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今晩泊まるために取った宿を開始地点として、時計回りにわたしとマグラルド様が、反時計回りにザフィールとマルコラさんが聞き込みをしていくことになった。
ちなみに、ザフィールたちは、リリリュビさんが描いた絵を使って探すことになっている。マグラルド様の持っていた聖女時代のわたしの姿絵を元に描かれたリリリュビさんの絵は、描き込みこそ少ないあっさりしたものだが、特徴をよくとらえられている絵だった。本当にこの人は器用だよな……不器用なわたしからしたら、うらやましいことこの上ない。
閑話休題。
そんな感じで聞き込みを始めたのだが。
「――すまない、少しいいだろうか」
「ああ、なん――ひぃっ!」
マグラルド様が通行人に声をかけているのだが、彼が声をかけると、必ず皆怖がって逃げてしまう。正確には、マグラルド様の顔を見ると、だが。
逃げられてばかりのマグラルド様は、なぜこぞって逃げられてしまうのか理解できない、とばかりに、途方に暮れていた。
流石にちょっと、かわいそうと言うか、なんというか……。
そもそも、マグラルド様が探している聖女はわたしであって、今ここにわたしがいる以上、これは無駄足でしかない。それが分かっている上に、見放すというのは、さすがのわたしでもできなかった。
「……マグラルド、もう少し、優しく声をかけなよ」
「優しく……」
「君は身長が高い上にガタイがいいんだ。普通の人からしたら、それだけで威圧感を感じて、怖く見えるものだよ」
わたしが聖女としてジュダネラル王国にいた頃から、マグラルド様は周りに恐れられていた。
わたしとか、最後までマグラルド様の周辺担当の警備隊にしがみついた警備兵とか、あとは護衛の近衛兵とか。マグラルド様の人となりを知り、敬愛している人間は別だったけれど、使用人の皆は、マグラルド様を遠巻きに見て、極力関わりたくない雰囲気を出していた。
普段はマグラルド様と関わり合いがないのに、一時的とはいえ、マグラルド様の身の回りの世話をすることになった使用人が、陰で半泣きになりながら、マグラルド様が恐ろしいと同僚に話しているのを見たことは、一度や二度では収まらない。
素晴らしい人ではあるんだけど、マグラルド様を知るまでの過程は、ちょっとハードルが高いというか、壁があるというか……。
今でこそ、マグラルド様を諦められず、彼の言動に一喜一憂しているわたしですら、初対面のときは、彼が怖くて仕方がなかったものだ。わたしが生まれ育った農村の中で、一番背の高い父さんよりも背が高い男性を、初めて見たのだから。
背が高かった父さんよりも、頭二つは勝っているのでは、と当時はマグラルド様が魔物のように感じたものだ。まあ、実際は、そんなに離れていないと思うけど。せいぜい、頭一つ分高いくらいだろう。




