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警告

 二日をかけて目指していた村へとたどり着くことが出来た。アーケリアから周囲に伸びる石畳の街道は行軍の速度を上げるだけでなく、自分たちのような旅のものにも大きな恩恵がある。

 ミニットの用意した馬には彼女の荷物の他に全員分の食料も積ませてもらっていた。これのお陰で足を止めるのも最低限に済んだのも、これだけ早く移動できた要因であった。

 村の中には入らず、住民に説明して近くに野営地を設営させてもらった。予定では一週間を見ているが、それ以上長くなると食料も限りがあるので調達しなくてはならない。その時は自分が狩りを行うことで、あるいは村人の農作物等と交換を求めることになるかもしれない。

 バニスがどういう説明をしたのかは分からないが、村人は遠巻きにこちらを眺めているがそこには奇妙なものを見るような、怪訝な表情が見て取れた。子どもたちにも親が言い聞かせているようで近づこうともしない。


 その一方で魔術師二人は着々と調査の準備をしていた。なにに使うのかわからないつぼや、変わった形の、地面を掘るために使う用途の器具も用意している。

 どういった地形にあるのかは分からないが、山腹にある洞穴に入るというのだからその為の準備も必要だろう。なにかと有用な縄や、入り組んだ形だった場合を考えて目印をつけられるように塗料なども持っていく。秋口だが夜間は冷えるかもしれないので体全体を覆える布も必要だろう。

 気になるのはこちらの用意に比べて二人のものはそうした品よりも、調査用のもののほうが圧倒的に多い。自分に任せているのか、それとも必要十分だと判断しているのか。聞いても答えてくれない(集中している)ので、いざという時に備えて多めに持っていくこととする。


 到着した時にはすでに日が傾き始めていたので、とりあえずは夜を越して夜明けとともに出発することとした。

 焚き火を囲んで夕食を取ったがその間も二人は黙ったままで、時折二人で話し合っていた。漏れ聞こえる言葉は専門的な内容であったため、やるかたなく大人しくしていた。

 そうしていじけていると、旅をしてから初めてバニスの方から話しかけてきた。


「それで、君はなにができる」


 そう言えばこちらの得物や戦闘スタイルについて聞かれていなかった。正直に話すわけにもいかないので、どう答えようか考えながら話す。


「基本はこの剣と、緊急用の手斧だね。後は一応奥の手もある」

「それは?」

「あー、うん。細かくは話せないけど、その後を考えなければ「大概はどうにかなる」よ」

「ほう……」


 感心したように反応して見せるバニス、今ので理解してもらえた、納得してもらえたかはわからないがこちらとしても秘密をそうそう明かすわけにもいかない。申し訳ないが自分もバニスを信頼してはいないのだ。情報は必要なときにしか教えてはいけない。そう「学ばされた」。

 いつもの頭痛に額を抑えていると、ミニットがこちらをじっと見ている。


「どうしたの」

「それは剣ではないってこと?」

「そうでもあるし、そうでない場合もある」

「……じゃあ破壊能力は?」

「えーと……」

「あるんだ」


 尋問のように問い詰められ、なにかを確信したようにみせたミニットの瞳が光ったのを確かに見た。だから怖いんだって。


 交代で火の番を務めながら迎えた翌日は曇り空ではあったが、雨の気配はみられなかった。とはいえいつ気分が変わるかわからない空模様に気をつけつつ、村の裏手にある山に侵入する。

 バニスが村人と話した時、山に入るということを言った時にはやんわりと止められたらしいが、当のバニスは意に介していないようだ。

 すると村の方から誰かがでてきた。腰の曲がった老人だ。彼はこちらを見つけるとゆっくりと歩いてくる。こちらから近づいたほうが早いので動き、村の入口手前で向かい合う。


「どうされましたか」

「……森に入る気か」

「それが?」


 やはりそのことだったが、バニスが露骨に面倒そうに相手をしている。だが年の功か気にしているふうでもない。


「やめておけ」

「忠告はありがたいですが、こちらにも理由がありますので」

「……魔術師か」


 どこをみてそう判断したのかはわからないが、狩りでもなく山に立ち入るのはそういった人間しかいないのかもしれない。


「ならば祠には近寄らんことだ」

「それは伝承に謳われる蛇のことですか」

「あれは伝承じゃあない、いや。「今となって」は伝承ではなくなった」

「それはどういう……」

「警告はしたぞ」


 そう言うと老人は翻り村に戻っていく。その際にぽつりと呟いた言葉、バニスにもミニットにも聞こえなかったようだが自分にはその口の動きから理解できた。


「じきにこの村は終わる」


 その意味を理解するのにかかった時間はわずかだった。

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