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「……で、どうする?」
ひとしきり悔しがった姿を見せたリリリュビさんが、すっと真面目な顔を見せる。これは、冒険者パーティーのリーダーとしての顔。
「どうする、とは……?」
「や、ディアンとしてウチに残るのか、それとも、ペルアディアとして入りなおすのか、どっちにするのかなーって」
……全然考えてなかった。
「というか、残ることは前提なんですね?」
「当然! 守護魔法も聖女魔法も使える回復役とか強すぎるし。もっともっと上に行って、国防を任されるような冒険者パーティーになれば、使える手段は多い方がいいし。……えっ、マグラルドくんも辞めないよね!?」
俄然、不安そうに言うリリリュビさんに、「世話になったのに、恩を返す前に辞めるわけにはいかない。僕の力でいいのであれば、十分に力をふるわせてもらおう」とマグラルド様は返す。
これにホッとしたのは、リリリュビさんだけではない。生きることを諦めたわけでもなさそうだし、リリリュビさんのパーティーにいる限りは、マグラルド様と共にいられるわけだし。
そんなことを考えていたら、マルコラさんに生暖かい目で見られたので、軽く咳ばらいをして、やめてほしい、という無言のアピールをしておく。
「貞操を守るために男装をしてた、って理屈は分かるけど、でも、もうその必要もないよね? ね、マグラルドくん」
「当然だ。僕が守る」
即答のように、リリリュビさんの問いにうなずくマグラルド様に、思わず「ヒエッ」と変な声が出てしまった。
「あたしとしてはどっちでもいいよ? パーティーランク昇格後にすぐメンバーが抜けるとちょっと印象悪いから、次の昇格が難しくなるのは事実なんだけど。でも、実質戦力は変わってないし、マグラルドくんがいれば、まだ青石級の次、緑石級でも余裕そうだし、そこまでメンバー抜けの事実は足引っ張らないかな」
……そう言われてしまうと、少し悩むな……。
男装が不便だったことは事実だけれど、正直二年も続けていれば、ある程度慣れたし。性別を隠していなければ、困らないのになー、と考えたことは一度や二度ではないが、それをうまくカバーしてきたのだ。今さら、絶対に戻したい、というわけでも……。
他の人の意見を聞こうかな、と、マルコラさんとザフィールの方を見る。
「私もどちらでもいいよ? 恋とは万人に許された権利だからね。これから初々しいカップルのやりとりが見れると思うだけで、胸が高鳴るよ」
「まあ、オレも好きな方でいいと思うが……」
通常運行のマルコラさんは放置。ザフィールの方は、ちらっと、マルコラさんとマグラルド様を交互に見た。
……成程、わたしがディアンのままだと、マグラルド様が同性愛者のように見えてしまうのか。マルコラさんではないけれど、それもまた、愛の形ではあると思うし、わたしが口出すようなことでは……。
いや、待てよ。
マグラルド様が同性愛者に見られるのは、中々に不都合なのでは?
この辺りは、娼婦がにぎわっている。男社会でありながら、男同士で性欲を発散させる方向に行かないというのは、基本的には同性愛よりも異性愛の方が受け入れられているという証拠に他ならない。娼婦はお金がかかるし。
しかも、マグラルド様は、わたしを探すために、娼館を回っていたはず。
こんなにも格好いいマグラルド様に、娼婦が黙っているわけがない。
マグラルド様が、浮気をするような人だとは全く疑っていないが、マグラルド様に近づく女が増えること自体は、ちょっと、想像できてしまう。「商売だから浮気にならない、女の良さを教えてあげる」なんて女が一人でも出てきたら……。
「ペルアディアで入りなおします」
気が付けば、わたしは強く言っていた。
マグラルド様に他の女が寄り付く姿を想像しただけで、空想の女を殴り飛ばしたくなってしまった。




