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白銀の戦士は世界を二度救えるか  作者: バルバロ
リュグレムシア遠征編
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反発少女

「くっそ、余計なことしやがって……」


 騒ぎになっていたのでやや移動し、落ち着いたところで改めてフィニク人の少女と話をするが、こちらが話すよりも先に悪態をついている。


「それより、仲裁に入ってくれたシレナにお礼を言っても良いんじゃないかな?」

「あん?」


 ギロリと睨みつけてくる少女。口も悪ければ態度も悪いようだ。シレナは自分の影で恐る恐る覗いている。

 フィニク人特有の赤みが強い肌に、元はタレ目がちなようだが今は角度が逆になっている。まだあどけなさの残る顔立ちで愛嬌のある、かわいらしい容姿だ。黒い髪のおさげを横から垂らしている。


「……けっ、まあお陰で無駄な金を払わないですんだから、そこには礼を言っとくよ」


 ふてぶてしい態度からは感謝の気持が伝わらないが、それを評価するのはシレナなので何も言わないでおく。そのシレナは何も言わず、彼女の様子に怯えているようだ。


「しかしお前ら、一体何を渡したんだ?」

「ああ、そのことなんだけど……」


 アーケリアから来たことを隠す目的で、モノモからリュグレムシア周辺諸国で流通している銀貨を交換してもらっていたのだが、あの商人たちの反応からするとよくないものらしい。

 彼女にそれを見せると、得心いったようにうなずいた。


「あんたら最近ここに来たのか、それもアーケリアか、それとも別の……」

「そうだね、今日ついたばかりなんだ」

「だろうな、じゃなきゃこの街で、それもあんな目立つところでこれを使うわけねえもんな」


 そう言って自分が見せた硬貨を手に取り、指で弾いて返してきた。


「これは“前の”ズニェールが作ったものさ」


 ズニェールとは要するに国王の称号である。それが作ったものが世間で嫌われている、となると現在のズニェールがその影響力を消し去ろうとしているのだろう。


「そういうこと、今のズニェールはかなり強引な手段で国を総べたからな、反乱の芽を潰したくて躍起になってるんだよ。特にあのくらいのまだ余裕のある商人連中は面倒を嫌って扱いたがらねえのさ」

「ああ、なるほど。それはありがたいことを聞いた。ありがとう」

「……ふん」


 素直に礼を述べると彼女は気恥ずかしそうに手を振った。


「名前を聞いてもいいかな? 僕はクロム、こっちは……」

「……シレナです」


 彼女がシレナのことをキッと睨むとシレナは小さくなりまた後ろに下がっていった。


「ピーシースだ。最も、もう会うこともないだろうけど」


 そう言い残すと彼女はすぐに人混みに消えていった。姿が見えなくなると、シレナがホッとしたように息を吐いた。


「……ごめんね」

「謝ること無いよ、あの娘を助けようとしたんだろ?」

「うん……」


 結果として彼女が傷つくことになったが、その善意と行動に移した勇気を尊重してあげたい。なんとか元気になってもらおうと考える。


「あの娘はその……、少し気難しい性格だったから。君の行動は間違ってないよ」

「クロムくんみたいに、昔助けてもらったようにしたかったんだけど、難しいね」


 可愛らしいことを言ってくれる。自分の行動が他者に影響を、基本的に良い影響を与えているのは嬉しい。ただし無闇に危険に飛び込むようだと彼女の身が心配である。


「大丈夫、そのために強くなるから」

「いいね、もしその気なら鍛錬に付き合ってあげるよ」

「――! いいの?」


 勢いよく食いついてくる。彼女の行動になにか一つでも見返りがあってもいいと思ったのだが、もしかしたら間違えたかもしれない。


「まあ、魔術に関してはさっぱりだから、体術や剣術しかできないけど……」

「クロムくん凄いもんね。あの綺麗な人、ロズラーサさんとの戦いも凄かったもん」


 ロズラーサとは気が合いそうだと思っているが、彼女もなかなか暇がないので顔を合わせる機会がない。こちらで機会を作ってあげるべきだろうか、ロズラーサも同年代の同性の友人がいたら嬉しいだろう。

 などと考えていると、シレナがこちらをじっと睨んでいるのに気がつく。


「……どうしたの」

「今ロズラーサさんのこと考えてたでしょ」

「心が読めるのか」

「そのくらいわかるよー。ふんだ」


 しまった。元気づけようと思ったのだが、年頃の少女は難しいものだ。確かに彼女の前で迂闊だったが、今度は落ち込むのではなく拗ねてしまった。


「ごめんごめん、でもそろそろ移動しなきゃ。馬車を探さなきゃ」

「そうだね」

「その途中に、この街の珍しい食べ物とか見ていこうよ」

「いいのかな、私達だけで」


 ここでそういう気遣いを出来るのだから彼女の精神は清いものだ。


「この街にも何日かいるだろうから、また別の日にみんなで見に行けばいいよ。今は二人で楽しんじゃおう」

「二人で、いいね!」


 そうはしゃぐ彼女に引っ張られるように、ダムナの市中へと戻っていく。

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