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第27話

 ロンドとエルをルル島に見送ってから、かなり疲れていた俺は少しだけ横になるつもりがいつの間にか眠ってしまったようだ。

 気が付けば夜になっていた。


 シルバに、ロンドとエルはどうしたのか確認すると、「まだ帰って来ていない」と言う。

 これを聞いて、初めは、歓迎会が長引いているのかな? などと、のんきな感想を持った。


 しかし、何時までたっても帰って来ない。




 翼人たちとの雑談で聞いた話では、この世界では、太陽と月が正確に回る。


 太陽は一年中、変わらぬ時刻に同じ場所から昇り、正午に頂点に達する。

 そして、同じ時刻に同じ場所に沈む。


 月も又一年中、変わらぬ時刻に同じ場所から昇り、真夜中、つまり、正子に頂点に達する。

 そして、同じ時刻に同じ場所に沈む。


 太陽が昇り変わらぬ時刻に沈むと、入れ替わりに月が昇り、いつもと変わらぬ時刻に沈む。

 それと同時に、太陽が顔を出し……と繰り返す。


 この世界では、日が長くなったり、短くなったりはしないのだ。


 しかし、四季は存在している。

 太陽の活動が、弱くなったり強くなったりするらしい。


 太陽の活動は、太陽の色が変わることによって解るらしい。


 春は、ピンクに近い朱色。

 夏は、黄金のように輝く黄色。

 秋は、色づく紅葉のようなオレンジ。

 冬は、青みがかった白。


 今の時期は、黄色。

 もうすぐ、オレンジの時期になると言っていた。

 ちなみに、一年は三百六十日。

 春夏秋冬、各、九十日。

 解り易くて良い。


 しかし、それと合わせて考えれば、いまは真夜中、正子だ。

 遅すぎやしないか?

 泊まりなのか?


 楽しいお喋りが続いて、俺のように、ぺらぺらと余計な事を言わないかな……。

 でも、俺の代理で行ってくれたのだし、楽しんでくれていれば、良しとするか。




□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




 翌日の朝、やはりまだ帰って来ない。


 まあ、午前中には帰ってくるだろう。

 どんなに遅くなっても、昼過ぎかな?

 俺は、そう思って取り敢えずは待つことにした。


 しかし、午前中に帰ってくることは無かった。


 ならば午後か?

 だんだんと心配になってくる。


 何かあったのか?

 体調でも壊したのか?

 魔物に襲撃されたのだろうか?


 迎えに行ったほうが良いのだろうか?


 しかし訪問を歓迎され、楽しんでいるだけならばどうする。

 そこへ体調を崩して欠席したはずの俺が、のこのこ迎えにやってくる。


 相手が何も言わなくても、いい気はしないだろう。


 どうするか?

 何かあれば、翼人のほうから連絡があると思うが。

 なんとも不安になってくる。


 太陽の傾き具合から見れば、もう昼の三時だ。

 さすがに遅い。

 しかし今更、迎えに行くのか?

 いままさに、あちらを出立する直前だったらどうする?

 せっかくこの時間まで待ったのに?


 あと一時間だけ待とう。


 その間に、俺は眷属たちを謁見の間に集めて検討する事とした。


「俺の想定よりも、ロンド、エルの帰還が遅れている。原因について、何か思いつく者がいたら発言を許す。述べよ」


 誰からも、発言が無い。

 それはそうだ、情報が少なすぎる。


 俺が落ちつかない気持ちを察したのか、眷属たちはますます押し黙る。

 ロンドに、「帰って来なくても構わない」と言っていたシルバは、罰が悪そうにしている。


 生きているのは解っている。

 どの眷属とも最低限の繋がりは感じるから、生きている事はわかる。

 これだけは安心できる。


 もしや、ロンドとエルに何か悪意が迫っているのか?

 何かに巻き込まれた?


 いや、そんなはずは無い。

 相手は天使だ。そんな事、起こるはずも無い。

 もう帰ってくるだろう。




□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




 ……、帰って来ない。


 どうなっているのだ?

 もう直ぐ、夕方だ。


 ……本当に、何かあったのか?


 その時、ボーンが口を開いた。


「至神たる天帝様。発言を、宜しいでしょうか」


 何だ? 心当たりでもあるのか?


「許す」


 俺は、間髪いれずに、そう答える。


「ロンド、エルの帰還が遅れております事に、理由が思い当たるわけではないのですが」


 では何だ?

