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あの後、少し早いけれどマグラルド様と見張りを交代し、わたしはそのまま眠りについた。早めに起きて、マグラルド様と再度見張り番を変わろう、と思っていたのに、起きたのは、すっかり朝日が昇っていた頃で。
わたしが本来起きる時間だった。
「――……ボクって、こんなに寝汚かったっけ……?」
本来起きる時間を過ぎなかっただけマシではあるのだが……。
頭を抱えるわたしをよそに、「それだけ疲れていたということだろう、気にするな」と言いながら、マグラルド様が出立の準備をしていた。
ちらり、と彼を見ると、顔色は普通。わたしと転げ落ちて咳込んでいたときや、うなされて寝ていたときのような様子は一切ない。いつも通り、平然としている、真顔のマグラルド様。
……わたしの考え過ぎ、なのかなあ。
わたしの中では、マグラルド様は完璧超人というか、真面目で堅物、そしていつも変わらない、よく言えば真剣、悪く言えば仏頂面、そんな無表情なイメージがある。
ただ、それは、わたしとマグラルド様がずっと一緒にいたわけではないから、彼の完璧が崩れたところを見たことがないだけかもしれない。あと、記憶の美化がちょっと入っているか。
『障り』の感覚が走ったのは気がかりだけれど、マグラルド様だって、体調を崩したり、悪夢を見てうなされたり、そういうこともあるだろう。あの人も人間なわけだし、いつでも健康体で悩み一つない、なんてありえないはず。
わたしが、そういうところを知らなかっただけ、知るほど近くにいなかっただけで――……。
……悲しくなってきた。考えるのやめて、わたしも準備しよ。早く山を抜けて、アルレームに行って、リリリュビさんたちと合流しないと。
わたしが起きる前に、マグラルド様がある程度片付けを済ませてくれていたのか、朝食を取って、すぐに出発できる準備が整った。……なんだかすごく、借りを作ってしまったようだ。
手を払われたことを、何かおごってね、で済ませようとしたけれど、これは逆にわたしが何かおごらないといけないやつでは……?
「そろそろ行くぞ」
そんなことをわたしが考えているなんて、みじんも分かっていなさそうな顔で、マグラルド様が声をかけてくれる。いつまでも悩んでいるわけにはいかない。どこかのタイミングで恩を返すとして、今は素早く行動するのが一番だ。
こうやって分断されたときみたいに、足を引っ張らないようにしないと。
わたしは気合を入れなおし、休憩所を後にして、マグラルド様と共にアルレームへ向かってと歩き始めた。




