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第21話

男性翼人、リオ・ダ・レナルの視点


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 僕は、カルーバに襲われ腰の抜けた男と話し、取り敢えず、天空島のダンジョン管理権限保有者と三日後の会談の約束を取り付けた。

 そしてルル島に戻ると、天翼部隊にカボスの事は、今後一切、口にしない様に命令した。


「あの天空島には、やはりダンジョン管理権限保有者が居るらしい。

 もし、今後あの天空島との取引が行われるのであれば、天空島の住民を襲ったのが、こちらのテイムしている魔物だったでは、あまりに聞こえが悪すぎる。取引条件に、支障が出る」


 そう言って聞かせた。

 リリーは、不服そうだったが、他の者は概ね納得したようだ。

 この女は、いつもこうだ!

 ちょっとレベルが上だからと、僕を舐めて見下しているに違いない!


 しかし誰かに今後、腰抜け男を襲っていたカルーバについて聞かれたら、天空島に迷い込んだ魔物と言うことにしよう。

 これで、テイマーとして、魔物の管理責任は問われないだろう。

 それどころか、とどめを刺して腰抜け男を助けたのは、リリーだ。

 上手くすれば、天空島側に恩が売れるだろう。

 手柄は当然、隊長である僕のものだ。




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 夜になると、ルル島とその周辺諸島の主だったものが集まり、報告会が行われた。

 天翼部隊隊長の僕と、副隊長のリリーが出席する事になった。


 僕は、天空島での腰抜け男との会話と客観的事実から、ダンジョン管理権限保有者が確かに居るだろうと説明した。

 すると、集まった中の、一人の男が、


「客観的事実とは何だ? そもそも、その腰抜け男の話は信じられるのか?」


 説明の途中で、口を挟んで来る。


 それをいま説明しているのだよ。馬鹿め!


「腰抜け男の方は、恐らくとしかいえません。しかし、命を助けられたあの状況で、嘘をつくとも思えません」


 口を挟んだ男が、フンと鼻を鳴らす。

 知っているのだぞ! お前がリリーに惚れている事は。

 残念でしたー! リリーは、俺が、いただいてやるよ!


「客観的事実としては、ダンジョン管理権限保有者のいる天空島ダンジョンは、一階入ってすぐにダンジョンコアルームがある事が普通です。

 利便性を考えて、ダンジョンマスター奴隷化の際、特殊な魔法を組み込み、ダンジョンコアルームだけは一階に移すからです。

 よって、あのダンジョンは管理権限保有者がいると考えられます」


 皆が、感心したように頷いている。

 男が悔しげに下を向く。

 もっと惨めにしてやろう。

 リリーとの結婚式には最前列の席を用意してやるよ!


「更にもう一点、ダンジョン管理権限保有者がいる天空島は、基本的に、モンスターがいません。それは、天空島を利用する際の安全性を考慮して、狩り尽くしているからです。

 魔物が迷い込んでくる事はあるのでしょうけど、その場合も、警備担当の戦闘員が、直ぐに狩り尽くします。

 実際、あの天空島も、腰抜け男を襲っていた魔物以外、魔物の陰もありませんでした」


 腰抜け男を襲っていた魔物は僕がテイムしたカボス。

 しかし、そんな事は、ここにいる連中にも言う必要は無い。


 たまたま運悪く迷い込んできた魔物に、襲われていた天空島の男を、天翼部隊は助けた。

 それだけ知っていればいいのだ。


 まあ、何にしろ、あの天空島は管理されている。

 そもそも、安全だと思っていたから、腰の抜けた男をそのままにして去ったのだ。

 しかし、あの時も思ったが、僕たちが入島した際、警備が来なかったのは何故だろう?

 あの天空島で何か問題でも起こっているのだろうか?

 そういった雰囲気は感じられなかったが。

 まあそれも、三日後にあの天空島に行けば解るかもしれない。




 その後、話は、夜中まで行われた。


 そして、あれだけ大きいダンジョンの管理権限保有者の人物像に話が移る。

 あまりに巨大な天空島だ、管理権限保有者はどこか大国の国王? 皇帝か? 世界を跨ぐ大商人か? 伝説の大賢者ラ・ムーか?

