第15話 王都の外へ
「…………」
朝。
目が覚める。
「…………」
右手。
見る。
「…………」
やめよう。
昨日から。
何回。
見てるんだ。
右手。
「…………」
でも。
気になる。
七属性。
全部。
使えた。
「…………」
夢。
じゃない。
確認。
したい。
「…………」
いや。
やめろ。
昨日。
散々やった。
火。
水。
木。
風。
土。
光。
闇。
全部。
成功した。
「…………」
それで。
どうする。
誰かに言う?
「…………」
受付の人。
『あなたの適性は火属性のようですね』
「…………」
違いました。
全部でした。
「…………」
言えるか?
「…………」
言えないな。
何で。
とは。
説明できない。
でも。
三属性でも極めて珍しい。
それは。
本で読んだ。
なら。
七属性。
「…………」
どう考えても。
普通じゃない。
「…………」
俺。
この世界。
来たばっかり。
知り合い。
ほとんどいない。
常識。
まだ。
分からない。
「…………」
そんな状態で。
自分でも分からないこと。
人に話す。
「…………」
怖いな。
正直。
ちょっと。
怖い。
「…………」
もう少し。
自分で。
調べよう。
それから。
考える。
「…………」
よし。
決めた。
今は。
黙っておく。
「…………」
で。
今日は。
「仕事」
金。
稼がないと。
本当に。
生きていけない。
◇
「おはようございます」
「おはようございます」
ギルド。
いつもの受付。
「今日は依頼ですか?」
「はい」
「魔法ではなく?」
「…………」
「朝陽さん?」
「仕事します」
「今、迷いましたね」
「してません」
「そうですか」
「仕事をください」
「依頼はご自身で選んでください」
「知ってます」
依頼板。
見る。
「…………」
いっぱい。
ある。
荷運び。
清掃。
店。
採取。
素材回収。
「…………」
また。
荷運び。
「…………」
いや。
別に。
嫌じゃない。
嫌じゃないけど。
「冒険者……」
小声。
「はい?」
「何でもないです」
せっかく。
冒険者になった。
ちょっと。
違うことも。
してみたい。
「…………」
採取。
王都近郊。
「これ」
依頼票。
取る。
「どうです?」
受付へ。
「確認します」
渡す。
「…………」
読む。
「グラシア地方での採取依頼ですね」
「グラシア?」
「王都の周辺に広がる地方です」
「遠いですか?」
「今回の採取地でしたら、それほど」
「危ない?」
「指定された範囲であれば、Fランクでも受注可能です」
「…………」
指定された範囲。
「外れたら?」
「危険度は上がります」
「…………」
「朝陽さん」
「はい」
「顔に出ていますよ」
「何がです?」
「怖い、と」
「…………」
出てた。
「そりゃ」
王都の外。
魔物。
いる。
知ってる。
「怖いですよ」
「それで構いません」
「え?」
「危険な場所を怖いと思わない冒険者の方が危険です」
「…………」
なるほど。
「依頼書に指定された場所から離れないこと」
「はい」
「異変を感じたら採取を中断すること」
「はい」
「依頼よりもご自身の安全を優先してください」
「…………」
「冒険者の仕事は、依頼を達成することだけではありません」
「じゃあ?」
「帰ってくることです」
「…………」
帰ってくる。
「分かりました」
「では、受注処理をします」
「お願いします」
冒険者カード。
渡す。
処理。
返ってくる。
「気をつけて」
「はい」
カード。
財布。
荷物。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ギルドを出る。
「…………」
行ってきます。
か。
「…………」
何か。
ちょっと。
いいな。
◇
王都ルイ。
外門。
「…………」
でか。
入った時も。
見た。
でも。
中から見ると。
また違う。
人。
荷馬車。
商人。
旅人。
冒険者。
兵士。
いろんな人が。
出入りしている。
「…………」
門。
抜ける。
