表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/36

第35話

 俺とロンドのやり取りが落ち着くと、


「あの人たちが、守ってくれたから、大丈夫だった」


 エルが女性翼人たちを指差しそう言って来る 。


 と同時に、エルが俺の腹に頭突きを食らわせてきたので、ポンポンと軽く叩いてやる。

 するとエルが、「んっ……」と、満足気に吐息を漏らす。


 やはりエルも精神的に辛かったようだ。

 何時になく甘えてくる。


 俺はエルが満足するまで背中と頭を撫で続ける。

 エルにもかなりの時間撫でてやると、何とか落ち着いて来た。


 エルを撫でながら、ロンドが落ち着いたのをもう一度確認して、取り敢えずこれまでの事を聞く事にした。


 すると、罠に嵌められ首輪をされたロンドとエルを庇いリリーまで首輪をされたと言う。

 そしてその夜、リオの奴が、ロンド、エル、リリーを無理やり自分のものにしようと三人が監禁されている部屋に入って来たらしたらしい。


 その時、ロンドは罠に嵌められ茫然自失の状態だったらしく、エルとリリーは最低限の打ち合わせを行い、即行動に出る。


 エルがリオにナイフで対抗して、その隙にリリーが助けを呼びに行くと、直ぐにリリーは自分の部下五人の女性翼人を引き連れ、部屋に戻って来た。

 そして、ロンドが床に頭を打ちつけ、気を失ったのを見た五人の女性翼人は、


「理由があって、一時的に首輪で拘束するならばまだしも、始祖様の生き写しのエル様、その付き人のロンド様、そして仲間のリリーに手を出すならば、もはや正義も理もなき、ただのケダモノ!」


 そう言って、リオの前に立ちはだかったと言う。

 更に、


「もしこのまま続けるのであれば、三人を命の限り守り、その不正を必ず他の翼人たちに伝える!」


 と譲らなかったらしい。


 俺の前に出て来た時に、誰かが事情を叫ぶなりして、教えてくれていればと思わなくも無いが、彼女たちもたった五人で数百人の翼人たちと対峙していたのだ。

 俺が味方と確信出来ない状況では、無理だったのだろう。


「感謝する。外のゴミどもを片付けたら、改めて礼をしよう」


 俺がリリーたちに対しそう言って外に出て行こうとすると、


「ま、待って下さい!」


 リリーから、静止する声が上がる。


「何だ?」


「外の者たちは、リオの企みを知りません。

 ひたすらに、始祖様のためと思い、行動したのです。

 どうか、お許し頂けないでしょうか?」


 俺とボーンの力を見た後だからか、態度がやたらと丁寧だ。


 しかし、リオの企み?

 それに関しては、俺も何が原因でここまでの事態になったのか、知りたかったので詳しく聞いてみる。


 天空島を確保しようとする人間、亜人の話。

 天空島の一般的な価値の話。

 ダンジョンマスター奴隷化の話。

 『天を駆る導きの翼』の伝説と、始祖の姿絵の話。


 そして恐らくリオは己の欲望を満たすため、皆を騙し全てを独占しようとしていたのだろうとリリーは言う。

 リオに関して言えば、エルに洗脳魔法が掛かっていると嘘をついたり、ダンジョンマスターの話を長老たちはじめ、自分を崇拝する仲間以外には黙っていたりと、怪しすぎる動きが多かったようだ。