 ともかくも、軽く扱っていい存在ではないはずだとの結論に至った。

 話し合いの結果、先ずは、穏便に、友好的に交渉しようという事になった。


 そして、一部の反対を押し切って、僕が天空島と交渉する全権代表者の権限を手に入れた。

 全てが思い通りに動いている。


 後は、なんとかダンジョンマスターに会って、テイムを成功させたいものである……。




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 約束の日、城まで付くと、振るい付きたくなるような美人エルフが、僕たちを向えた。

 ……この女エルフ、どうにか僕の物に出来ないだろうか?

 ダンジョンマスターさえテイムできたら、あるいは……。

 そんな愉快な考えが、頭の中を駆け巡る。

 もう頭の中では既にあの女エルフは僕のものだ。

 すぐに現実にしてやろう! ケヒヒッ。


 その後、大きな部屋の一室に通され、僕たちは、その部屋に圧倒されてしまう。

 恐らく、全ての調度品が一級品なのだろう。

 その辺り、僕は素人だが、素人なりにも目を奪われる。

 誰かは知らぬが、さすが、この天空島を所有するだけはある。

 緊張感が、高まっていく。

 あまりの大物が来た場合、ダンジョンマスターのテイムは諦めるべきだろうか?


 しばらくすると、あの腰抜け男が入って来た。

 どうでもいい相手なので適当に挨拶していると、その後から入ってきた同族である翼人を見て、我々は皆、直感的にあの翼人がダンジョン管理権限保有者だと思った。




 ルル島にはたった一枚、ある人物の肖像が存在する。

 伝説に残る、我々の始祖様の姿絵。

 その肖像画は、魔法画だ。

 一分の狂いも無く、当時の始祖様を写し取っている。


 そして、腰抜け男の後に続き入って来た翼人は、まるで、その始祖様をそのまま連れて来たかの様に、そっくりな姿をしていた。

 ルル島とその周辺諸島の翼人なら、誰もが知る伝説、『天を駆る導きの翼』。


 天空島と共に現れ、古き歴史の時代と同様に、翼人を天空島に導く話。


 伝説に出て来る『天を駆る導きの翼』は、いくつか描写はあるが、主流となっているのは、始祖様の姿を借りて現れる話。

 他の姿の者もいるが、身内贔屓で、当然人気があるのは始祖様の姿を持つ導く者。


 それが天空島と共に現れたのだ。

 当然、ついに『天を駆る導きの翼』が現れたのだ。

 伝説は本当だったのだと、翼人なら誰もが思って当然だ。


 しかし、それは、直ぐに勘違いだと解る。


 彼女は、天空島のダンジョン管理権限保有者の、ただの眷属らしい。

 部下の事を、この天空島では、眷属と言うのかな?

 良く解らないが、ともかく眷属であって、ダンジョンの所有も管理もしていないただの翼人。

 『天を駆る導きの翼』でなどあろうはずも無い、紛らわしいだけの女だ。


 ……それにしても、始祖と同じ姿形の同族。

 僕の妻に出来れば、発言力は、圧倒的に高まるだろう。

 欲しいな。あの女も。

 さらに、始祖を僕の自由にする。

 考えただけで、興奮してくる。


 あと、銀髪の女もいい。

 あいつもまた、震い付きたくなるような身体をしている。

 あの生意気そうな顔を、許しを請うように、無茶苦茶にしてやるんだ。


 この天空島を手に入れた暁には、全てを手に入れてやるぞ、ケヒヒッ。


 でも、あの腰抜け男が、ダンジョン管理権限保有者だったのは、少々驚いた。

 どこかの王子? には見えないな。

 世界的な大商会の息子とかかな?

 不幸な事故に遭って死んでも、大騒ぎにならない相手だと良いが。


 取り敢えず、長老たちに言われた、天空島の移動の依頼、天空島がここに来た目的、そして、友好関係を結ぶ意思の確認を行った。

 その後、雲海の構造についてちょっと話した。

 子供でも解る雲海の話だ。

 そんな雑談をして何になる。時間の無駄だ!


 長老たちから言われた最後の話し、珍しい物品があるのなら、飛空石と交換できると言うと、飛空石を知らないと言う。


 この時は、正直驚いた。

 僕たちが島出身の田舎物だと、侮っているのだろうか?

