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わたしの生い立ちを知る貴族は、こぞってわたしの両親を馬鹿だと言った。
貴族に逆らうのだからこうなるのだ。
平民の分際で。
大人しく従っておけば、もっといい死に方ができただろうに。
一番腹が立ったのは、そこまでしてわたしの力を求めたのだから、尊い王族のためにその力を使え、と言われたことだった。
王都に来てから、王城に住まい、王城聖女見習いとして役目を与えられるようになってから、毎日が楽しくなくて、灰色で、とにかく、消えてなくなりたくなった。
それでも、自ら命を捨てることはできなくて。父さんと母さんに、顔が向けられなくなるし、何より、二人が生きていたことを証明する証拠は、わたしだけになってしまっていたから。
だから、どれだけ悔しくとも、憎くとも、生きるために、聖女にならねばならない。
そんな、ある日のことだった。
「――君が、ペルアディアか」
マグラルド様と出会ったのは。
わたしの王城に用意された私室に現れた男性は、まだ幼さが少し残っているのに、随分と身長が高くて。父さんより背の高い人会ったのは初めてで、別の意味で、他の貴族とは怖かった。わたしに対して酷いことばかり言うだとか、あれほどおぞましいことをしておいてそれを肯定するだとか、そういうものではなく、純粋に、大きな生き物への恐怖。
しかし、マグラルド様は、膝をついたかと思えば――頭を下げた。
「この度は、本当に、申し訳ないことをした。尊い命が失われたのだ。謝罪で済む話ではないが、僕には謝ることしかできない」
そう言って顔をあげた、マグラルド様の表情は、真剣そのもので。
平民をあざける色も、見下すものも、何もない。
純粋に――両親の死を、悼んでいた。
「それと――君に、これを」
マグラルド様がわたしにくれたのは、一本の鍵だった。真新しい、手のひらに収まる鍵。
「君の私室からは少し歩くが、城内の菜園の区画に、君の土地を作った。それを囲う柵の鍵だ」
「菜園……?」
「ああ。わずかながら、君の実家の畑に残っていた野菜の苗を移動させた。君の両親や馬の墓は作れなかったから、その代わりに、と。野菜では、墓のようにいつまでも残らないだろうが……」
「――!」
わたしは、思わず駆けだした。
行き先も分からないままに走り出したのに、いつの間にかマグラルド様が並走していて、そのまま菜園へと案内してくれた。
わたしに割り振られた畑の区画には、ほんの少し。農村で生まれ育ち、農家の娘として家業を手伝っていたわたしからしたら、お遊びみたいな面積。短い畝が三本並んでいるだけ。
それでも、そこに並ぶ野菜は、確かにわたしの家で育てていたもの。
「あ、ああ……っ」
わたしは思わず、野菜に近づき、膝をつく。服に土がつくことも、気にならない。
支柱にくくりつけられている紐は、あの農村でも、わたしたちの家だけが使っていた、紐で。支柱と野菜の茎が固定されたまま運んできたのか、紐の結び方は、いつもの父さんの癖が出ている結び方そのものだった。