 しかしリリーの話を聞く限りでは、どうやら俺は、世間の人間たちにはダンジョンマスターと知られてはいけなかったようだ。

 今後も当然、他人には知られてはならないだろう。

 リリーたちには知られている。

 ……どうしたものか。


 ただ、ここにいる女性翼人たち以外で、俺がダンジョンマスターと知る者は、リオの仲間たちだけだったらしい。

 その者たちは、先程ボーンの魔法で死んだ者と、天空島に攻めて来た者たちだけ。

 後の翼人たちは、始祖の生まれ変わりであるエルを助ける為だと、騙されている者達だという。


 そもそも、俺の天空島を問答無用で攻撃して来た翼人たちには、その時点で正当防衛の反撃を加えるつもりだった。

 特段恩赦を与えるつもりも無いから、捕らえた場合は牢獄行きかな……。


 ……ダンジョン改変で作らないと、牢獄。


 あとは、リリーたちについてどうするかと思っていたら、俺がダンジョンマスターである事は口外しないと、リリーとその他の女性翼人も誓ってくれた。


 ボーンに虚偽感知させても、嘘は無いと言う。

 ただ、この虚偽感知は嘘では無い範囲で受け答えして、都合の悪い事は言わないと言う逃れ方も出来る。

 しかし、この女性翼人たちには、ロンドとエルを守ってもらった恩がある。

 どこまでも疑えばきりが無いだろう。

 そう思い、リリーたちを信じることにした。


 そして、敵対すれば、今度こそ容赦はしないと心に決めて、外にいる翼人たちは見逃してやることにした。

 当然、ロンドとエルを守ってくれた恩に報いる為の意味合いもある。




 俺はリリーに、騙された翼人たちは不問に付すと伝える。

 するとリリーは、俺に大げさな感謝の言葉を述べて、早速外へ行き、全てがリオの企みであった事を、翼人たちに説明し始める。


 ……まあ、仲間の命が助かるのだから、大げさでは無いのか?

 俺だって、ロンドとエルを守ってもらった事に、言葉にならないほどの感謝を感じているし。




 リリーは、リオがエルを我が物にしようとした事。

 天空島の所有者から天空島を盗み取ろうとした事。

 その他の不自然なリオの動きや様子などを事細かに仲間に説明していく。


 そのリリーの隣には、リリーに頼まれてついて行ったエルが、ローブ一枚で立っていたことも信憑性を高め、皆、納得した様子だった。


 しかし、天空島の所有者ではあるが、俺はダンジョンマスターでもある。

 その事は言っていない。

 嘘ではないが、都合の悪い部分は隠してある。

 虚偽感知逃れのような手口だ。

 なぜ黙る事にしたのか?

 俺は外にいた翼人たちが離れているのを確認して、単なる興味でリリーに聞いてみる。


「何故ダンジョンマスターである事を黙る事にした?

 ダンジョンマスターの俺を信用して大丈夫なのか?」


 そう聞くと、


「翼人の中でも、リオのように信用出来ない者もいます。

 そう考えれば、逆もまた、あり得ます。

 ダンジョンマスターでも信用出来るダンジョンマスターもいます。

 私たちは、貴方様が、エル様とロンド様のために、拘束の魔法具に乗る姿を見ておりました……。

 それに何より、始祖様のご主人様ですし。

 始祖様に不利になるような事は口外いたしません」


 リリーは、そう言った。

 俺は、取り敢えず、なるほどと納得したが、エルは、


「私は、始祖では無い。

 ルイ様の眷族」


 少し不快気にそう言った。


「解っております、エル様。

 始祖様とは思ってはおりません。

 ただ、あまりに似ていらっしゃるので、始祖様の生まれ変わりのような……と言う程度の意味でございます」


「……なら、良い」


 エルはそう言うと、もはや何の興味もないように目を逸らしボーっと宙を見る。


 しかし、良いのかエル?

