であり、戦闘よりも生活や農業などで利用されることが多い。


E級《ヴァイン》

 蔓を伸ばして対象へ絡みつかせる魔法。


D級《ソーンバインド》

 棘を持つ蔓を生み出し、対象を拘束する魔法。

 ヴァインよりも拘束力と攻撃性が高い。


C級《フォレストウォール》

 植物を急成長させ、木々による壁を形成する魔法。

 攻撃を防ぐだけでなく、相手の進路を塞ぐことにも利用できる。


B級《グランドルート》

 地中から巨大な根を発生させる高難度魔法。

 広い範囲へ根を伸ばし、拘束と破壊を同時に行う。


【風属性】


F級《ブリーズ》

 弱い風を発生させる魔法。

 風属性の魔力操作を学ぶための基礎となる。


E級《ウィンドボール》

 圧縮した空気を球状にして撃ち出す基本攻撃魔法。

 殺傷力よりも、相手を押し飛ばす用途に向いている。


D級《ウィンドカッター》

 空気を刃のように圧縮して飛ばす魔法。

 目には見えにくく、鋭い切断力を持つ。


C級《エアスラッシュ》

 より大きく強力な風の刃を放つ魔法。

 ウィンドカッターよりも威力・射程ともに大きく向上している。


B級《テンペスト》

 一定範囲に局地的な暴風を発生させる高難度魔法。

 強烈な気流によって対象を吹き飛ばし、周囲の物体まで巻き込む。


【土属性】


F級《ストーン》

 小石や土塊を生成・操作する魔法。

 土属性魔法の基本となる。


E級《ロックショット》

 石弾を高速で射出する基本攻撃魔法。


D級《アースウォール》

 地面を隆起させ、土や岩による壁を作る魔法。

 土属性の代表的な防御魔法。


C級《グランドスパイク》

 地面から岩の槍を突き上げる魔法。

 相手の足元から直接攻撃できるため、回避方向を限定する用途にも優れる。


B級《クエイク》

 一定範囲に局所的な地震を発生させる高難度魔法。

 足場そのものを崩すことで、相手の移動や体勢を大きく乱す。


【光属性】


F級《ライト》

 小さな光源を作り出す魔法。

 照明として広く利用されている、光属性の最も基本的な魔法。


E級《ホーリーボール》

 光属性の魔力を球状にして射出する基本攻撃魔法。


D級《レイ》

 光属性の魔力を細く収束し、光線として撃ち出す魔法。

 速度に優れ、直線的な攻撃に適している。


C級《ホーリーランス》

 高密度の光属性魔力を槍状にして放つ魔法。

 高い貫通力を持つ中級攻撃魔法。


B級《セイクリッド》

 広い範囲を光属性の魔力で包み込む高難度魔法。

 浄化作用を持ち、闇属性を弱体化させるほか、軽度の治癒効果も持つ。


【魔法等級】


F級

 生活魔法・訓練用。

 魔力を扱うための初歩。


E級

 初級戦闘魔法。

 実戦用魔法の入口。


D級

 一般的な冒険者や魔法使いが実戦で使用する領域。


C級

 一人前の魔法使いが安定して扱う中級領域。


B級

 熟練した魔法使いが扱う高難度領域。


 そして、このさらに上には――


 A級。


 S級。


 より高位の魔法が存在している。

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