第23話
ルル島に招待を受けた日の朝。
いつもの麻痺と痺れが出てしまった。
三日間、無理してダンジョン改変を行ったのが悪かったのだろうか。
取り敢えず、最上層部分の10階分だけやったのだが……。
体力が無いのか? 魔力が無いのか? 魂のシンクロ中にあんな事が起こる俺に、運が無いのか? また、体調が悪い……。
最後は、息切れするような感じで、ダンジョン改変をしていたから、無理のし過ぎなのだろう。
ちなみに、
200階層、ダンジョンコア・宝物の間・モンスター卵樹の間……その他。
199階層、ダンジョンマスター、ルイ・アリス
198階層、眷属、金獅子のレオ
197階層、眷属、翼人のエル
196階層、眷属、エルフのロンド
195階層、眷属、ダブルエルフのシルバ
194階層、眷属、鬼人の鬼丸
193階層、眷属、ドワーフのビアード
192階層、眷属、リッチのボーン
191階層、眷属、人獣のスピード
190階層から2階層、まだ何も、手付かず。
幅3キロメートル、高さ700メートル、長さ30キロメートルの通路と階段のみ。
1階層、玄関大ホール、回廊、会議室、謁見の間、謁見の間から続く奥の間。
確かこんな感じだったかな?
最後のほうは疲れすぎて、かなり適当だった。
眷属一体につき、階層を一つずつ占有させても、まだまだ、この城はスペースがある。
幾つか希望を聞いて、部屋を作ったり仕切りをしたが、細かい事は魔力が足りなくて出来なかった。
調度品なんかは、宝物の間からの持ち出しで間に合わせた。
その後は、皆、好きに手を入れてくれるように言っておいたが。
ビアードは、炉を入れるとか言っていたな。
さすがは、ドワーフ。一級品の剣など生み出してくれたら、それこそ、面目躍如だ。
ボーンは、実験室とか何とか。
人体実験とかは、止めてくれよ? マジだぞ?
スピードは、馬鹿でかい空間一つだけ。修練場に使うとか。
どこで寝るのだ? 修練場のど真ん中か?
そこに布団を引くのかな?
あいつは、性格が、忍者や侍と言った感じだな。
考えて見れば、俺が望んだように生まれて来たのか。
他の眷属たちも、当然、大切さは変わらない眷属だが、偉いぞスピード。
鬼丸は、ビアードやレオと仲がいい。
レオが俺にくっついて来て離れないから、198階層、197階層、196階層を、レオ、鬼丸、ビアードにしたかったみたいだ。
しかし、女性陣から、レオ以外、自分たちよりも上階は認めないと言われ、泣く泣く、194階層にしていた。
「レオだって、本当は、遠慮して頂きたいのに! 御方様から離れないから……」
「確かに!」
と、女性の誰かが言っていた。
別に、ロンドとシルバだったと言う確証は無い。……無いような、あるような……。
まあ、良い。
ロンドとシルバは上階が好きらしいが、エルに俺が教えたジャンケンで負けて、エルより下の階層になっていた。
鬼丸に意地悪したから、罰が当たったのか?
眷属同士、仲良くして欲しいのに……。
2階層から190階層は、初期状態の、通路のままである。
魔力が足りず、まだ手付かずの状態。
馬鹿でかい通路だ。
幅3キロメートル、高さ700メートル、長さ30キロメートル。
しかも、総真珠石の通路と総真珠石の階段。
ただ、この真珠石、ボーンに鑑定させたところ、正式名称は、ルパ石という、超希少な石らしい。
2階層入口から190階層出口まで、歩いて来るなら、5,870キロメートルの通路を歩く事になる。
細かく言えば、更に、プラス、階段もある。
万一、討伐隊が来たら、是非頑張って歩いてもらおう。
そして、190階層の終わりは、封鎖しよう。
往復で、11,740キロメートル。
確か、北海道稚内から沖縄那覇までが、だいたい2500キロメートルだから、……。
……大変そうだな。
大変すぎて、二度と来ないと思ってくれれば良いが。
そもそも俺は、正当防衛的反撃はするつもりではいるけど、自分から人と殺し合いをしたいわけではない。
できれば、ゆっくりと、穏やかに暮らしたい派、なのである。
だから、穏便に済むなら、それで良いのである。
しかし、鉱山とかも設置できるらしいが、後々で良いかな。
恐らく魔力も足りないだろうし。
それよりも、柱を付け足したり、天井画などの装飾を施して、芸術的な超巨大通路にするのも良いかもしれない。
イメージは、ヴェルサイユ宮殿、鏡の間の超巨大バージョン。
あれよりは、真珠石の色合いを生かして、白を多めに、アリス宮殿、真珠の間とか、夢が広がる。
でも、翼人の様に友好的な種族や国家が来た場合は、どうしよう?
幾ら芸術的でも、まさか、5,870キロメートル歩いて、面会に来いとは言えない。
来たところで、その先は、封鎖されているわけだし。
1階層を、受付にするべきだろうか?