 ガッカリした気持ちと、焦燥感が大きくなる。


「一度、天帝様のお力で、ダンジョンコアから、ルル島の様子を見てみるのは、如何でしょうか」


 そうだ!


 ダンジョンコアからルル島を見れば良いじゃないか。

 俺は馬鹿だ。


「なるほど。良き考えである」


 俺が褒めると、ボーンが深々と頭を下げる。

 ダンジョンコアへ急ぎたいのは山々だが、どんな時でも、こういった褒めたりする事は大切だ。

 疎かにはできない。


 ボーンとのやり取りが一通り終わると、俺は眷属たちを連れダンジョンコアルームに向かった。

 当然、ダンジョン内の移動だから、限定転移魔法での移動である。


 もっとも、俺の場合は使える魔力量が少ないから、普段のダンジョン内の移動はレオに乗るか、眷属の限定転移魔法に相乗りするかだが。


 今回は、レオの限定転移魔法に相乗りした。

 レオは魔法も得意なのか、魔力量も多く眷属中で最大だ。

 俺が相乗りして限定転移魔法を行使しても、何の負担にもならない。


 まあ限定転移魔法は、基本的にこのダンジョン領域内限定であるから、その程度であればどの眷属も、俺を相乗りさせるくらい簡単に出来ると思うけど。

 相当遠い場所からの帰還なら、話は別かもしれないが……。


 実際シルバは、「今回は自分の限定転移魔法で、ア、ア、アリス様をダンジョンコアルームにお送りしたい」と、主張していた。


 しかしそんな事で、どうこう言っている暇も無いので、「お前の乗り心地は、時間のある時、ゆっくり堪能したい」と、傷つけないように断った。


 シルバは下を向いて赤くなっていたが、怒らせたか?

 ただの限定転移魔法の相乗りでも、やはり女性の誘いを断るのは駄目か?


 しかし、いまはそんな事をフォローしている時間が無い。


「すまんな」


 それでも、せめて一言とシルバに声をかけたら、


「あ、あの!

 私、あの……。

 い、いつでも待っておりますから……」


 大げさな奴め。ただの限定転移魔法だよ?

 皆が、使える?

 俺も本当は使えるのだよ?

 ただ魔力をセーブしてるだけなのだよ?


 しかし、そんな事を考えている暇は無い俺は、すぐさまダンジョンコアにルル島を映し出した。


 俺の天空島に比べれば、ルル島は小さい。

 半径5キロメートルくらいの島だ。

 まず、大きく島の全景が映るようにして、人のいそうな場所に絞っていく。


 町が見える。

 翼人だから、樹上生活かと思ったが、地上生活のようだ。

 資料として描かれる、江戸時代などの寂れた漁村よりはましな、石と茅葺を組み合わせた家々が並ぶ。

 天使にしては、イメージと違う家に住んでいるのだなと、どうでも良い考えが浮かぶ。


 それよりも、いまはロンドとエルだ。

 

 家の中の様子も、窓の隙間から大体見て取れる。


 人口、数千人くらいはいるだろうか?

 多いのか少ないのかは、よく解らない。


 しかし、……。


 いない。

 ロンドもエルもどちらも見当たらない。

 町の中を満遍なく映しても、ロンドとエルはいない。

 町で一番大きな家にもいないようだ。


 それどころか歓迎会のような様子も無い。

 島民は普段の生活を続けているように見える。


 子供は広場で遊び。

 大人は木を切ったり、魚を取ったり、食事の用意をしたり。


 その後も、俺はルル島を映し続けた。




 しかし、見つからない。

 どこを探しても見つからない。

 町には見る場所が無くなって、島全体、川や岩、海岸線、満遍なく見たがいない。


「天帝様、それ以上は……」


 俺の身体を心配したボーンが止めようとするが、俺は止めない。

 ロンドやエルが心配で、仕方ないからだ。


 だって、もう日が沈んで夜なのだ。


 俺は魔力の許す限り、力を振り絞ってダンジョンコアに映像を映し続けた。

 魔力が枯渇して、気持ち悪くなっても。

 頭が、シェイクされ、嘔吐しても。

 身体がガクガクと震えだしても。


 ……気を失うまで、俺は止めなかった。……止められなかった。


 考えている事は唯一つだけ。

 ロンド、エル、どこに……。



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