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「――……ほら、ボクが声をかけるから、マグラルドは後ろに回って」
しかたなく、わたしはマグラルド様に変わって聞き込みを始める。
男装をしているわたしは、男にしては小柄、と言う風に見えるようで、わたしが声をかけると、先ほどまでの苦戦っぷりが嘘のように、話を聞くことができた。……まあ、若干、わたしを子供扱いしている雰囲気を感じるけれど。
とはいえ、会話が成り立つようになっただけで、マグラルド様が探している聖女― ―ペルアディアの情報が得られるわけではない。
結構な人数に声をかけたけれど、誰一人として、知っている人はいなかった。
当然と言えば当然なんだけど……。
マグラルド様になんと声をかけたらいいか分からなくて、目線を泳がせる。今顔を合わせたら、わたしが何か知っていると、勘ぐらせてしまいそう。
しばらく聞き込みを続けているうちに、わたしたちは大通りへと出る。人や物の出入りが激しい、冒険者ギルドの街に比べたら規模は小さいけれど、それなりに人でにぎわっている。
――と。
「…………」
ふわり、と懐かしい、おいしそうな匂いがして、わたしは思わずそちらを見てしまった。
ちらほらと、台車型の屋台が通りに並んでいるけれど、その屋台の一つに、エンテレ鳥の肉だね串を売っているものがあったのだ。ステーキにするために、綺麗な形にカットする際、出てしまう肉の切れ端をこねて丸めたものを、串にまとわせ、焼いたもの。
エンテレ鳥は人工地によく生息する鳥だから、神与地の国で見かけるのは珍しい。何度かこの街に訪れているけれど、あの屋台は初めて見た。
「――食べるか?」
「えっ」
あんまりにもじっと見つめ過ぎたらしい。マグラルド様が、わたしに気を使って声をかけてくれた。
「い、いや、でも……」
「少しくらい、構わんだろう。それなりに歩き、話をしたし、休憩をするのにはちょうどいいタイミングではないか?」
「それに、何かおごる、と言ったしな」と、マグラルド様は言った。ペルアディアを探している本人がそういうのなら……いいのかな?
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
わたしがそう言うと、マグラルド様は「ついでに店主にも聞き込みをしよう」と独り言のように言葉をこぼした。
「……そんなに、その聖女のことが大事なの?」
わたしは思わず、聞いてしまった。
本当は聞くつもりなどなかったのに、あまりにも深刻そうな横顔を見て、つい。全てを知っていながら黙っている罪悪感に、負けつつあるというのもそうだけれど――それだけじゃない。
だって、わたしは、彼にそこまで想ってもらうようなことは何もしていないのだ。わたしは一方的に恋愛感情を抱き、拗らせ、敬愛していたけれど――結局は、あっさり婚約破棄になる程度の関係性しかなくて。




