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マグラルド様の口ぶりから、『こちら側』というのは、人工地――つまり、ジュダネラル側のことを指すのだろう。
人工地の『淀み』を神与地の人間に移し、人口を減らし、そのタイミングを狙って土地を奪う、という計画は、既につぶされている、ということだと思う。
マグラルド様がはっきり言わないから、推測でしかないけれど。
「……、すまない、その男と、二人きりにしてくれないか」
「やだ」
マグラルド様の要求を、リリリュビ様は食い気味に却下する。
「どう見たってマグラルドくん一人にはできないよ」
「だが――、……これから話すことは、機密事項だ。人に知られるわけには……」
知られたら罰則、というレベルの話ではない。明らかに、命をもって、聞かなかったことにしなければならないような話。たとえ、今回計画がつぶされているとしても、こんな話は外に出せない、というマグラルド様の気持ちは分かる。今回、たまたま回避できたとしても、同じことを考える人が出ない保証もない。
ただ、リリリュビさんの気持ちも理解できる。『障り』による呪いが、どれほどのものか分からない。今、マグラルド様は、それこそまだ生きているけれど、何かあってからでは遅いのだ。
それに、これだけ満身創痍では、『障り』による呪いでなくとも、二人きりになったら、ストインさんに殺されてしまうかもしれない。
「あたしは冒険者のパーティーリーダー。仲間の命を預かってる立場なの。仲間の無事を、一番に考えなきゃいけない。今の君を、一人にはできないよ」
「な、なら、ボクが残るよ!」
この状況をなんとかしないといけない、という一心で、わたしは思わず提案していた。さっさとストインさんをどうにかして、マグラルド様の治療をしないとならない。だから、こんなところで言い合っている場合ではないのだ。
――と、思って言ったのだが、良策ではなかった。リリリュビさんが残れないのなら、わたしだって残れるわけがない。
「――……ボ、ボクも一応、関係者というか、もう話聞いちゃったというか、あの……、後ほど、差支えない範囲で説明します……」
本当はマグラルド様以外に正体を明かすつもりはなかったのだが、人工地の人間が神与地を奪うために動いていた、という話に比べれば、わたしの方はまだ知られても問題ない範囲。
さっさとマグラルド様が探していた聖女だったと明かしてくれれば無駄に行動しなくてよかった、と怒られたり、二年も前の恋を引きずるなんて、重過ぎる女、と引かれるとか、あるかもしれないけど、命には代えられない。
それに、リリリュビさんたちよりもわたしの方がマグラルド様の部屋へと先にいたのだ。
全て聞いていた、と言うのも、嘘ではない。




