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第12話 偽造された配達印

翌朝、私は王都中央郵便局で廃棄されたはずの印章一覧を取り寄せた。


 王都へいるグレーテが、写しを早馬で送ってくれたのだ。廃印番号、摩耗の特徴、廃棄日。その中に、セリーヌの婚礼通知で使われていた旧型印章が確かにあった。


「廃印を持ち出した人間がいる」


 私は料金所跡小屋から出た未着袋の札と見比べる。押印位置の癖が完全に一致した。右へ半度だけ傾く王冠、王都の『都』の払いが浅い。


 さらに燃え残った急使便確認票の切れ端へ、ユリウスの追記写しを重ねる。数字の七の跳ね上がりが同じだ。配達印と筆記、どちらにも彼らの手癖が残っている。


「十分か」


 レオンハルトが問う。


「筆跡と印影の両方が揃えば、逃げ道はかなり狭まります」


「かなり、か」


「相手は王都で言葉を飾るのが上手いので」


 その日の午後、北辺へ新しい便が届いた。差出人はセリーヌ。中身はたった一枚、『これ以上掘り返すなら、あなたの私的書簡を全部公開します』。


 脅しだった。けれど同時に、自分たちが私の手紙を握っていると認めたようなものでもある。


「公開できるものならすればいい、では済まない顔ですね」


 ヒルデに言われ、私は少しだけ視線を伏せる。


 母の旧友からの手紙。亡父のことが書かれているかもしれない便り。私がまだ読んでいないものまで、彼らは勝手に開いたのだ。


「仕事の証拠にはなるけれど、腹は立ちます」


「なら、そのまま使いましょう」


 レオンハルトが静かに言った。


「怒りは、記録を並べる時の手を速くする」


 乱暴な慰めなのに、不思議と効いた。私は脅迫状へ新しい番号を振る。今度はこの一通も、彼らを追い詰める材料になる。


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