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――なんだか、凄くいい夢を見た気がする。
明朝、わたしの気分は最高だった。
マグラルド様がわたしのことを好きだと言ってくれる夢。浮かれながら部屋の外に出ると、同じようなタイミングで廊下に出たらしいザフィールが心配そうにこちらを見てくる。
「……寝不足か?」
「え? なんで? ちゃんと寝たよ?」
「いや、お前、目のクマやばい……、いや、何でもねえ」
わたしの返事に納得いっていない様子のザフィールだったが、わたしが首をかしげると、彼は目線を逸らしたまま、そそくさと退散してしまった。変なの。ちゃんと寝たのにね? まあ、寝相が悪かったのか、窓のそばに座り込んでいたんだけど。
わたしたちは宿屋の受付のあたりに集合し、そのまま、ペルアディアの家を教えてくれる、という人物へと会いに行った。
宿からあまり離れていない場所にある、一軒家の前に、青年がいた。
「この街の税管理者なんだって。一年半くらい前からこの街に住むようになった女性が、マグラルドくんの探している女性にそっくりらしくて」
リリリュビさんの紹介を経て、男性が頭を下げる。
「ストインと申します、どうぞ、よろしくお願いします」
青年――ストインさん。わたしは見たことない人だし、聞いたこともない名前。まったくもって、知らない人。この人が偽の情報を流したのは確実だろう。
それに、税管理者がこんな、街の入口に、安っぽい家を構えるだろうか? もっと奥の、高そうな家を使うような気もするけど……それは流石に偏見? 嘘の情報を流した人、というのが分かっているから、そう感じてしまうだけなのだろうか。
しかし、マグラルド様は、ストイン、という名前にわずかながら反応を示したように見えた。もしかして、知っている名前? この青年は、本当にジュダネラル王国の王城関係者なのだろうか。
「探しているという女性ですが、名前はアディーラです。数年前までジュダネラルで聖女をしていたそうで。この国では聖女は尊いものとされませんから、珍しくてつい色々聞いてしまって……。ああ、こちらです」
話しながら、ストインさんはわたしたちを案内する。「街の外れなので、少し歩きますよ」と言う彼は、明らかに森の方へと歩いている。怪しいけれど、森に続く道自体は、ここ最近用意されたものではなく、明らかに長い間使われている道だ。
レンガや石で補装こそされていないが、道を外れないように木の杭が等間隔に地面へと打ち付けられ、ロープでつながっている。
「アディーラか……。分かりやすい偽名っつうか、なんつうか……」
ストインさんの後をついていくザフィールが、ぽつりとつぶやく。ペルアディア、という名前を知っていれば、本名から取った偽名だと、すぐに分かるだろう。
安直、と言わざるを得ない。……まあ、『ディアン』もそんなにひねった偽名でもないんだけど……。