「おお……」
空。
広い。
王都。
中にいると。
建物ばっかり。
だったから。
「…………」
何か。
久しぶり。
アルヴェンから。
王都へ来た時以来。
街道。
歩く。
左右。
畑。
遠く。
牧草地。
荷馬車。
俺を追い越していく。
「…………」
こういうの。
いいな。
石造りの王都。
すごかった。
でも。
こっちも。
異世界。
って感じする。
道。
土。
馬。
畑。
遠くに。
森。
「…………」
スマホ。
取り出す。
電源。
つく。
「…………」
残り。
少ない。
もう。
ほとんど。
使ってない。
充電。
できないから。
「…………」
でも。
一枚。
写真。
撮る。
街道。
畑。
遠く。
王都の壁。
「…………」
保存。
画面。
見る。
「…………」
これ。
誰に見せるんだろ。
瑞輝。
京介。
麗奈。
瑠奈。
「…………」
見せたら。
絶対。
信じないだろうな。
『異世界行ってきた』
「…………」
いや。
俺でも信じない。
画面。
消す。
ポケット。
「…………」
帰れたら。
見せよう。
いつか。
◇
「ここ?」
依頼票。
確認。
街道。
少し外。
林。
でも。
深くない。
王都から。
そんなに。
離れてない。
「…………」
指定。
この辺。
採るもの。
昨日とは違う。
薬草。
「…………」
見本。
確認。
「これかな」
しゃがむ。
「…………」
違う。
危ない。
似てる。
「…………」
こっち?」
見比べる。
「…………」
これだ。
採る。
袋。
「一個」
もう一つ。
探す。
「…………」
ない。
歩く。
「…………」
あった。
しゃがむ。
「…………」
違う。
「むず」
採取。
地味。
でも。
意外と。
頭。
使う。
「…………」
葉。
形。
色。
生えてる場所。
「…………」
これ。
さっきの。
正解。
近く。
「…………」
あった。
「なるほど」
一つ。
見つけると。
周り。
見える。
「…………」
同じ場所に。
生えやすい?
探す。
「…………」
あった。
「やっぱり」
袋。
入れる。
「…………」
こういうの。
結構。
好きかも。
探して。
見つける。
合ってるか。
確かめる。
「…………」
魔法と。
ちょっと。
似てるな。
◇
「…………」
しばらく。
採取。
袋。
そこそこ。
「足りるかな」
依頼票。
確認。
「…………」
あと少し。
周り。
見る。
「…………」
あっち。
木。
多い。
「…………」
いや。
指定範囲。
ここまで。
受付。
言ってた。
外れるな。
「…………」
でも。
少しだけなら。
「…………」
やめとこう。
別の方向。
探す。
「…………」
ない。
戻る。
「…………」
さっきの場所。
もう一回。
見る。
「…………」
あった。
「見落としてた」
採る。
「…………」
あと。
一つ。
探す。
「…………」
ん?
音。
「…………」
止まる。
耳。
澄ます。
「…………」
何か。
いる?
林。
「…………」
風。
葉。
揺れる。
「…………」
いや。
違う。
何か。
動いた。
「…………」
心臓。
速くなる。
魔物?
「…………」
分からない。
見えない。
「…………」
どうする。
確認。
「…………」
いや。
やめろ。
受付。
異変。
感じたら。
中断。
「…………」
袋。
持つ。
「帰ろ」
あと。
一つ。
足りない。
「…………」
でも。
帰る。
ゆっくり。
街道。
戻る。
「…………」
後ろ。
気になる。
振り返る。
「…………」
何も。
いない。
「…………」
でも。
歩く。
少し。
速く。
◇
街道。
戻った。
「…………」
人。
いる。
荷馬車。
通る。
「…………」
ふう」
息。
吐く。
「…………」
何だったんだ。
動物。
かもしれない。
魔物。
だったかもしれない。
「…………」
分からない。
でも。
「…………」
戻ってきた。
袋。
見る。
「…………」
一個。
足りない。
「…………」
失敗?」
依頼。
必要数。
届いてない。
「…………」
やっぱり。
戻る?
