第16話 Eランク
「…………」
依頼板。
見る。
「…………」
採取。
「…………」
昨日。
失敗した。
「…………」
別のにする?
荷運び。
清掃。
店の手伝い。
「…………」
安全。
確実。
金。
稼げる。
「…………」
でも。
目。
戻る。
採取。
「…………」
いや。
もう一回。
やろう。
依頼票。
取る。
受付へ。
「これ、お願いします」
「はい」
いつもの女性。
依頼票。
見る。
「また採取ですか?」
「また採取です」
「昨日、失敗したばかりですが」
「だからです」
「…………」
「何です?」
「いえ」
受付。
少し。
笑う。
「では、受注処理をします」
「お願いします」
冒険者カード。
渡す。
「昨日とは別の採取地です」
「はい」
「今回も指定範囲を外れないこと」
「はい」
「異変を感じたら」
「帰ります」
「よろしい」
カード。
返ってくる。
「それと」
「はい?」
「昨日の失敗を取り返そうとして、無理をしないでくださいね」
「…………」
ばれてる。
「顔に出てました?」
「少し」
「俺、そんな分かりやすいですか?」
「かなり」
「…………」
直した方がいいかな。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
◇
王都。
外。
「…………」
昨日。
歩いた道。
今日。
少し違う。
「…………」
何が。
って。
言われると。
分からない。
でも。
昨日は。
初めて。
だった。
王都の外。
依頼。
採取。
「…………」
今日は。
二回目。
それだけで。
ちょっと。
違う。
「…………」
荷馬車。
来る。
端。
寄る。
「おーい、兄ちゃん!」
「え?」
御者。
手。
上げる。
「…………」
誰?
「昨日も歩いてたろ!」
「あ」
昨日。
すれ違った。
人?
「仕事かー!」
「あ、はい!」
「頑張れよー!」
「ありがとうございます!」
荷馬車。
通り過ぎる。
「…………」
何か。
いいな。
こういうの。
◇
採取地。
「…………」
よし。
依頼票。
確認。
植物。
見る。
「…………」
これ。
昨日のとは。
違う。
特徴。
葉。
茎。
色。
「…………」
探す。
「あ」
しゃがむ。
「…………」
違う。
昨日なら。
採ってたかも。
「…………」
こっち。
見る。
「…………」
これだ」
一つ。
採る。
袋。
「…………」
次。
探す。
歩く。
「…………」
ない。
でも。
昨日。
覚えた。
一個。
見つけたら。
周り。
見る。
「…………」
日当たり?
土?
「…………」
こっち。
「あった」
二つ目。
「…………」
やっぱり。
適当に。
歩くより。
考えた方が。
早い。
もう一つ。
「…………」
あった。
「よし」
少し。
楽しい。
◇
半分。
集まった。
「…………」
音。
止まる。
「…………」
何か。
聞こえた。
昨日。
同じ。
身体。
固まる。
「…………」
林。
見る。
「…………」
がさ。
「…………!」
一歩。
下がる。
袋。
持つ。
「…………」
帰る。
決める。
その時。
がさがさ。
「…………!」
何か。
飛び出す。
「うわっ!」
身構える。
「…………」
小さい。
四本足。
耳。
長い。
「…………」
動物。
俺を見る。
「…………」
俺も。
見る。
「…………」
そいつ。
逃げる。
「…………」
いなくなる。
「…………」
「動物かよ……」
力。
抜ける。
「びっくりした……」
心臓。
速い。
「…………」
でも。
待て。
昨日。
もしかして。
あれ?
「…………」
いや。
分からない。
昨日は。
見てない。
「…………」
分からないなら。
分からない。
それでいい。
勝手に。
大丈夫だった。
ことにしない。
「…………」
続ける?
