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白銀の戦士は世界を二度救えるか  作者: バルバロ
リュグレムシア遠征編
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「あー……」

「……」

「うぁー……」

「……」

「ふわぁ……」

「なんだよ鬱陶しいな!」


 こちらを怒鳴りつけるアギア。彼らの集まる家に自分もいるが、今は何をするでもなくただくつろいでいる。それもかれこれ二週間ほどこうしている。

 レゼラルド騎士団の一員としてアーケリアの遠征に参加、そしてその先で行われたとある砦の攻略戦が行われたが、結果から言って惨敗。砦の攻略はおろか、招集した兵の約二割にあたる人数を失った。

 その多くは自分とともに本隊の撤退を支援するための殿として戦い、その命を散らしていった。

 できる限りそれらも助けようとはしたが、多勢に無勢。自分の身とロズラーサ、それとコレッサを守るので精一杯だった。

 その甲斐あって彼らは無事に帰還できたが、今回の作戦を指揮した者や前線で戦ったオーダンにも批判が向いているようだ。そしてなにより国王への反発が強まっているとのことで、かなりアーケリアの中央はきな臭くなっている。

 そもそも今回の戦いは、どこまでが国王降ろしのための“仕掛け”だったのか。さすがに砦を奪われたのは違うとしても、作戦にかかる一連の流れの中に反国王派の妨害が行われたのは聞こえる限り事実である。


 こうした人間社会の暗部を見て、そして自分の無力さを味わったことで傷心中の身を癒やしている最中である。

 ただその光景を見ているアギアからしたら面白いものではないのだろう、研究の邪魔こそしていないが気にしている様子である。


「いい加減切り替えろよな」

「いやぁ、近頃やっと落ち着いてきたよ」

「ならもうちょっとシャキっとしろよ」

「悪い悪い……」


 そうやって頭を掻いて見せる。彼の言う通りいつまでもへこんではいられないのだが、さりとて気分が盛り上がるような出来事がないのも最近の悩みである。

 世界を見て回りたいのは山々だが、なんだかんだでアーケリアで得た繋がりや、気になることも山のようにある。今一番の悩みはシレナのことで、アーケリアまで来ることを承諾した手前、さすがにそのまま置いていくのは躊躇われる。

 最低限彼女がこの地で暮らせるような、やりたいことを――自分を追いかける以外の――ものを見つけるのが目下の課題だ。

 彼女もアギアたちと魔術の研究に励んではいるようだが、今のところそこへの熱意という点では劣るようだ。というよりは“なぜ魔術を学ぶか”という根幹部分が、ここにいる四人と異なるのだ。


 強いて言えばアギアが近いのだが、彼は研究で得た治療術をもって人々を助けたいのであって、魔術で自分の役に立ちたいと考えているシレナとはやはり違う。

 彼らの魔術には興味があるのだが、彼らも暇ではない。どういうものか尋ねたいが、弟子でもないこちらに構う余裕はなさそうだ。シレナについても、こちらから話しかければ喜んで応じてくれるが、それによって彼女の研究の邪魔になるのであればこちらとしても本意ではない。

 シレナであればそれで良いと思いそうだが、それはそれ、彼女の今後を思えば下手に構うのも酷である。

 ちなみにシレナ曰く、アーケリアは人の気配が強く動物とのコミュニケーションが難しいらしい。今は鳥としか交流出来ないが、いずれはもっと大型の、それこそ魔獣とも意思疎通が出来るようになりたいとのことだ。

 魔術的にも謎の多い魔獣と近く慣れればそれも研究が進む。そう話したのはアギアとバニスだ。特にバニスは強い関心を示し、シレナの研究の成果を期待しているようだった。

 バニスの魔術だが、以前蛇と戦ったときに行った場所、霊脈なるものがある場所が目的だったわけだが、彼はそこで魔力というものの根源を探っていた。


 「魔力」。この世界において唯一の疑問。様々な部分で自分の常識と異なるものが見られるこの世界だが、その多くはあくまで“違い”程度の差である。

 だが魔力、魔術に関しては全く違う、まるで知らない概念である。ただしおとぎ話のような何でも出来る万能のそれでも、理解も出来ない超常の現象でもない。

 そこには確かな理論と原理が有り、その再現性を思えば科学と大きな違いはない。しかしそれを行使する為に必要なもの、それが魔力であり、バニスが求める大いなる謎である。


 この世界にあっても明らかな異常、この世界を生きる者でさえも理解、把握できない概念なのだ。それも長く人と共にあるというのに未だに殆どが謎のままなのである。

 火や電気のようなエネルギーの一種とも思えるが、まずそれを“知覚”するのにすら素養が必要とされるのだから不思議なものである。

 火のように熱も、電気のように痛みも素質がなければ感じられないというのは少々理解できない。また高名な、優れた魔術師は魔力を通して大いなる智慧を得られるとも言うが、まるで魔力というもの自体が意思を持っているかのような話だ。


 バニスとこうした疑問点について尋ねると、彼は意外そうに返事をしてくれる。この世界で魔力というものに対して疑問を抱くというのが珍しいのだという。それもそうだ、火がなぜ熱いかを考えるものがいても、“火が何故あるのか”と思うものはいない。逆にそこに疑問を持ったバニスこそ奇人と言われる類なのかもしれない。


「……そういうのもありかもな」

「何の話だよ」


 魔術の勉強、これから冬を迎えるアーケリアは戦からは遠ざかると言われている。魔術というものに向き合うのも良いかもしれないと思い始めた。

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