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僕はヒーロー  作者: 緋色の石碑
第六章 血縁という名の呪縛
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第三話 運命

「君もオリジナルのアバターを作成して、ネットワールドへリンクしよう! もう1人の君も、新たな世界の幕開けを待っている!」


――あるネトゲ


 「おばあちゃん、パパ! 大丈夫!?」


攻撃を受けてしまった2人を見て、私は思わず駆け出した。瞬間、魔王が立ちふさがる。


「あなたたちはもう終わりよ」


「くっ!」


一瞬で氷の剣を生成し斬りかかったけれど、また光のバリアで防がれた。


「無駄よ」


魔王が《力》を込めると、剣はもろくも崩れ去った。


「さよなら、おてんば娘」


石化魔法が私を襲う。その時、眼前に氷のバリアが生成され、魔法をはじいた。


「パパ――」


 パパの姿は見えない。でも――。


「もうかくれんぼは終わりよ」


 光の剣――! 虚空に振り下ろすと、パパの姿が見え、絶叫が響いた。


「ぐあああああああああ!!」


「パ――パ」


 パパが膝から崩れ落ちた。太ももから、肩から、生々しい血がしたたり落ちる。


 パパが――死ぬ?


 「なるほどね、自分の周囲に氷の膜を張り、それを自身の《力》で消すことで姿を隠していたの」


「ぐ、ぐほっ――咲夜、逃げろ」


 パパの血反吐が、目に焼き付いた。私はずっと、何もできないでいた――。



**


 「母さん……俺、行かなきゃ」


 「あの人の話を聞いていなかったの? お兄ちゃんはちゃんと、最後まで修行しなよ」



**


 お母さんが敵を引き付けた時、あの時私は知ったような口をきいたけれど、助けに行くべきだった? そうすれば、未来は変わった?



**


「銀太殿を、お頼み申す」


「わかった。すぐ戻ってきてよ」


「行って参る。銀太殿と朔殿に、よろしくお伝えくだされ」



**


 倒したはずのディアナは、生きていた。抜け目のないラギンはそれに気が付いていて、私を逃がしてくれた。私は――自分のことで精いっぱいで、何も気がつかなかったのに。



 **


 「咲夜!」


「ぎ、銀太先輩――」


「間に合ってよかった――し、死ぬなよ、咲夜――」


**


 油断した私を石化から救ってくれたのは、能力を持たない銀太先輩だった。ううん、能力なんて関係ない。銀太先輩はいつだって、私のわがままを聞いてくれた、私の大切な仲間だった。


 みんながいなきゃ、この熱い心臓は動いていない。今度は私が、みんなを守る番だ。


 「銀太君を無駄死になんかさせたら、私があなたを石にする」


私の中から声が聞こえた。


 おばあちゃんが立ち上がり、《力》を集中させた。そうだよ、まだ勝機はある。私たちが、力を合わせれば――あの時みたいに!



**


 「うん。私、結構自分に自信あるんです」


「自信家なんだね」


「美海さんのおかげ」


「……あなたたちって、不思議な人。全然意味わかんないよ」



**


 おばあちゃん、あの時の言葉、嘘じゃないよ。


 運命が、もう一度私たちを引き合わせてくれたんだ。時を越えて――。


時に、負けるなって!


 「お好きにどうぞ、もう1人の私!」


駆け出して、パパの前に立ちふさがった。《力》がみなぎっている。


 「咲夜! 逃げろと言ったはずだ!」


「お母さんのパワーを感じない……パパだって気が付いてるんでしょう? ラギンも、銀太先輩も――私のせいで石になったの。ここで逃げたら、こいつを倒した時、みんなを抱きしめられない」


「咲夜……」


 おばあちゃんはあれをする気だ。私が少しでも時間を稼ぐ!


「はあっ!」


「あの時も、《冷徹》が一番生意気だったの、私知ってるわ」


「え――?」


 私と魔王の拳が、正面からぶつかった。ビリビリと振動が伝う。


「ボディーがガラ空きだよ!」


 ハーティアの声。私にしか聞こえていないのだろうか。


「私が指示を出す! 早く勝負を決めよう!」


「私に味方していいの?」


「さぁね。私はこの身体で暴れたいだけ!」


「……この、おてんば娘!」


 魔王のみぞおちに拳を撃ち込む。魔王はお腹を押さえながらこらえ、踏みとどまった。


「ぐ……動きが変わった?」


「まだまだ!」


 手を緩めずに、ガンガン向かっていく。


 「右! 左! 上! かわして! そこ!」


ハーティアの指示で、確実に魔王と渡り合っていく。いける!


「なるほど……そういうこと」


 ハーティアの存在に感づかれた!? だとしても、このまま突き進むだけ!


「せいっ!」


 私の右脚と魔王の右脚がクロスする。振動が伝う。けど。


「はっ!」


沿った胸に、気功波を放つ。奥のおばあちゃんに目をやると、着実に生成が進んでいる。


「ぐっ。これが、あなたたちの言う仲間の力なの……?」


「はあああああああああ!」


小さな気弾を連射する。奴が上に逃げたところで、《力》を込める。


「相手が上空にいるなら、気兼ねなく撃てる!」


「真っ向勝負ってわけね……悪くないわ」


「闇の気功波よ! 気を付けて!」


 2つの気功波がぶつかる。押し切ろうと両手を使うけれど、魔王の気功波はビクともしない。


「ぐ……ぐぐぐぐぐぐぐぐぐ……」


「青二才が図に乗ってはダメよ。私はまだまだ、2割も力を出していない」


魔王の不敵な笑み。闇のオーラが奴を包んだ瞬間、均衡が破られた。


「きゃあああああああああ!!」


 直撃――私はその場に倒れこんだ。


 「寝てる暇なんてないわ。早く起きて」


ハーティアが急かす。手を伸ばすけれど、手の感覚がなかった。


「魔王様の術にかかってしまったみたい。落ち着いて、とりあえず立つのよ」


「あれこれ口うるさいなぁ」


 立ち上がって汚れてしまった衣服をはたく。目の前に広がるのは、永遠に続く闇だった。


「まっくら――何も見えない」


「幻術――かしら? 落ち着いて、魔王の位置を補足して」


「言わなくてもわかってる!」


 眼を閉じ、位置を割り出す。――見つけた。何かに向かって移動している。普通に考えれば、私かパパかおばあちゃん――誰? 誰が狙われているの?


「……わかんないな」


「だったら正面突破でしょ!」


 つぶされる前につぶす。家族がノーガードになるけれど、早く勝負をつければ問題ない!


「はあああああああああ!」


 氷剣を携え、魔王の《力》へ向かう。これで――決める!


闇が消え、魔王の背中が見えた。魔王の、背中――?


 「違う、これはパパだよ!」


誤認させられた!? 振り上げた剣はもう止まらない!


「さ、咲夜!?」


 驚きの表情とともに、パパが振り返る。お願いパパ、防いで――!


 高い金属音が響いた。剣が、止まった――。


 「こうしていると、昔を思い出すね、サキちゃん?」


目の前ではにかむように笑う女性。ああ、私ってばまだまだだなぁ。


 「準備、できたよ」


「おばあちゃん――次で決めよう!」


読んでいただきありがとうございました。次回、咲夜vs魔王、完結です! 勝つのはどっちだ!?

次回、第四話「薄命」。お楽しみに!

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