周り。
見る。
「…………」
今のは。
確認できた。
危険。
なさそう。
「…………」
なら。
続ける。
「よし」
◇
「…………」
袋。
見る。
「足りた」
数える。
もう一回。
「…………」
足りてる。
「よし!」
昨日。
一つ。
足りなかった。
今日。
全部。
「…………」
たった。
それだけ。
なんだけど。
「嬉しいな」
帰ろう。
◇
「おかえりなさい」
「ただいまです」
ギルド。
袋。
置く。
「お願いします」
「確認します」
「…………」
待つ。
ちょっと。
緊張。
「…………」
「問題ありません」
「よし」
思わず。
出た。
「依頼達成です」
「ありがとうございます」
「昨日の分を取り返しましたね」
「はい」
「無理は?」
「してません」
「本当に?」
「今日は本当です」
「今日は?」
「…………」
「朝陽さん?」
「言い方です」
報酬。
冒険者カード。
所持金。
増える。
「…………」
この。
増える瞬間。
好きかもしれない。
「次も受けます?」
「今日は」
窓。
見る。
「やめときます」
「分かりました」
「図書館行ってきます」
「…………」
「何です?」
「やはり、そちらも続いているんですね」
「面白いんで」
「魔法が?」
「はい」
七属性。
「…………」
全部。
使えることは。
言わない。
「火属性」
少し。
言葉。
選ぶ。
「もっとちゃんと使えるようになりたいんで」
「熱心ですね」
「まあ」
嘘。
ではない。
火も。
もっと。
使えるようになりたい。
「無茶はしないように」
「はい」
「本当に」
「信用ないなあ」
「昨日までの行動を振り返ってください」
「…………」
何も。
言えない。
◇
それから。
数日。
朝。
ギルド。
依頼を選ぶ。
運搬。
「これ、どこまでですか?」
「市場の倉庫だ」
「了解です」
運ぶ。
「重っ……」
でも。
最初より。
少し。
持ち方。
分かる。
終わる。
報告。
報酬。
飯。
「これください」
カード。
支払い。
午後。
図書館。
「…………」
魔法。
読む。
基礎。
魔力。
属性。
術式。
「…………」
難しい。
別の本。
「…………」
もっと。
難しい。
「誰だよこれ初心者向けの棚に置いたの……」
戻す。
違う本。
「…………」
こっち。
分かる。
宿。
夜。
「《イグニス》」
ぼっ。
「…………」
火。
安定。
「《アクア》」
水。
「…………」
小さく。
止める。
「《ブリーズ》」
風。
カーテン。
揺れる。
「…………」
誰にも。
見られないように。
少しずつ。
試す。
◇
次の日。
清掃。
「兄ちゃん、そこまだ汚れてるぞ」
「え?」
「そこだ、そこ」
「…………あ」
「見落としてんぞ」
「すみません」
「終わったと思ってからもう一回見ろ」
「はい」
やり直す。
終わる。
報告。
達成。
◇
次の日。
素材回収。
王都近郊。
「…………」
指定。
場所。
確認。
周り。
見る。
「…………」
前。
だけじゃない。
後ろ。
林。
足元。
「…………」
大丈夫。
拾う。
袋。
入れる。
音。
「…………」
止まる。
確認。
鳥。
「…………」
息。
吐く。
「ビビりすぎかな……」
でも。
昨日。
受付。
言ってた。
怖いと思わない方が。
危険。
「…………」
なら。
これで。
いい。
◇
次の日。
また。
採取。
「…………」
葉。
色。
場所。
「これ」
採る。
「…………」
こっちにも。
ある。
「…………」
前より。
早い。
◇
その次。
荷物。
「兄ちゃん、最近よく来るな」
「仕事なんで」
「最初は今にも潰れそうだったのにな」
「そんなでした?」
「そんなだった」
「…………」
ちょっと。
恥ずかしい。
「今日はマシだな」
「ありがとうございます」
「褒めてねえぞ」
「褒めてくださいよ」
「終わったらな」
「はい」
◇
毎日。
同じ。
ではない。
でも。
似ている。
起きる。
ギルド。
仕事。
飯。
図書館。
魔法。
宿。
寝る。
そして。
また。
朝。
「…………」
何日。
経ったんだろ。
日本にいた時。
一週間。
なんて。
すぐだった。
学校。
授業。
放課後。
瑞輝たち。
家。
寝る。
また学校。
「…………」
今も。
似てる。
やること。
決まってきた。
行く場所。
増えた。
顔。
覚えた。
向こうも。
俺を。
少し。
覚えてる。
「…………」
王都ルイ。
知らない街。
だった。
今も。
知らないところ。
いっぱい。
ある。
でも。
「…………」
宿まで。
地図。
いらない。
ギルドまで。
迷わない。
安い飯。
売ってる場所。
知ってる。
図書館。
魔法の棚。
迷わず。
行ける。
「…………」
生活。
してるんだな。
俺。
ここで。
◇
「朝陽さん」
「はい?」
ある日。
依頼。
終わって。
ギルド。
報告。
「少々よろしいですか?」
「…………」
何。
