88
一通り買い物を終え、わたしたちは帰路につく。結構買い込んでしまったので、今まで貯めていたお金がだいぶ無くなってしまったが、まあ、これからまた冒険者をしていけば、きっと溜まるだろう。正直、わたしの買い物なのに、お金を出そうとするマグラルド様を止める方が大変だった。
それに、今は、マグラルド様も一緒のパーティー。全然、冒険者の活動は苦じゃない。というか、むしろ、楽しみすぎる。
思わず、口元が緩む。
「……機嫌がいいな?」
わたしの隣を歩く、マグラルド様がつぶやくように聞いてくる。マグラルド様が明日から、ずっと近くにいるのだ。機嫌がよくならないわけがない。
「貴方様が、そばにいてくださるので」
ぼかさずに言うのは恥ずかしかったけれど、でも、こうやって、直接言えること自体が、どれだけありがたいのか、分かっているから、言えるときには言おうと思う。
聖女時代は伝えてこなくて、結局駄目になってもう会えないかもしれない、と絶望して。
再び再会しても、わたしがわたしだと言えず、正体を明かしてからも、すぐにマグラルド様は死にかけて、わたしの腕の中で、どんどんと弱っていく姿を見た。
彼がこうして健康で、元気にやっていることが、どれだけありがたいことか。
これからも、健やかに生きて行ってほしい。
「あ、マグラルド様、体調が悪くなったら、わたしにすぐおっしゃってくださいね? 『障り』を移動させないといけないので」
健やか、で思い出したので、わたしはマグラルド様に注意しておく。
マグラルド様がああしてあの男の、あの冒険者パーティーの口止めをしたということは、マグラルド様は、一切この件を外に出さない、ということだろう。となれば、マグラルド様の呪いの情報を探るのも、一気に難しくなる。リリリュビさんくらいの腕があればできるのかもしれないけれど、わたしには無理だ。
現状、マグラルド様が、以前のように限界を迎える前に、『障り』を自然浄化できる人間に移さないといけない。
「この間みたいに――、わっ!」
ぐい、と肩を抱き寄せられて、わたしは思わず声を上げてしまう。
わたしをのぞき込むようにして、マグラルド様がわたしを見てくる。ひえ、顔がいい……。そして近い……。
「マグラルド、と、ディアンのようにはもう接してくれないのか?」
そして、彼は、そんなことを、わたしに言った。少し拗ねたように聞こえるのは、わたしに都合のいいように、解釈してしまっているのだろうか。




