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第20話

 男性翼人、リオ・ダ・レナルの視点


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 長老会の決定に従い、ルル島上空に昨日現れた超巨大天空島へ、僕は天翼部隊を率いて向かっている。


 僕の水魔法で、雲海を抜けて、天海上に出た時に最初に思った事は、「この天空島はどこから現れたのだ?」と言う問いだった。


 目の前に現れた、その天空島は、僕の常識を打ち砕いて、更に、夢の世界に迷い込んだのかと思うような、荘厳で、雄大な存在感と美しさを誇っていた。

 地上からでは無く、雲海よりも上、天海上から見れば、とてもではないが、現実のものとは思えない。

 こんな島が、一夜にして現れた事実そのものが、まさに夢のようだ。


 昨日の早朝、ルル島で監視の任にあった者の話では、突如現れたと言う。

 最初、寝ぼけていたのでは? と思ってしまった。


 ダンジョンが突如現れるのは、生まれ出た時だけだ。


 しかし、これだけの規模の天空島型ダンジョンが生まれるのは、聞いたことがない。

 普通は、天空島型に限らず、ダンジョンは、小さく生まれて、だんだんと大きく成長するものだ。

 そもそも、世界に天空島は無数にあるが、こんなに大きな天空島は伝説の中でしか聞いた事が無い。

 それが生まれたばかりなど、馬鹿馬鹿しい。

 つい、鼻で笑ってしまった。


 それでもやはり、現実にこの光景を見ると、思ってしまう。

 ならば、「どこから現れたのだ?」と。


 しかし、もし本当に生まれたばかりならば、ダンジョンマスターも奴隷化されていない事になる。

 だが、それはあまりにも現実的ではない。


 天空島に、奴隷ダンジョンマスターを管理する、管理権限保有者が居ない状態で出会うなど、万に一つの確率でも、ありえない。




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 取り敢えず、雲海を抜け天空島に上陸した僕たちは、まずは天空島の中央に向かった。


 そこには、城型のダンジョンが見えるし、この天空島が管理されているものならば、誰かいるだろうと思ったからだ。

 その途中で、リリーが「ダンジョン管理権限保有者とは何?」と、寝ぼけた事を聞いてきた。


 本当に、馬鹿な女だ。

 剣の腕だけは立つが、調子に乗っている。

 隊長の僕に対する言葉遣いがなっていない。

 今回だって、まるでピクニック気分だ。

 長の娘だから丁重に扱っているが、僕の妻となり、僕が長になったら……。


 無茶苦茶にしてやるんだ……ケヒヒッ。


「天空島もダンジョンの一種だけど、他の地上にあるダンジョンと比べて、その有用性が異常なまでに高い。

 理由は、当然のことながら、空を移動できる島だからだ。

 その為、皆、天空島ダンジョンが生まれると、その天空島を確保しようと殺到する。ここまではいいかい?」


 僕は憤懣を押さえ込んで、いつものように穏やかな仮面をつけて、話す。

 リリーが、偉そうに頷く。

 くそっ! 覚えておけよ……。


「天空島のダンジョンは、国家の軍、超一級の冒険者パーティ、大商人の傭兵団のどれが攻略する場合でも、ダンジョンマスターは生け捕りにされる。

 なぜなら、殺してしまうと、天空島が墜落してしまうからだ。

 それでは、天空島を、空を動く島として利用できなくなってしまうからね。

 ただ、ダンジョンマスターは、不老だけど、不死では無いから、生け捕りは、慎重に行われる」


 リリーが、当然と言うように頷く。

 お前が聞いて来たから説明しているのに、その態度は何だ!

 取り敢えず、深呼吸して笑いかけながら、再び説明する。


「ダンジョンマスターを、生け捕りにした後は、奴隷魔法、隷属魔法、魅了魔法、儀式魔法などを多重展開し、完全に自我の無い奴隷にする。

 さっきも言ったけど、ダンジョンマスターに寿命は無いから、奴隷化に成功してしまえば、後は、永遠に天空島は手に入れた者の所有物になる。

 まあ、所有者に寿命が来れば、相続人のものになるのだけどね」


 奴隷と聞いて、リリーが眉をしかめる。

 そうやって、良い子ちゃんぶっていられるのも、いまの内だけだ。

 僕の妻にし、僕が長になったら、娼館に奴隷として売ってやるぞ!


