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「つい、ったー!」
険しい山道を通り、ようやくアルレームにたどり着いたとき、わたしはガラにもなくはしゃいでしまった。本当に疲れたのだ。
結局、あの休憩所からここに至るまで、一度も他の休憩所を見つけられなかったので、あのときにあそこで休んだのは正解だった。
街に入ってすぐの場所で露店を開いている商人に、リリリュビさんたちの風貌を伝え、そんな感じの人物がこなかったか、と尋ねると、つい先ほど、宿の方に向かったと教えてくれた。
宿の場所も聞き出して、その宿に行くと、リリリュビさんたちが、宿の受付と話しているところに出くわす。
わたしたちが声をかけるより先にザフィールがこちらに気が付いた。
「お、お疲れ! 怪我は大丈夫か?」
ザフィールが声をかけたことによって、リリリュビさんとマルコラさんもこちらを振り向く。
「ボクを誰だと思ってるの。怪我くらい、サクッと治しちゃうから」
「はは、そりゃそうか」
マグラルド様が妙にうなされていたことは伏せておく。あんまり言いふらすようなことでもないし。
「ちょうど宿取れたところ! 荷物置いたら、手分けして聞き込みね」
リリリュビさんの言葉に、わたしは曖昧に濁しながら返事をした。
マグラルド様の探している聖女は、わたしで、今まさにここにいるのだから、情報が出るかは怪しい。この街に来たことがないわけじゃないけど、『エーデルヴルフ』経由では来ていないから。
それでも、「ここにはいませんよ」なんて断言しようものなら、どうして知っているのかと情報を求められるだろう。
マグラルド様に諦めるよう、こっそりと誘導したほうがいいのかな……。
「あたしは一人の方が動きやすいから一人として、残りはどうしようか。裏表で決める?」
言いながら、リリリュビさんが軽く握った拳を振る。振り下ろした拳が、表か裏か、同じ方を向けた相手とペアになろう、ということか。
「この宿を基準に、表組が時計回り、裏組が反時計回りで街をぐるっと回る感じで。はい、せーのっ」
リリリュビさんの掛け声に、わたしたちは拳を振り落とす。
手の甲が見えているのは、わたしとマグラルド様。
握りこんだ指が見えているのは、ザフィールとマルコラさん。
「お、一発で決まったね」
手間取ることなく、組み分けが決まったことにリリリュビさんは機嫌がよさそうだけど……。
まさか、マグラルド様とまた二人っきりになるなんて……。
「よかったね、ディーくん」
こっそりとわたしに耳打ちしてきたマルコラさんを、軽くどついた。




