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別視点~森の少女~

 朝起きたら村の大人達が集まってなにか話してた。なんだろうとずっと見てたらそのうちお話が終わったみたいで、お母さんもこっちに戻ってきた。どうしたの?って聞いたら村のはずれに誰かが「捨てられた」らしい。私はこの村で生まれたから知らないけれど、ときどきあることみたいで隣のジラくんもあそこのお母さんのほんとの子どもじゃないって聞いた。

 お母さんは気をつけるんだよって言うけれど、どうしてなのかは教えてくれなかった。いろいろあるんだって。あっちの方には前に一度だけ見たことのある、緑の肌の大きなおじさん「オーク」って種族の人らしいけれど、あの人とも話しちゃいけないし会いに行くのもだめって言われた。

 ニリちゃんはずっと昔から、この村の誰よりも前からここにいるって言うけれど、ならどうして仲間外れにするんだろう。誰も教えてくれない。


 こんなときお父さんがいてくれたら教えてくれたかもしれない。お父さんはほんとうにいろんなことを知ってて、聞いたことは全部答えてくれた。ある朝いなくなっていて、お母さんに聞いたら「すごく遠いところ」に行っちゃったて言ってた。よくわかんないけど、そのうちまた会えたらいいな。

 新しく来た子にも会えたらいいな―って思ってたら、みんなで遊んでいるときに村の中を歩いているのを見つけた。黒かったり太陽が当たったところがキラキラ光ったり不思議な髪色をしてる男の子だった。

 すぐに話しかけようと思ったんだけどみんなに止められた。みんなもお母さんとお父さんにだめって言われているみたい。


 外に出てた大人の人たちもひそひそなにか言っててちょっと怖かった。そうしてるとジラくんがあの子に石を投げた。びっくりしてたら他の子達も次々に投げ出して、あの子も驚いていた。止めたかったんだけどどうしたらいいかわからなくて何も出来なかった。あの子も怒っちゃたみたいで向こうからも石とか動物のうんちを投げ返してきてた。そうしているうちにあの子は帰っていっちゃった。とぼとぼ歩いてて私も悲しくなっちゃった。

 

 そのあと、何日か経ったころどうしても謝りたくてあの子の家の方に向かうことにした。お母さんや他の人に見られたら怒られるから、バレないようにこっそり村を抜け出した。

 緑色のおじさんが住んでいるところは村の中からも小さくみえるくらい(すっごいボロボロだけど)だから私の足でもすぐに着けた。けれどどうやって話しかけようか悩んでいたら、家の中からあの子が出てきた。自分でもわからないけれどびっくりして隠れちゃった。


 覗き見てるとあの子は手に弓と矢を持っていた。村の人でも弓矢を扱える人は少ないから、あんなに小さい子(私より年下っぽい)がほんとうに使えるのかなって思っちゃったけどあの子はそのまま村の近くの森に入っていった。お母さんから危ないから絶対に行っちゃだめって言われていたから、それを伝えようと思って私も森に入っちゃった。


 なんとなく話しかけづらいまま、あの子の後ろをついて歩く。バレないように気をつけながら、こっそり木の陰に隠れてた。あの子は草を編んでかごを作ってそれを持っていろんな木の実とかを取っていた。驚いたのはあの子はすっごく手先が器用で、たぶん動物を捕まえるための罠をつくったり他にもどういう意味があるのかわからないけどなにか変わったこと(葉っぱをなめたり潰して手につけたり)をしてた。

 けど背中の弓矢は使わないみたいだけれど、私はその様子をずっとみてた。気づくとお日様が傾き始めていたのでもうすぐ帰らなきゃって思っていたら、あの子が声をかけてきた。

 最初はわからなかったけど、隠れているはずの私に話しかけているのだと気づいた。

 姿を表したらあの子はこちらをじっと見つめてきた。隠れていたのがバレたのがとても恥ずかしくて、同時にお母さんの怒る顔が目に浮かんで何も言わず離れて走り出しちゃった。

 家に帰ってると思ったんだけどどうしてかいつまでも家が見えてこない、どんどん不安になってきて息が荒くなってくる。もうすぐ暗くなるのにどうしよう、村の中にいないのに誰か気づいてくれるかな、そうこう考えてたら目の前に急に大きな影が飛び出してきて尻もちをついた。


 見たらそれはオオカミで、お父さんが気をつけるようにって図鑑を見せてくれたのを思い出した。毛がナイフみたいに鋭くて、牙もとっても大きい怖い生き物だって言っていた。

 大人の人でも危ないから、見かけたらすぐに逃げるように言われていたのに尻もちついたまま力が入らない。誰か助けて、声が出ない。震える手で地面をつかむ。

 気が遠くなってきたとき、後ろから大きな声がした。


「こっちだ犬っころ!」


 振り返るとそこには「あの子」がいた。

 まばたきもできないぐらい驚いて、彼を見つめる。私とオオカミの間に立ってそれを睨みつけている。どうして、逃げて。そう叫びたいのに怯えるばかりでなにもできない。

 オオカミも逃げ出すことなく彼を見ている、彼はと言うと弓矢を手にとることもなくただ立ち尽くしている。そうしていたらオオカミが私なんか一飲みにできそうな大きな口を開け、彼に飛びかかった。彼は手でそれを防ごうとして顔の前に出した。そんなことでどうにかなるわけない、思わず目をつむり悲鳴が出た。


「危ない!」


 いつまでたってもなにも聞こえてこない、彼の悲鳴もなにも。けど小さい唸り声が聞こえた気がして目を開けた。そうしたらオオカミは彼の腕に噛みついたままじっとして動かない。

 すると彼は噛まれていない方の手でオオカミの鼻にパンチした。オオカミが悲鳴を上げてそのまま逃げていった。血だらけかと思った彼の腕が白く輝いて見えた気がしたけれど、気づいたらもとに戻っていた。


 彼はこっちを見て話しかけてくる。大丈夫かとこっちの心配をしてくれた。ヨロヨロと立ち上がり、私も彼の腕の様子を聞く。でも少しも傷はついていなかった。

 そのまま家の方まで送ってくれたけど、村の中まででは入らないらしい。それがすごく恥ずかしくて、とても申し訳なかった。別にいいよと言ってくれた彼が、私よりもずっと年上に見えた。表情もすごく落ち着いていて、大人みたいだった。でも私が道に迷ったと聞いてきたが、そんなことないと言うとすごく不思議そうな顔をしている。


 お別れを告げられたけど、そのままじゃ絶対だめだと思って勇気を出して彼にまた会えるか聞いてみた。大人の人たちはだめだって言ってもこれだけは聞けない。恐る恐る彼を見たら、いいよと言ってくれた。

 そのまま別れて家に帰った。お母さんはどこに行っていたのって聞いてきたけど内緒って言った。初めてお母さんに嘘をついてとてもドキドキした。けどそれよりも彼にまた会えるのがうれしくて、寝るときもずっと顔が熱くてすぐに眠れなかった。こんなの初めて、彼に聞いたら教えてくれるかな。

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