 かなり思い入れがある意味に聞こえるが。

 まあ、今回はその思い入れ故に助かった部分もあるのだが。

 ……良しとするか。


 リリーと女性翼人たちは少しだけ悲しげな目をしている。

 『天を駆る導きの翼』伝説と、始祖の姿絵の話を聞く限りでは、本当はエルに始祖であって欲しかったのだろう。


 ただ俺が思うに、エルはアリス・翼人ではあるが、その始祖とも近しいものを持っているだろう。

 エルを眷属の卵で生み出すとき、鬼丸たち同様、俺の生み出せる中で最高位のものと願っている。

 恐らく翼人の最高位のものとはその始祖で、俺に生み出せる最高位の範囲にもあったから、始祖を原型にエルが生まれたのだろう。

 言って見れば、双子のようなもの。

 姿かたちは同じだが、中身は違う。


 ただ超高ポイントの、虹色の眷属の卵から生まれ、更に種族もアリス・翼人だから、スペックはエルのほうが上である可能性もある。

 当然、下の可能性も無いではないが……。


 命がけでロンドとエルを守ってくれたリリーと女性翼人たちの、肩を落とした姿を見ていると、少し哀れに感じてしまう。

 だから俺は、エルは俺の眷属であることも変わりないし、当然中身は違うが、エルと始祖は双子のようなものである事を軽く説明してあげる。本当に軽くだけ。


 しかし、変化は劇的だった。


 ……リリーはじめ女性翼人五人も、エルに跪いてしまっている。


 遠くにいる他の翼人たちも、なんだ、なんだと、こちらを見ている。


 リリーたちには、もっと後で話してやれば良かった。


 とっくに知ってはいたが。

 ……俺は馬鹿だ。


 やっと落ち着いたこんな場所で、無用な視線を集めてどうするのだ。

 しかし、このままなのも不味い。

 一度話を逸らす為に、ロンドとエルを助けてくれた礼として、何か欲しいものがあるか聞いてみる。

 すると、


「出来る事ならば、アリス様の島で暮らしたい。エル様のお側にいられるし……」


 と言う。

 しかも、他の女性翼人五人も、リリーと同様に返答した。


 とっくに知ってはいたが。

 ……俺は大馬鹿だ。


 いま聞いて、どうする。

 そう言うに決まっているだろ!

 本当に馬鹿め!


 とっくに知ってはいたが!


 ……どうしよう?

 女子を自分の部屋に招待するよりも迷う。

 いまは思いつかないが、何かと不都合が出てきたらどうする?


 ……やはり迷ってしまう。


 しかし考えて見れば、ダンジョンマスターと知られている事もあり、手元に置くのも良いかも知れない。

 取り敢えず、お試しで了承しておこうか?

 駄目ならば、綺麗にお別れする方向で……。

 いや、男女が付き合うとか別にそんな事ではないのだが……。

 俺にとっては、それよりも重大事だし。


 ……ロンドとエルを命がけで守ってくれたし、まあ、いいか。

 取り敢えずは、了承しておこう。




 しかし、アリス様の島。……か。


 アリスの島。

 アリス島。

 またの名を、天空島アリス。


 良いかも知れない。

 今後はそう呼ぼうか。


 そんな事を考えていたら、レオからの連絡が来た。


『敵、全滅』


 あちらも、ちょうど終わったか。


『なでなで要求』


 レオはこの間、撫でてやったから撫で癖が付いたのかな?


 しかし、敵は全滅か。

 これで、しばらくは牢獄は必要なくなったかな?


 そんな事を考えていると、また、魂の融合最終段階の時に聞いた、虹色の玉(ダンジョンコア)の声が聞こえてきた。


魔力(聖力)の獲得により眠りし力との共鳴を確認。これにより、魂と身体のシンクロ率が一部上昇します】


 前回に比べれば微々たるものだが、俺の身体の中から、力が溢れて来る。


 この声と、力が溢れてくる現象についても、後で検証が必要そうだ。


 しかし、いまはアリス島に帰って休みたい。


 取り敢えず、リリーたちにどうするか聞いたら、すぐ天空島に行けると言う。

 ただ両親たちへの挨拶、長老たちへの事情説明などもあるから、出来る事なら明日以降が良いようだ。


 俺は、明日ルル島に迎えに行くと約束し、限定転移魔法でロンドとエルを連れて天空島アリスへ帰還した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