第九十七章
「もういい」
モーリガンの声が盤の外から聞こえた。大きくはなかったが、誰にでもはっきりと届いた。
彼女は右手を上げ、指先の黒い紋様が微かに光った。
苦痛——たとえ機械であっても感じることのできる苦痛——が潮のようにポレモスの意識に流れ込んだ。
攻撃でも、抑圧でもない。「彼に気づかせる」ためのものだ。
ポレモスの視界が歪み始めた。
彼は見た。
戦争に碾かれた人々を、子供を失った母親たちを、二度と帰ることのできない兵士たちを。
自分の長槍が若い戦士の胸を貫く瞬間を。その戦士の目に憎しみはなく、ただ恐怖だけが在ったことを。
自分の灰色の炎が一つの村を焼き尽くし、村民たちが火の中で逃げ惑いながらも、どこへも逃げられないのを。
これは、全部私がやったことなのか?
彼はこれまで、そんなことを考えたことがなかった。
戦争は戦争、彼は彼。彼は戦争の痛みであり、戦争こそが彼の本質だ。本質に罪悪感は不要だ。
しかし今、それらの映像が杭のように彼の意識に打ち込まれ、抜け出せなくなった。
長槍が彼の手から滑り落ち、地面に打ち付けられ、鈍い音を立てた。
私は……こんなことしたくなかった。彼は初めて自分自身に認めた。私が戦争を起こしたんじゃない。戦争が私を追い詰めたんだ。
ポレモスはうつむき、自分の盤を見た。
あの白黒の方格、あの燃え盛る灰色の炎、あの整然と動く傀儡たち——それらは本当に彼の意志なのか? それとも彼もまた、別の駒に過ぎないのか?
彼が感じていた苦痛こそ、戦争の駒でありながらそれに気づかない者の苦痛だった。
盤領域の灰色の炎が退き始め、白黒の方格が一枚また一枚と輝きを失っていく。潮が引く海のように。
空が再び現れ、陽光が硝煙を突き破って、焦げた大地を照らした。
ポレモスはもう誰に対しても攻撃を仕掛けなかった。
彼はその場に立ち、うつむいたままだった。見捨てられた彫刻のように。
私は何なのか? 彼は心の中で問う。戦争がなければ、私は何なのか?
答えはなかった。
◇◇◇
盤の外では、エルフ族の戦士たちが長く待ち構えていた。
スタシスの提案により、もう戦えなくなった人魚の兵士たちと蒸気人たち——その首領たちも含めて——は一時的に捕らえられ、アイセロン城の地下牢に閉じ込められた。
カロンは抵抗しなかった。
彼女はただ一瞬ステュクスを見て、小声で言った。「暴れるなよ」
ステュクスは首をかしげ、答えなかった。しかし彼女の触手は収まり、静かに背後に垂れ下がった。
ディスコルディアは自ら地下牢の方へ歩き出した。
「私は彼と同じ牢に入りたい」
衛兵は一瞬間ためらったが、スタシスを見た。
スタシスはうなずいた。
◇◇◇
地下牢の牢房で、ポレモスは隅に座り、両腕を体の脇に垂らし、歯車は回転を止めていた。
ディスコルディアが中に入り、彼の向かいに座った。
二人の間には、一腕の距離があった——遠すぎず近すぎず、ちょうど話ができ、相手の表情がはっきりとは見えない距離だ。
長く沈黙が続いた。
水滴の音ががらんとした牢房に響く。一度、また一度。何か古い時計のように。
「あなたはただ戦争の傀儡だっただけ」
ディスコルディアがようやく口を開いた。その声はとても軽い。
「ちょうど私が誤解の入れ物だったようにね」
ポレモスは顔を上げ、彼女を見た。
「自分に問うたことはある?」
ディスコルディアは続ける。
「世界がもう誤解を必要としなくなった時——至る所に誤解が溢れているから、私の能力はかえって役に立たなくなった。その時、私は自分に問うた。じゃあ、私は何なんだ?って」
ポレモスの歯車が微かに回転した。
「答えを見つけるのに、とても長い時間がかかった」
ディスコルディアの声は他人事を話すように平静だ。
「私は私。嘘つきで、得を貪り、審判廷に捕まるのを怖がる放浪商人。私が一番楽しかったのは、稲妻になって人々に誤解を振りまく時じゃない——商品を押して売り歩く時だ。値段を交渉して、銅貨を何枚か稼ぎ、そして次の街へ行く」
彼女は一瞬間を置いた。
「誤解がなくても、私は私だ」
ポレモスは沈黙している。
「あなたが私を愛しているのは知ってる」
ディスコルディアが突然言った。
彼の歯車が微かに震えた。
「そして私も、あなたを信じてみようと思っている」
彼女の声はさらに軽くなった。
「だから、どうか戦争を止めて。いい?」
ポレモスは彼女を見つめた。
あの歯車の嵌った目の中で、灰色の炎がついに消え去った。
「いいだろう」と彼は言った。
これは彼にとって、戦争のためではなく、初めて「いいだろう」と言った瞬間だった。
彼女のために。
——そして彼女も同じだ。彼が何かを助けてくれるからでも、彼が戦争の痛みだからでもない。ただ彼が彼女のために、自分自身になろうとしているからだ。
◇◇◇
牢房の外、陽の光が焦げた大地を照らしている。
遠くで、負傷者を運ぶ者たちがおり、残骸を片付ける者たちがいる。
戦争は終わった。
しかしポレモスは知っている。本当の戦争——彼の心の中のあの戦争——は、今始まったばかりだと。
彼は「戦争」ではない自分になることを学ばなければならない。
そしてディスコルディアは、彼に寄り添うだろう。
今度は、利用でも、取引でもない。
選択だ。




