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第24話

 ダンジョンの領域内は、限定転移魔法で、どこにでも行ける。

 俺の天空島は、領域が半径200キロメートルあるから、当然、直下100キロメートルのところにある、ルル島にも、限定転移魔法で行ける。


 故に、慌ただしく準備はしたが、ロンドとエルの出発は一瞬だった。


 話して良い内容の指示や土産などの準備が整うと、俺は眷属たちを連れてダンジョンコアルームに行き、下界のルル島をダンジョンコアに映し出す。


 場所は待ち合わせに指定されたルル島の大岩。

 高さ200メートルに達する一枚岩。

 ダンジョンコア越しでも迫力がある。


 そこでロンドとエルは、限定転移魔法で転移するイメージを持ち、魔力をイメージに送り込む。

 するとロンドとエルの周りに青い光が煌き、ロンドとエルが一瞬で消えた。


 ダンジョンコアに映ったのは、ルル島に着いてキョロキョロするロンドと、相変わらずボーっと宙を見つめているエル。

 ……、大丈夫なのか?

 やっぱり俺が行ったほうが、良かったのか?

 しかし、体調が、……万一あちらに行って倒れたら大変だ。


 おおっ!


 翼人たちが三十人ほど飛んでくる。


「完全武装しているな? 何故だ?」


 俺は訝しげに呟く。するとシルバが、


「客人であるロンドとエルの警備の為でしょうか?」


 と、不思議そうに答えた。

 まあ、こちらをダンジョンタマスー、即ち貴人として見ているならば当然か。


 やはりこちらも警護名目で、ビアードと、角を隠した鬼丸をつけてやっても良かったかも知れない。

 警護などつけて、疑われているのかと翼人に警戒され、感情的なしこりが出来たり、面倒ごとになっても嫌だと思ったが、考えすぎだっただろうか。


 そう考えれば、フルフェイスの全身甲冑で、ボーンとスピードも行けたな。


 まあ今回は歓迎される側だ。

 特に問題ないだろう。


 まだ良く解らないことの多い世界。

 なるべく敵は作りたくないし、翼人とは友好関係を築きたい事は、ロンドとエルにも伝えてある。

 揉めない様に、なるべく相手の意向を無視せず、何事も穏便に済ませと指示している。

 あちらも、気を使ってくれているようで良かった。


 これで俺がいなくても、収拾不可能なほどおかしな事は起きないだろう。

 朝から少し動きすぎた。

 休もう。




□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




 自室に引いて、疲れが倍以上になって押し寄せてくる。

 痺れや麻痺も、大きくなって来た。


 この疲れは、恐らく魂と身体のシンクロ以外の原因もあるだろう。


 慣れていないからだ。

 眷属たちへ、絶対的上位者として振舞う事に。


 それはそうだ、しがない勤め人の身分から、急に城のトップだ。

 しかも、俺の指示に従う眷属は、魂の系譜たる者達。


 あの、まるで神を崇敬する様な目で見てくる眷属たち。

 イメージや期待を裏切れないプレッシャーが、俺の肩に伸し掛かる。


 だからと言って、態度を変えてフランクに接するのか?


 友達の様に? 仲間の様に? 恋人の様に?


 答えは、否やだ。




 俺には、苦い経験がある。


 俺が日本にいた頃、中学生になったばかりの頃の話だ。


 中学に上がると、それまでは近所のお兄ちゃん、お姉ちゃんを、○○君。△△ちゃんと呼んでいたのに、○○先輩、△△先輩などと急に先輩呼びを強制される。

 更に、上下関係を徹底される。

 学年など、場合によっては1日しか違いが無い奴もいるのに。なぜ?

