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第13話 吹雪の夜の救援急報

四月の終わりに吹く北辺の雪は、油断している人間だけを選んで噛む。


 夕方、東の山道で崩れが起き、炭鉱町の避難路が塞がれたという急報が入った。通常路では朝まで届かない。しかも王都側の中継所へ回せば、またどこかで遅れるかもしれない。


「人を出す」


 レオンハルトが立ち上がる。だが私は地図の前へ先に回った。


「待ってください。山道を使うと今夜は危険です」


 私は配達路の控え、巡回灯台の位置、冬に使った狼煙台の記録を広げた。北西谷道は塞がっている。けれど旧炭道なら、途中の鐘楼を経由して合図を継げる。


「ここからここへ、急報を三つに分けます。一通は騎馬、二通は灯台信号で要点だけ送る」


 ハインツが目を見開いた。


「郵便じゃなく救援伝令だぞ」


「届けば名前は何でも同じです」


 私は本文を削った。避難人数、必要な薬品、補給車の台数、代替路。飾りは要らない。吹雪の夜に必要なのは、短くて誤読しない文面だけだ。


 レオンハルトは私の案を一読し、そのまま署名した。


「採用」


「早いですね」


「迷っている時間がない」


 急報は、騎馬と鐘楼と灯台を使って夜のうちに繋がった。明け方、炭鉱町から『避難完了』の返報が届く。死者なし。


 私はようやく息を吐いた。届いた。今度は途中で止められず、遅れず、ちゃんと。


「よくやった」


 背後でレオンハルトが言う。振り返ると、彼の肩にも雪が積もっていた。現場から戻ったばかりらしい。


「あなたこそ」


「俺は動いただけだ。道筋を引いたのは君だ」


 その言葉が嬉しかった。郵便監査官は、普段は誰かの後ろで記録を確認する仕事だ。けれど今夜だけは、私が道を作れた。


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