難航
毎日更新できなくてすまない…✌
ダムナに来てからもう四日が経っている。未だにダムナを出ることは叶わず……、というにはまだまだこの街を見きれてはいないが、馬車の調達という目的が果たされていないのは相変わらずである。
「どうしたもんかねー」
「どうもこうもねーよ、モノモのおっさんを待つしか無いだろ」
ダムナの広場で腰を落ち着かせながら四人で今日の成果と、今後の目標を話し合っている。
アギアはすでに諦めてかけており、モノモが都合するのを待つつもりである。
「でもモノモさんっていつまでここにいるんだろ」
「予定より早く切り上げるらしいけど、それでもひと月はいるらしいね」
シレナの疑問に答える。ある程度長期間の旅になるだろうが、最大でも半年を見込んでいる。次はリュグレムシアに向かう予定だが、その後はまだ未定である。今後何があるかわからない上、帰りはモノモに頼らずにアーケリアまで行かねばならない。ここで無為に時間を過ごすのはあまりに勿体ない。
ここは物流が活発なので、珍しい魔術素材などが露天にも売られているが、魔術を行使する場所としては不適だという。それに魔術師との交流という部分でも今の落ち着かないダムナでは難しい。
「けどこれおいしいねー」
リィンが飲んでいるのはミラという果物に、香辛料のようなものを混ぜたものだ。酸味と辛味がある独特な味わいで、なかなかに癖になる。
香辛料の価値はわからないがアーケリアでは見ないものだ。ダムナの市民には日常的に飲むものだということだけあり、値段も手頃である。
昨日は中心地にある塔を見に行った。石で作られたそれは儀式や儀典に使われるものらしく、十メートル近い高さの頂上付近に街を見下ろせる足場がある。
それはこのダムナが生まれたばかりの頃からあるらしく、幾度戦火に呑まれようとあり続ける姿から、皆に崇拝すらされているという。
魔術的に古いと言うだけでは価値はないが、長い間あるということが霊脈の上にある証拠と考えられ、術を行使する場所として好まれる傾向にある。
あの塔が儀礼などに使われるのも、そういった意味もあるのだろう。
などと興味深いものは多くあるのだが、如何せん人との交流がし難い空気感がその邪魔をしてくる。
「思い切って近くの街まで徒歩で行くとかどうよ?」
「昨日聞いた話だと、この辺に最近盗賊が出るらしくて危ないらしいよ」
そう話してくれた商人曰く、最近の雰囲気からこの街を脱出しようとする商人もいるらしいのだが、それを狙って盗賊なども集まっているようだ。
「お前が倒してくれればいいじゃんか~」
「三人も守りながら戦うのって難しいんだよ?」
リィンとシレナは一応自衛できるが、シレナは接近されると弱く、リィンも基本的には戦いたがらないので結局自分が対応することになる。
「俺はどうせ足手まといだよー」
「あはは、拗ねないの」
旅を続けていくらか打ち解け、こうして軽口を言い合える仲になった。アギアは出会ったときに感じた通りの、心優しい部分がよく見えるようになってきた。
当人は語りたがらないが、過去の経験から人を癒やす術を探して魔術という手段に行き着いたようだ。
アーケリアではほどんど見返りも取らずに多くの人を癒やしているらしいが、本人はまだまだ至らぬと言っている。将来的にはあらゆる“病”を治したいという。
アーケリアにおいて治療というのはおおむね外科治療のことを指し、病気などには薬草などの他、最終的には神頼みや安楽死といったものの選択を迫られる。アギアがそうしたものに疑問を持ち、解決をなそうとするのは革新的なことでもある。それが魔術となると協力は難しいが、それが実を結ぶことは自分も強く願っている。
「けどそうなると次はどこに行けばいいんだか……」
「もう一度商業地区を回る?」
「それよりはモノモさんの仕事を手伝って顔を売ってもいいんじゃないかな」
リィンの提案だがそれも良案である。やはり大事なのは信用であり、遠回りでもそれを獲得するように動くのは効果的だろう。ただモノモも少々苦戦しているようで、しばらくダムナに来ていなかったのが悪影響しているのだとか。
今回はアーケリア周辺で穫れる麦を始めとした農作物を売っているようだが、情勢不安から交易ルートの確保が難しく、先日のレーム砦での一戦も尾を引いているようだ。
海からはやはり造船技術の関係で不安定なのが問題で、船を買うにしても相当な出費を強いられる。モノモも多少は蓄えがあるが、大商人と言うほどではないのでそこまでの余裕はない。それにリュグレムシアの動向によっては航路に多額の関税をかけられる恐れもありそれも懸念点である。
総じて商売については自分も門外漢であり、また簡単に提案をするほど責任を負うことも出来ない。なので出来ることと言えば物を運んだり、夜に彼の愚痴を聞いてあげる程度だ。
「むむむ……」
シレナが難しい顔をしているが、おそらく話についていくので必死なのである。辺鄙な村で過ごしてきた彼女にとって、こういう出来事はいい経験になるだろうが、まだまだ難しい課題だろう。
とは言っても自分も良い解決策を出せるわけではなく、やはり頼れる相手がモノモ以外に居ないのが最大の障害であり、現状ではどうあがいても乗り越えることが出来ないものだ。
四人揃って眉間にシワを寄せている中、ふと顔をあげると人混みの中に見覚えのある顔があり、それと不意に目が合った。
「ピーシース」
「お前……、――あなた、まだここに居たのね」
そう話す彼女は先日と違う、気品にあふれていた。
「……別人?」
「……あ?」
どうやら本人らしい。