 俺は当時、すごく違和感を持っていた。


 だから後輩には、そんな上下関係を押し付けないように、かなり優しく友達の様に接していた。


 ……結果、後輩たちからは舐めた扱いを受ける事となった。

 会社の後輩に優しく接した時も、弱い奴だと舐められた。

 まともな上下関係は崩壊し、後輩は指示もろくに聞かなくなった。


 ひどい奴は俺に責任を押し付けて、凄んで来た奴もいた。


 優しさは、時として弱さと捉えられる。


 だから、上下関係をハッキリさせる事は大切だ。

 そこを明確にしておけば、優しさは弱さとは取られない。

 度量の大きい先輩、優しい先輩となるのだ。


 気疲れはするが、眷属にこの態度を維持する事は重要な事だ。


 眷属自身が先ず平伏して、上位者への態度を示した。

 これを気詰まりだからと曖昧にして、友達になってはいけない事は良く解っている。


 しかも圧倒的上位、下位の関係性が魂に刻まれている事は、不思議と常に感じている。

 であるのにも拘らず、この事実をいい加減に扱う事は彼らを混乱させ、俺への忠誠心も組織の強固さも失われる。


 上位者である事の責任から逃れてはいけないのだ。

 特に、俺の下位者である眷属たちは、おれ自身が望んで生み出したのだから。


 これは、「エルフやドワーフにしようと思って、生み出したのではない!」とか、そう言う事は問題では無い。


 俺自身が、眷属を、味方を欲したのだ。

 その結果、誕生した眷属だ。

 生み出した責任は取る! ……必要があるだろうなあ……。


 だからこそ、この態度を維持する。

 まだ慣れないが……。

 まあ、徐々に慣れるだろう。

 ……。

 ……だと良いな。


 取り敢えずは、命令を厳守させる。

 上下の区別をはっきりさせる。

 しかし、親愛の情を持ち、眷族であっても尊厳を無視しないように、敬意をはらいながら、上位者として、毅然と、超然と、そして悠然と対応、対処する。


 ……責任も取る。


 ……そんなところかな。

 簡単に出来れば、苦労は無い訳だが……。




□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




 ほんの少し横になるつもりで休んでいたら、寝てしまっていたようだ。

 俺の部屋にダンジョン改変で作られた巨大な窓には、地球の優に10倍はある満月が見えている。


 ロンドとエルが帰ってきたら、呼びに来るようにシルバに言って置いたのだが……もしやシルバは、仕事が出来ない子なのか?


 もうとっくに帰って来ているはずだ。

 歓迎会などが終了したら、直ぐに帰る様に指示している。


 俺は限定転移魔法を使い直ぐにシルバの階層へ、……向かいたかったが魔力節約の為、レオを呼ぶ。


 レオは、最初の頃から意識が通じていた為か、簡単な命令は強く念じれば遠くにいても伝わる。

 どれくらい遠くまで可能かは解らないが、ダンジョンの領域内なら可能だと思う。

 ともあれ、レオを呼ぶと、「があぁぁぁ」と言いながら、寝室の隣の部屋から顔を出した。


「お前、俺の階層にいたのか?」


 俺がそう問うと、何か問題でも? と言った態で、「がうっ?」と鳴いた。


「まあいい。

 お前、ロンドとエルが帰って来ているか、解る……わけないか」


「がうっ」


 解っているのか、いないのか、元気に肯定するレオ。


「取り敢えず、シルバのところに行くぞ」


 俺がそう言うと、レオも心得たもので、俺の前で背中をどうぞと、屈んで来る。

 俺は、レオの小さな金色の翼を掴み、一気に背に乗る。

 レオは、痛かったのか、「にゃいっ」と聞いた事の無い声を上げる。


「悪いな。強く持ちすぎたようだ」


 俺がそう言うと、ご機嫌で、「ふふん!」と鼻を鳴らす。

 ちゃんと通じているのか? 何故ご機嫌になる?

 俺の眷属は、良く解らない反応を示す奴が多いな。


 そんな事を考えながら、「行け」とレオに命じると、あっという間にシルバの階層へ着く。

 眷属たちの階層は、利便性を考えて通路の階層より小さくしているとは言え、ほんの一瞬だ。

 凄まじい速さだ。


「ご苦労」


 レオの頭を撫でながら俺が言うと、また、ご機嫌で、「ふふん!」と鼻を鳴らす。

 今度の反応は、正しい反応だ。

 良かった。眷属たちとコミュニケーションが取れなくなる様で、たまに焦る。


 部下の心情を慮る。

 これが出来る上司への第一歩だ。


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