表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/40

第30話 配達保険金の行方

金の流れは、手紙より遅くても、嘘よりは遅くない。


 私はヒルデと保険処理簿を一日かけて洗った。エーヴァルト・ゼンガー商会へ流れている金は、未着補償、保管手数料、再梱包費、代理受領手当。名前は違うのに、日付と金額の幅が妙に揃っている。


「同じ型紙で請求してますね」


「しかも、受取人が困るほど請求額が増えている」


 エルザの弔慰金通知が止まった週には、保険処理費が二件。トビアスの復職証明が未着扱いになった週には、臨時保管料が三件。アンナの招待状が消えた翌日には、共同倉庫への移送費が新しく立っていた。


 全部、交換局から一度エーヴァルト商会へ流れている。


「紙を止めて、保険を取り、困った相手から土地も買う」


 私が整理すると、ヒルデは深く息を吐いた。


「綺麗に腐っていますね」


 そこへヨハンが共同倉庫周辺の土地売買記録を持ってきた。去年の冬から春にかけて、寡婦、復職待ちの兵、婚礼延期になった家から、細切れに土地が買われている。買い手は別々だが、登記代筆は全部同じ書記。


 エーヴァルト側の書記だった。


 私は地図の上へそれぞれの土地を置いていった。点が線になる。線が道になる。その道は、雪解けで再開する国境路沿いだった。


「倉庫を広げたいんですね」


「そのために、届くべき名前を弱らせている」


 レオンハルトは地図の上で、買われた土地を指先でなぞった。


「この路線は、侯領の食料と薬も通る」


「だからこそ、民の権利より先に倉庫の都合を通したい」


 帳簿は十分揃ってきた。けれど金の流れだけでは、ベルントは下請のせいにする。必要なのは、彼が自分で袋を触った証拠だ。


 私はその日の終わりに、アンナの未着招待状控えへ赤い印を付けた。


『試験便候補』


 こういう時、花嫁の紙はよく効く。止めた側が、また同じ癖で触るから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