「それで、その奴隷化されたダンジョンマスターの保有者は、大抵その天空島の保有者でもあるから、ダンジョンマスターと天空島を管理する者と言う意味で、管理権限保有者と言うのだよ」


 リリーは「なるほど、リオは物知りだな」などと上から目線で言ってくる。

 本当に生意気な女だ!

 僕は、風魔法、水魔法、テイマーの偉大な魔法使いだぞ!

 物知りなのではない! 博学多識なのだ! 馬鹿め!


 本当にいらだつ女だ。

 この天翼部隊の隊長も、リリーになるところだった。

 この僕を差し置いて。

 ただレベルと剣の腕が上と言うだけで推薦された。


 女の身体でも使ったのか?

 絶対、そうに違いない!


 だから、僕だって長老たちを買収してやったのだ。

 かなりの額を使った。

 この女を娼館に売って、取り戻してやるんだ!


「まあ、そう言う訳で、今回の僕たちの任務は、ダンジョン管理権限保有者か、その代理の者に会って、挨拶する事。

 と、出来る限りの情報収集さ」


 そう言って、話を締めくくり、僕は自分の思考の中に戻った。




 奴隷化されたダンジョンマスターは、命令されて天空島の移動をする以外は何も出来なくなるらしい。本当に何もだ。

 それ以外は出来ないように魔法が掛けられているのだ。

 なぜなら、魔法スキルと自我は、とても近い距離で繋がっている。

 色々と能力を残して、万一にも自我が刺激されて目覚め、奴隷化が解除されない為である。


 そこで僕が考えたのは、そこまで自我が無いのであれば、僕の入る隙は無いかな? と言うことだ。


 僕は、テイマーでもある。

 奴隷化されたダンジョンマスターを何とかテイムして、天空島を、僕のものに出来ないかな?

 管理権限保有者は、不幸な事故に会って貰えばいい。


 そう考えて、城の前の橋まで来た。

 城に向かっていれば、警備の者などが出て来るだろうとも思っていた。

 しかし、予想に反して、城からは誰も出てこず、どころか、人の気配すらない。

 何やらおかしいと思い、僕たちは、城の周辺から探索する事にした。


 そこで、城の美しさに目を奪われた為か、ダンジョンマスターをテイムして天空島を僕の物にする計画で、浮き足立っていた為か、連れてきた天空魚、カルーバのカボスから、目を離してしまったのが悪かった。


 城の橋付近を調査中に、気が付くとカボスが居なくなっていた。

 あわてて周辺を探すが見つからない。

 カボスを探している途中で、天翼部隊の一人が、橋の向こうの扉が開いていると報告して来た。

 直感的に、カボスは、そこに行ったのではと思い、全速力で一気に扉まで飛ぶ。


 リリーが僕を追い抜いていく。

 嫌な女だ。こんな時まで、レベルの差を見せ付けてくる。


 そこで目にしたのは、苦しみもがくカボスと、カボスに半身を飲み込まれながら、剣を突き立てる男の姿。

 何が起こっているのか解らなかった。


 しかし、カボスが苦しんでおり、もう死んでしまう事は解った。


 直後、リリーがカボスに駆け寄り、剣を振り上げ、その胴体を両断した。

 しばし、呆然としていると、男がカボスから這い出てきた。


 予測でしかないが、カボスが襲い掛かって、男が反撃したのだろう。

 カボスはカルーバにしては頭が悪く、敵以外でも襲う。

 しかも、翼人以外の人種を見た事が無い。

 さらに、初めての場所。


 暴走してしまったとしても、不思議とは思わない。


 初めての場所だと用心して、護衛に連れて来たのが、裏目に出たか。


 リリーは、仲間の魔物を斬ってしまったとでも思っているのか、呆然とカボスを見続けている。

 魔物など幾らでも替えがきくのに。愚かな女だ。


 僕は、取り敢えず、カボスが襲っていた男に声をかける。

 情けなく這い蹲っている男は、襲われた事にビックリして、腰を抜かし、声もまともに出せない状態のようだ。

 愚かな女。腰抜け男。カボスの暴走。

 まったく、馬鹿ばかりだ。


 しかし、取り敢えず、管理権限保有者が居る事は、腰抜け男の頷きで確認できた。


 良かった。

 管理権限保有者がいない、モンスターで溢れ収拾のつかない天空島では無いようだ。


 これで後は、ダンジョンマスターをテイムして、この天空島を僕の物にするだけだ。


 もはや、時間の問題だ。ケヒヒッ。



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