敵意があるか、嘘をついていないかは、眷属やマジックアイテムで確かめればいい。
人間、亜人たちとの付き合いかたも、この際、考えて行かなくてはならない。
今日、翼人たちと会った際に、何かヒントがあればと思ったけど、ここまで体調が悪いとルル島の訪問は中止かな。
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謁見の間で、跪いて俺を向えた眷属たちに、ルル島訪問中止を話すとシルバが喜んだ。
「それは、英断でございます。さすがは、ア、ア、ア、アリス様」
また、俺の名前のところで、顔が赤くなる。
この子は、いったい何なんだ?
高飛車・仕事できる系のお姉さんには、とても見えない。
いや、外見は、そう見えるのだけれども……。
もしや、情緒不安定系?
「しかしあちらも何かしら準備しているであろう。如何すべきか。何か考えのある者は述べよ」
俺が問うと、ボーンが、「よろしいでしょうか?」と許可を求める。
「話せ」
「はい、代理の者を立てては如何でしょうか?」
すると、シルバが口を挟む
「無視すればよろしいのでは?
私は、あの者共を信用できません」
「いまは、あなたの発言すべき順番ではありません」
ロンドに冷たく言い放たれて、シルバが睨みつける。
更に、ロンドも睨み返す。
……止めて下さいよ。……マジで。
部下同士をわざと対立させて、上手く操る上司がいると聞いた事はあるが、俺はそういうタイプではないのだ。
「何にしても、訪問は約束した事。無視も出来まい」
「あのような下賎な者共に、……なんとお優しい、ア、ア、アリス様」
シルバがそう言うと、ビアードやスピードも、「確かに」と頷く。
友好関係を築こうとしているのに、ビアード、スピード、お前らもか……。
下賎な者の意味解っての発言かな? 相手は、天使だよ? 本当は、翼人だけど。
「取り敢えず、ボーンの提案を採用する。他に意見のある者はいるか?」
すると、皆、頭を下げ、
「御心のままに」
と声を揃える。
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代理の派遣を決定した後、誰を代理として行かせるかと言う話になった。
「私が参ります」
ロンドが手を上げる。
それに対して、小さな声でシルバが、「ゴマすりが」と突っかかる。
シルバを一睨みするロンド。
いつも優しい表情のロンドだが、シルバに対する時だけは、目が氷点下まで下がったように冷たい。
この二人は、とことん相性が悪いようだ。
「さっさと行け。そして、帰って来なくても構わないのだけどな」
シルバが、さらに挑発する。
いや、帰って来てくれないと困るのですがね。
「何ですって!」
ロンドの顔が、サッと青くなる。
怒りすぎて、血の気が引いたのかな?
もう止めて……。
ちなみに他の眷属たち、鬼丸は、「あの、あの、おではー、おで、なんだな」と訳の解らない事を言いながら、オロオロしている。
エルはボーっと、宙を見ているし、レオにいたっては眠っている。
……大物だな。
……しかし、レオ。
眷属は、本当は向こう側で控えなくては、いけないのだぞ。
俺の横に来て、寝ては駄目なのだよ?
皆で、この間決めただろ?
……まあいいか。
レオ、ペット枠決定。
スピードと、ビアードは、ひたすら下を向いて黙っている。
女性がキレたり、喧嘩している時は、黙って嵐が過ぎ去るのをひたすら待つタイプか。
……俺もだ。気持ちは良く解る。
そして、ボーンは、
「御前である」
と、あの低くて重みのある声を出す。
すると、ロンド、シルバの両名が、ハッと我に返り、
「も、申し訳ございません」
と恥じ入った様に頭を下げた。
「良い」
何が良いのか、自分でもよく解らないが、取り敢えずそう言っておく。
だって、この場合、何が正解?
「今後は、仲良くするように」とか、上から目線で言う?
無理無理、仲良く出来るならば、最初から当人どうし、そうしているだろう。
曖昧で、無難な決着。
俺、異世界でも日本人気質!
しかし、そういつまでも、揉めてもいられない。
出発の時間もある。
移動は、限定転移魔法で一発だけど、……皆、俺より魔力余ってるし、余裕だろう。
それでも、俺が行く訳ではなくなったから、前もって、代理の眷属との打ち合わせとか、土産の準備とか色々ある。
それに、そもそも、候補は絞られている。
前回の会談のとき同様、人型の眷属が良いだろう。
そして、シルバは行きたくないだろうから、除外。
残るは、ロンド、エル、ビアード。
鬼丸も、人型と言えばそうだろうけど、……頭に、何か巻いて角を隠すとか?
しかし、鬼丸に交渉とか、友好関係を発展させる事を前提とした行動とか出来るのか?
前回、顔を合わせたロンド、エルが無難かな?
特にエルは、相手にとって、何か特別な雰囲気だった。
最初に会った時も、エルには、えらく丁寧な対応だったし。
努々、粗雑な扱いを受けることは無いだろう。




