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第37話 差出人不明の謝罪状

その日の昼、私の机に差出人不明の封筒が置かれていた。


 外から見れば、ごく普通の私信だ。だが封筒の折り返しに、交換局内でしか使わない薄茶の粉が付いている。私は手袋をしたまま開封した。


『もう隠せません。夜間簿を切ったのも、返送札を書いたのも私です。ですが、金の帳面は別にあります。鐘楼下の綱箱を見てください。どうか、私の名を先に出さないでください』


 署名はない。けれど字は若く、震えていた。


「内部の誰かですね」


 ヒルデが一読して言う。


「しかも、まだ逃げ切れると思っていない」


 ハインツと鐘楼へ向かうと、綱箱の底から油布に包まれた小冊子が出てきた。中身は保険処理裏簿。正式帳簿に載っていない支払先、返送袋番号、未着扱いにした通知の件名、取り分比率まで書いてある。


 最初の頁に、はっきりとあった。


『B.K. 二』『E.S. 三』


 ベルント二割、エーヴァルト三割。残りは夜間当直と荷役へ分配。あまりにも露骨で、逆にしばらく黙ってしまった。


 箱の隅には、もう一通小さな紙が挟まっていた。


『ロッテ・ブレンナー、二十九歳。交換局事務補。勝手に封を切ったのは一度だけです。その一度で、婚礼通知がどう使われるか知りました』


 私は紙を握り直した。一度だけ、という後悔がひどく重い。


「保護します」


 レオンハルトがすぐ言った。


「証言も必要だが、先に身を守る」


「はい」


 午後、ロッテは中央配送室の裏口から入ってきた。顔色は悪かったが、逃げるより先に頭を下げた。


「私が返送理由を書きました。でも、全部ベルント局長の指示です。エーヴァルト商会が取る袋は、最初から決まっていました」


「婚礼通知まで?」


「はい。急ぐ家ほど、高く折れるからって」


 私は湧き上がる怒りを、紙へ写すみたいに一行ずつ整理した。もう決まった。次はベルント本人の前で、この帳面を開く。


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