 天空島を管理権限保有者として所持しておきながら、天空に関する船、飛空船を知らぬわけではあるまい。

 であれば、その飛行に必要なエネルギー源、飛空石を知らぬわけが無い。


 しかし、その理由は後から直ぐにわかった。


 全てのどうでも良い問題を終えた後、僕はやっと本題を切り出した。


「ダンジョンマスターにも会いたいのだが。今後取引するのであれば、万一を考えて、危険性を知りたいので」


 大口の取引では、ダンジョンマスターを見せる事もあると言う。

 万一、奴隷化が甘いと、奴隷化が解けて、大変な災害を引き起こしかねないからだ。

 昔、とある辺境伯の城の上空で、奴隷化が解けて、モンスターが大挙して襲って来ると言う事件が遭ったらしい。

 そのため、鑑定魔法で奴隷化の具合を確かめる事があると言う。

 当然、僕は鑑定魔法などという希少な魔法は使えないが、そんな事相手は知らない。

 だから、この提案は、不自然ではないはずだ。


 すると腰抜け男のアリスが、


「ああ、心配は無い。ダンジョンマスターは、俺だ」


 と、笑顔で答えてくる。


「え? アリス殿が? ダンジョンマスター?」


 一瞬何の事かと、僕は馬鹿みたいに問い返してしまった。でも僕は馬鹿ではない!


 アリスがにっこり笑って、頷き返してくる。更に、「気にしないで楽にしてくれて良い」と付け加える。


 僕は、唖然として声が出ない。

 ダンジョンマスターがアリス? ダンジョン管理権限保有者では無くて?

 意味不明だが、アリスはニコニコしながら僕のほうを見ている。

 ……。


「冗談では……無さそうだが……」


 冗談ではなさそうだ。確かに、冗談では無い顔をしている。

 しかし、頭は大丈夫か? 自分がダンジョンマスターだと言う妄想を信じているのか?


 しかし、ここで、信じられない言葉を聞いた。


「実はまだダンジョンマスターとして生まれたばかりでね。この世界については、多くを知らない。だから、信用できる人とはなるべくその縁を大切にしたい。さらに……」


 アリスは、何やら話し続けるが、もはやそんな事は頭には入ってこない。

 生まれたばかりのダンジョンマスターだと!

 だから、先ほどから、話が微妙にかみ合わなかったのか!

 飛空石も雲海も、その他にも色々、子供でも知っているような質問ばかりして来て、何かがおかしいと思っていたら……。


 だからか? 生まれたばかりだから、モンスターも生み出していないから、この天空島には、ほとんど何もいないのか?


 生まれたばかりのダンジョンマスター。

 そう考えれば、合点のいくことばかりだ。


 しかし、しかしだ!

 もはや大事な事はそんな事ではない。


 ダンジョンマスターが人間だと?

 これだけの規模のダンジョンで、ダンジョンマスターが暗黒のドラゴンでも、デーモンエンペラーでも、災厄の巨人でもない!

 天空魚カルーバに驚いて、腰を抜かすような人間だ!

 大ラッキーだ!


 捕まえて、奴隷にする! 奴隷にする! 絶対、奴隷にしてやるぞ!


 この天空島は、僕のものだ!


 僕は、自分の天才的頭脳をフル回転させて、計画を立てる。


 まず、いまここで直ぐに行動に移らない。

 今度は、アリスにルル島を訪問して欲しいと、依頼する。

 飛空石をみせたいとか、適当な理由もつける。

 訪問は、三日後に設定。

 これで各島から、戦える者を集めたり、奴隷化の儀式魔法の準備などする為に必要な、時間的余裕が出来る。

 そこで、生け捕りにする。

 ダンジョン攻略などせずに、ダンジョンマスターを奴隷化だ!


 僕がこれを、不自然では無いように、アリスに話すと、アリスは、何の疑いも無く、ルル島への訪問を受け入れた。


 その日が、奴隷になる日だとも知らずに。


 まあ、嘘のない説明だから、信じやすかったのだろう。……、もっとも、言ってない事のほうが多いけど。


 アリスが馬鹿で良かった!

 そして、僕が天才でもっと良かった!


 全てが思い通り! やはり、僕は全てを手に入れるべき天才だ! ケヒヒッ。



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