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一人先に宿へと戻り、着替えて外に出ると、ちょうどマグラルド様とザフィール、マルコラさんが帰ってきているところだった。わたしが宿に戻ってからすぐに合流したらしい。
「よう、災難だったな」
わたしが水に濡れて宿に戻っていることを聞いたのか、ザフィールがそんな言葉をわたしにかけてくれる。
「おかえり。そっちはどうだったの?」
「全然駄目。そもそも、ジュダネラルから来た奴自体、ここにあんまりいないらしいな」
わたしとザフィールの会話に、「まあ、ここって、外からの人が遊びに来るような場所ではないからねえ」とマルコラさんも会話に加わる。
確かに、村ではなく街と言えるほどには栄えているが、目立った観光地があるわけでもないし、山に囲まれている分、交通の便はやや悪い。それなら、わたしたちが普段から拠点にしている街の方がまだ訪れる価値があるだろう。交通の便もいいし。
『エーデルヴルフ』経由で逃げた女性だとして情報を集めるとなると途端に苦労するだろうから、ジュダネラルから来たこんな感じの女性を知らないか、と探し回ったらしい。まあ、簡単に情報が追えてしまったら、『エーデルヴルフ』の存在価値はなくなってしまう。
「出身地を隠してることも考えて、一応、絵も見せたんだけど、一人としてピンと来てなかったな」
「あとはリリちゃん待ちかなあ。ここにいないとなると、別の街も考えないといけないけど、一旦いつもの街に戻ることにはなりそうだね」
「アーバリ草、納品しないといけないし」とマルコラさんは言う。確かに、これを抱えたまま、次の街には行けない。
「――……すまない」
そういうマグラルド様の声はひどく落ち込んでいて、その声が、わたしの胸に突き刺さる。
「気にすんなって! お前がうちのパーティーに来てくれたおかげで受けられる依頼の幅も増えて、ランクも上がったんだ。確かに依頼そっちのけで、ずっと探し回るのは厳しいけどよ、こんくらいの協力は惜しまねえよ」
バシバシとザフィールがマグラルド様の背中を叩きながら、励ますように言う。
「とりあえず飯食おうぜー。飯屋が混みだす前に夕飯済ませちまおう」
ザフィールがそんな提案をしたとき。
「みんなーっ」
通りの方から、手を大きく振りながらリリリュビさんが帰ってきた。その表情は――明るい。
「ただいま。そっちもちょうど帰ってきたところ?」
息を弾ませながらリリリュビさんが言う。走ってきたから息が上がっている、というわけではなさそうな様子に、わたしはなんだか嫌な予感がした。
「ふっふっふ……! あたしにかかれば人ひとり探し出すなんて、造作もないこと」
腰に手をやり、彼女は言い放った。
「ペルアディアの情報、ゲットしてきました! 褒めてっ」




