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この男が、わたしにペラペラと情報を与えているのは、最終的にわたしを始末するからに他ならない。
ということは、もし、ザフィールがこの話を聞いてしまったら、彼もまた、命を狙われてしまうだろう。
かといって、「なんでもないから気にしないで!」が通用するレベルではない気がする。というかそもそも、ここはマグラルド様が借りた部屋なので、わたしがいることが若干不自然。
どう返事をするべきか迷っていると、顔のすぐそばに、マグラルド様の剣が通った。上から下へ。マグラルド様がわたしのすぐそばに、剣を突き立てている。
一瞬遅れて、ストインさんがわたしを殺すために、切りかかってきていたことに気が付く。マグラルド様の剣がなければ、わたしの首はとっくに切られていたことだろう。
「――少し、話し過ぎましたね」
先ほどまで余裕そうにへらへらしていたストインさんの表情が少し曇る。それでも、まだ、彼が優勢であることには変わりがない。
「――、ごほっ!」
剣を突き立てていたマグラルド様の体が、ぐらりと揺れる。わたしは慌てて、彼が倒れてしまう前に抱きとめる。ぞわぞわと、『障り』に触れる不快感はあったものの、そんなことは気にしていられない。
「なあ、開けるぞ?」
ザフィールの声。少し遅れて、扉が開く音がする。
ストインさんの目線が、わたしから、扉の方へと移る。
わたしは守護魔法ばかりが得意で、攻撃魔法も何も、使えない。ただ手を伸ばしても、ストインさんの動きについていけるとも思えない。
それでも、彼に手を伸ばしたとき――。
――ドッ!
割れた窓から、何かが飛んで来て、ストインさんの肩に当たる。それが矢であることに気が付いたのは、音もなく、窓の方向から現れたリリリュビさんがストインさんを取り押さえたときだった。
「力押しの戦闘は苦手だけど、裏をかいたり、そういうのは得意なんだよ」
リリリュビさんが言いながら、あっという間にストインさんの手足を縛る。リリリュビさんがこうやって来た、ということは、矢は、外からマルコラさんが放ったものだろう。そう思って窓の外を見れば、少し離れた場所にある木の上に、誰かがいるのが分かる。
「――んで? これどういう状況?」
手足を縛ったストインさんをうつぶせにさせ、その上に足を組んで座ったリリリュビさんが、手を払いながら言った。
あまりの手早さに、開いた口がふさがらない。
補佐職でありながら冒険者パーティーのリーダーを勤める彼女の、本気はすごかった。




