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しばらく道を歩いていると、ぴたり、とリリリュビさんが足を止めた。一番前を歩くストインさんに続き、わたしたちの中では最も前を歩いていたから、足を止めたのがすぐ分かる。
「――……ごめん、やらかしたかも」
リリリュビさんが謝った直後。道の左右、山の中に生える木々や背の高い茂みから、数人の男が現れた。驚いて、わたしとザフィールが数歩下がる。逆に、わたしの前を歩いていたマルコラさんはリリリュビさんの元へ行くため、前に駆ける。
リリリュビさんの隣を歩いていたマグラルド様は、リリリュビさんをかばうように前へ出た。
「まさか、先に気が付かれるとはなあ」
唐突に表れた男たちの中で、いかにもリーダー格、という男が、にやつきながらそんなことを言った。
ストインさんは全く知らない人だったけれど、リーダー格の男には、見覚えがあった。
「お前――いや、そっちの男の方か。お前が、ジュダネラルの記念硬貨を持っていた男だな?」
わたしを一瞬見た後、リーダー格の男の視線がマグラルド様に移った。
以前、わたしがとある冒険者にぶつかり、剣が汚れたといちゃもんをつけられたことを思い出す。あの男のがいる冒険者パーティーのリーダーだ。
辺りを見回せば、あのときぶつかった男も、そこにいる。リーダーの男とは違い、明らかに気まずそうな表情をしているが。
あのときに逃げ出した彼のことだ。マグラルド様が、ただ貴重で高価なものを所持しているわけではなく、その先のことも気が付いているに違いない。
もっとも、彼のパーティーリーダーは、そんなことは分かっていないようだけれど。もしくは、分かった上で、手を出そうとしているか。
それほどまでに、ジュダネラルの記念硬貨というものは高値で売れる。マニアに売れば二、三年は働かなくても余裕で生きていけるのだ。闇オークションに出品したら、きっと、この人数で割ったとしても、一人当たりに相当な金額が転がり込んでくるだろう。
「あんなのに……騙されるなんて……」
ショック受けるリリリュビさんの表情は、見たことがないくらい、焦りと後悔に満ちていて、彼女もわたしたちに嘘をついたのではなく、被害者側だということが分かる。
気が付けば、ストインさんがいない。完全にはめられた。
わたしは分かっていたことだったけど……まさか、ここまでの人数が待ち構えていたとは思わなかった。
「……だとしたら、なんだというのだ」
「その硬貨、渡してもらおうか」
力づくで、殺してでも奪い取る、と言わんばかりの顔を見せるリーダーの男に、マグラルド様は、ただ、「ペルアディアの情報をもらえるなら、いくらでもくれてやる」と言い放った。