「俺、何かしました?」
「なぜ最初にそれを疑うんですか?」
「呼び止められたんで」
「悪い話ではありません」
「…………」
「たぶん」
「たぶん?」
「冗談です」
「びっくりした」
受付。
俺の。
冒険者カード。
見る。
「これまでの活動記録を確認しました」
「はい」
「運搬」
「はい」
「清掃」
「はい」
「採取」
「はい」
「素材回収」
「はい」
「一度、依頼未達成」
「…………はい」
そこ。
ちゃんと。
残ってる。
「その後は、継続して依頼を達成しています」
「はい」
「依頼主からの評価にも、特に問題はありません」
「…………」
評価。
されてたんだ。
「加えて」
「はい」
「危険を感じた際に無理をせず撤退した件についても、判断として問題なし」
「…………」
「総合的に判断し」
カード。
置く。
「真白朝陽さん」
「はい」
「本日付で、Eランクへの昇格を認めます」
「…………」
「…………」
「え?」
「Eランクです」
「…………」
俺。
カード。
見る。
「俺が?」
「朝陽さんが」
「もう?」
「もう、というほどでもありませんよ」
「…………」
でも。
俺。
まだ。
魔物。
一匹も。
倒してない。
「戦ってないですよ?」
「はい」
「それでも?」
「冒険者ランクは、戦闘力だけで決まるものではありません」
「…………」
「依頼達成数、成功率、依頼主からの評価、活動内容。その他、ギルド側の評価を含めて総合的に判断します」
「…………」
そういえば。
最初。
聞いた。
「Fランクで求められる仕事を、継続してこなした」
「…………」
「ですので」
少し。
笑う。
「昇格です」
「…………」
カード。
手に取る。
表示。
見る。
名前。
真白朝陽。
性別。
男。
年齢。
十七。
所持金。
そして。
冒険者ランク。
E。
「…………」
「本当だ」
「本当ですよ」
「…………」
E。
たった。
一文字。
「…………」
でも。
嬉しい。
「おめでとうございます」
「…………ありがとうございます」
顔。
たぶん。
にやけてる。
「嬉しそうですね」
「そりゃ」
カード。
もう一回。
見る。
「嬉しいですよ」
「そうですか」
「はい」
異世界。
来た。
何も。
知らなかった。
金。
なかった。
仕事。
したこと。
なかった。
魔法。
知らなかった。
冒険者。
何するのかも。
知らなかった。
「…………」
F。
から。
E。
「…………」
少し。
進んだ。
◇
「Eランクになると、受けられる依頼の幅が広がります」
「例えば?」
「採取や護送、素材回収なども、Fランクより広い範囲を任されるようになります」
「なるほど」
「そして」
「…………」
何となく。
嫌な予感。
「魔物討伐を含む依頼もあります」
「…………」
やっぱり。
「魔物」
「はい」
「…………」
今まで。
避けてた。
怖いから。
普通に。
「もちろん、Eランクになったからといって、すぐに討伐依頼を受けなければならないわけではありません」
「…………」
「ご自身で選んでください」
「自分で」
「はい」
依頼板。
見る。
今まで。
見ないように。
してた。
場所。
討伐。
魔物。
報酬。
「…………」
冒険者。
俺。
「…………」
いつか。
やる。
とは。
思ってた。
「…………」
でも。
いつか。
って。
いつだ。
「…………」
Eランク。
カード。
握る。
「今日は」
「はい」
「帰ります」
「分かりました」
「…………」
逃げた?
いや。
今日は。
依頼。
終わった。
「…………」
明日。
考えよう。
◇
夜。
宿。
机。
カード。
置く。
「…………」
E。
「…………」
にやける。
「…………」
いや。
いいだろ。
誰も。
見てない。
「Eランク……」
声。
出す。
「…………」
ちょっと。
格好いい。
気がする。
「…………」
でも。
討伐。
頭。
戻る。
「…………」
魔物。
戦う。
俺が。
「…………」
怖い。
そりゃ。
怖い。
「…………」
右手。
見る。
魔法。
ある。
七属性。
全部。
使える。
「…………」
でも。
F級。
生活魔法。
それだけ。
魔法が。
使えるから。
勝てる。
なんて。
思わない。
「…………」
図書館。
攻撃魔法。
本。
あった。
E級。
「…………」
まだ。
読んでない。
いや。
見た。
でも。
ちゃんと。
勉強してない。
「…………」
明日。
図書館。
行くか。
「…………」
討伐。
受けるか。
どうか。
その前に。
知る。
魔物。
戦い方。
E級魔法。
「…………」
俺に。
できること。
何がある。
「…………」
調べる。
考える。
それから。
決める。
カード。
E。
「…………」
冒険者になって。
初めて。
次へ進んだ気がした。
そして。
次に待っているものが。
今までみたいな仕事だけじゃないことも。
何となく。
分かっていた。




