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一度街に戻ったわたしたちは、それはもう、空気が重かった。より正確に言えば、わたしとマルコラさん以外の三人が、非常に落ち込んでいたのである。
マグラルド様はペルアディアの情報を何一つ得られなかったことに。
リリリュビさんは情報を嘘だと見抜けず、意気揚々と騙されてわたしたちを危険な目に合わせたことに。
ザフィールは、魔法攻でありながら、魔法を検知できず、その上押し勝つことができなくて、すぐに視界を晴らすことができなかったことに。
それぞれ、見たことないくらい暗い空気を出している状態に、わたしはなんと声をかけたらいいのか分からなかった。ザフィールはともかく、マグラルド様とリリリュビさんに関しては、わたしの情報が嘘だと分かった上で何も言わなかったので、ある意味でわたしもあの男たちと同罪なのである。
その上で、わたしが何が何を言えるというのか。
「よしよし。本格的に騙されて手遅れになる前に気が付けただけマシだよ、リリちゃん」
そんなことを言いながら、マルコラさんはリリリュビさんを抱きしめて、頭を撫でながら慰める。この人がリリリュビさん贔屓なのは今に始まったことではない。
「――……とりあえず、いつもの街に帰ろうか。これ以上、ここで得られる情報はないだろうしねえ」
マルコラさんの言葉に、マグラルド様がびくりと肩を跳ねさせる。それはトドメになりますよ……。
「まあ、アルレームには来ていない、って分かっただけでも上出来じゃない? 二年前にいなくなった人間を探すなんて、そう簡単なことじゃないし、すぐには見つからないよ」
リリリュビさんの頭を撫でることを辞めないままに、マルコラさんがそんなことを言った。わたしは気まずさに、目を逸らす。
今、ここにいるもので……。普通は他の人に追われるような状況なら、もっと遠くに逃げると考えるだろう。
「それに、あのパーティーの拠点も私達と同じ街だからね。そのうち会えるよ」
そう言いながらも、マルコラさんは、こっそりと「多分」と付け加えた。わたしだったら、こんなことがあれば、拠点の街を変える。それでも、冒険者パーティーが拠点の街を変えるというのは、そう簡単なことでもないので、もしかしたら、今頃彼らは一足先に、いつもの街に戻っている可能性もあるけれど。
冒険者ギルドでは、街によって違う、それぞれ暗黙の了解があるので、新参者が入り込むのは少し難しい。駆け出し新人だったら教えてくれる先輩がいるし、高ランク冒険者だったらそもそも暗黙の了解なんて守らなくとも許される風潮があるので話は別だが、青石級だと、あまり拠点を変えたいとは思わないだろう。
とはいえ、拠点を変えるのに時間がかかったところで、向こうは全力でマグラルド様を避けるようになるだろうから、結局会えないことに変わりはないだろうけど。
わたしとマルコラさんで落ち込む三人をなだめ、この街を後にすることになったのだった。




