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明日のことが気になって眠れないでいると、ふと、窓の外から話し声が聞こえてきた。宿の裏手で、誰かが話しているのだろう。一階に部屋を取ったとはいえ、窓がきっちり閉められていると、話している内容までは聞こえない。
カップルがいちゃついてるのかな……時間も時間だしな……なんて考えて、わたしは少し、外をうかがう。どうせ眠れないのだから、多少外がうるさくたって関係ないのかもしれないが、これ以上盛り上がってもらっても気まずいので、今のうちに注意しておこうと思って。
「……!」
しかし、外で話しているのはカップルなんかではなく、マグラルド様とザフィールだった。二人で宿を抜け出していたらしい。
何やら真剣な表情で、話をしている。見なかったことにするのが正解なのだろうが、わたしは、どうしても気になってしまった。……け、喧嘩とかしているのなら、止めないといけないし……。
外開きの窓だから、部屋から窓を開けたら、聞き耳を立てているのがバレてしまうだろうか。
考え、迷ったのはわずかな間。
わたしはこっそりと窓を少しだけあける。全部開けたら流石にすぐばれるだろうけど、少しだけなら大丈夫だろう。結構古めの宿だし、窓枠が緩くなっていて、鍵をかけていなかったから風で勝手に開いた、と言い訳できそうだ。
とはいえ、二人から距離が離れているから、全ての会話が聞こえるわけじゃない。
「お前――もし、――ったら、どうする――? 探すのは構わないが――ディアン――――てくれ」
「ディアン? なぜその――、今――」
……もしかして、わたしの話をしてる?
もし、なんとかだったらどうする? っていう話だとは思うんだけど……。
「……いや、これは――。悪いな。ただ――たくて。お前、どうして――、その聖女のことを――? 惚れてるのか?」
やっぱりわたしの話!? 先ほどまでは『ディアン』の話をしていたようだけれど、いつの間にか、『ペルアディア』の話に変わっている。え、いつ変わった? もしかして、ディアンとペルアディアが同一人物だとバレてる? でも、そうだったら、ザフィールのことだから、わたしに、先にこっそりと確認を取ってくれるだろう。「もし隠しているのならば、隠し通すことに協力してやる」、くらい、ザフィールなら言ってくれる。
だから、バレてないはず。
「――……ああ、そうだ」
マグラルド様が、何かを肯定し……、あ、あれ? さっき、ザフィールの投げかけた質問って、ジュダネラル王国から追い出された王城聖女ペルアディア、つまりはわたしに惚れているのか、っていう質問とか、そういうのじゃ、なかった、っけ……?




