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マグラルド様のために、皆で聖女を探そう、という話になったとき、正体を明かせば無駄な行動にならなかったのに、というお叱りは、一切受けなかった。
そういうことをぶつぶつ文句言うタイプの人たちではないとは思っていたけれど、それぞれ気になるポイントがあって、そこに気を取られ、そう考えるまでに至らない、というのが正しいのかも。
「『エーデルヴルフ』の情報を盗めたときには、出し抜けた! って思ったのになあ……。くやし~!」
本当に悔しそうに、リリリュビさんは頭をかいている。戦闘能力では諦めが早い方だけど、情報戦とかには結構自信満々だもんね……。でも、一体『エーデルヴルフ』と何を競っているんだろうか。
リリリュビさんを見るに、『エーデルヴルフ』に勝ちたい、というのは、何も彼らを支配下に置きたいとか、影響を及ぼしたい、とかではなく、単純に、自分より情報戦に強い人間がいるのが気になって仕方がないのだと思う。娼婦を逃がす活動に興味なんてなさそうだし。
いつもなら、こんな状態になったリリリュビさんを一番に慰めるであろうマルコラさんは、目を輝かせてわたしたちの方を見ている。こっちはある意味、予想通りというか、なんというか……。
「身分差を埋めるための努力……、ようやく婚約できたと思えば、恋敵に取られ……、二年越しに結ばれる……。とても――、とってもいいと思うよ!」
なんともまあ、いい笑顔で……。いつも余裕そうに、にこにことしている人ではあったと思うけど、リリリュビさん関連以外で、ここまでいい笑顔になるのは、滅多にない。
「後で詳しく聞いても?」
「絶対、嫌です」
こうなったマルコラさんは話が長い。少しくらいなら話すこともやぶさかではないけれど、絶対に一時間や二時間で解放されないので、最初から断るに限る。……あんまり根ほり葉ほり聞かれるのも、恥ずかしい、し……。
――で。
「……ザフィールは、どうしてそんな、落ち込んでいるの」
頭を抱え、時折、うめき声をあげているザフィール。借金に頭を悩ませている、ギャンブル好きの冒険者が、本当に生活するためのお金が一食分もなくなって、こんな風にうめいているのを何度か見たことがある。いや、それより酷いかも……。
「……いや、だって。オレはお前のこと、男だと思ってたからさあ……。酔っ払った後の介抱とか、魔法論の議論とか、あれ、完全に男同士の距離感だったじゃねえか……。情けない……」
……魔法論の議論はともかく、悪酔いした後の介抱は、正直、わたしが本当に男だったとしても、結構情けないと思うんだけど……。
とは、言えなかった。トドメになりそうなので。