林。
見る。
「…………」
嫌だ。
怖い。
「…………」
でも。
仕事。
「…………」
迷う。
しばらく。
その場。
立つ。
「…………」
帰る。
決める。
「…………」
怒られるかな。
失敗。
初めて。
「…………」
でも。
あそこで。
何かいた。
「…………」
俺。
戦ったこと。
ない。
魔法。
使える。
でも。
F級。
生活魔法。
「…………」
火。
水。
木。
風。
土。
光。
闇。
全部。
使える。
「…………」
だからって。
強いわけじゃない。
それ。
忘れたら。
ダメだ。
「…………」
帰ろ。
◇
「おかえりなさい」
「…………」
「朝陽さん?」
「ただいまです」
「どうされました?」
「依頼」
袋。
置く。
「一個、足りません」
「…………」
受付の女性。
中。
確認。
「指定数に届いていませんね」
「はい」
「何かありましたか?」
「採取してたら」
話す。
林。
音。
何か。
動いた。
姿。
見てない。
「それで」
「戻りました」
「そうですか」
「…………」
怒られる?
「正しい判断です」
「え?」
「正しい判断です」
「でも」
袋。
「足りないです」
「依頼は未達成になります」
「…………」
「報酬も満額は支払われません」
「はい」
「ですが」
俺。
見る。
「無理に続行しなかったことは正解です」
「…………」
「朝陽さんは、まだFランクです」
「はい」
「討伐経験もありません」
「はい」
「姿も分からない相手を確認するために、指定範囲を外れる必要はありません」
「…………」
ちょっと。
安心。
「依頼失敗って」
「記録には残ります」
「うわ」
「ですが、一度の失敗ですべてが決まるわけではありません」
「…………」
「次は達成してください」
「はい」
「それだけです」
「…………」
「何ですか?」
「もっと怒られるかと思ってました」
「なぜです?」
「仕事、失敗したんで」
「冒険者に無理をさせて死なせる方が、ギルドにとって困ります」
「…………」
死ぬ。
その言葉。
軽く。
聞こえなかった。
「…………」
「帰ってきてください」
朝。
言われた。
言葉。
「…………」
「はい」
冒険者。
依頼。
達成。
金。
ランク。
魔法。
それだけじゃない。
「…………」
帰ってくる。
それも。
仕事。
◇
ギルド。
出る。
「…………」
腹。
減った。
「何か食お」
通り。
歩く。
屋台。
匂い。
「…………」
肉。
いい。
買う。
カード。
使う。
一口。
「うま」
歩く。
食べる。
「…………」
今日。
依頼。
失敗。
「…………」
でも。
不思議。
そんなに。
落ち込んでない。
「…………」
怖かった。
だから。
帰った。
「…………」
それで。
いい。
らしい。
「…………」
次。
ちゃんと。
やればいい。
肉。
もう一口。
「…………」
うまい。
◇
宿。
夜。
机。
冒険者カード。
財布。
スマホ。
「…………」
スマホ。
電源。
つける。
残量。
「…………」
もう。
ほとんどない。
写真。
今日。
撮った。
街道。
畑。
王都。
「…………」
指。
動かす。
日本。
写真。
友達。
「…………」
見る。
「…………」
帰りたい。
それは。
変わってない。
「…………」
でも。
今日。
王都の外。
歩いて。
依頼。
やって。
失敗して。
帰ってきて。
飯。
食った。
「…………」
俺。
ここで。
生活してる。
少しずつ。
本当に。
「…………」
スマホ。
画面。
消す。
机。
置く。
「…………」
右手。
見る。
七属性。
「…………」
これは。
まだ。
誰にも。
言わない。
分からないから。
「…………」
でも。
仕事。
明日も。
行く。
「…………」
次は。
ちゃんと。
達成したい。
魔法も。
もっと。
覚えたい。
王都も。
まだ。
全然。
見てない。
「…………」
やること。
いっぱいあるな。
ベッド。
寝転ぶ。
「…………」
知らない世界。
怖い。
分からない。
ことばっかり。
でも。
少しだけ。
明日が。
楽しみだった。




