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白銀の戦士は世界を二度救えるか  作者: バルバロ
リュグレムシア遠征編
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観光

 ピーシースに待てを告げられて六日が経過した。約束の期限まであと一日と迫ったところで、ピーシースではない別のフィニク人ではあるが、モナガンの門弟が訪ねてきた。

 それは待ち望んでいた、リュグレムシア市内の案内の知らせであった。忍び込みはしたものの夜間で、かつ見れたのは街のごくごく一部であったのだから素直に嬉しい知らせである。

 件の急務の用事は落ち着いたようで、モナガン自ら案内をしてくれるとのことだ。門弟に聞いてもそうそうあることでは内容で、異例とも言える特別待遇に皆怪しむ声もあった。

 だが数日の会話ではあるがモナガンの人柄、そして自分たちを捕らえたとして彼らに何の得があるのか。四人で意見を交わした上で、全員が誘いに乗ることを承諾した。

 門弟はその晩は共に仮拠点で一夜を過ごし、明朝にリュグレムシアへと足を運んだ。


「ようこそおいでなさった!」


 人の良さそうな笑顔を浮かべて出迎えてくれたのはモナガン。中央区画に繋がる門の前で合流し、そのまま中へと入っていった。

 その際に全員分のローブを用意してあり、それを被っての行動となった。横にいるのがモナガンであれば衛兵も不信がることもない。

 モナガン側は他に二人の門弟、ここまで共に来たカナラという青年とピーシースである。カナラは線の細い印象を受けるが、その顔には聡明さが見て取れる。一方ピーシースは相変わらずこちらを見るときだけ刺すような視線を送ってくる。


「あそこの屋根だけ見えるのがズニェールの御殿かつ政務を行う建物だ。皆はアギバル、神話にも出てくる神々の住まう居城に例えてそう呼んでいるよ」

「尊敬されておられるようだ」

「……当然だろう」


 一瞬の間に、この国の複雑な状態を想像させる。魔術師は基本的に政治などから距離を置く傾向にあるが、リュグレムシアは積極的に軍事にも魔術師を起用する。それをよく思わないものもいるというのは市井の噂である。

 実際に一部の魔術師は中央から物理的にも距離を取っているらしい。


「工房には入れてもらえるのか?」


 アギアの質問に少しだけ気まずそうに応えるモナガン。


「今回は私が個人的に使っている場所に行こうと思っているよ。流石に書物が多くある場所は警備も厳重でね、私の紹介であっても入るのは難しいんだ」

「それは仕方ないよ」


 アーケリアでは、そしておそらくリュグレムシアにおいても本というものは誰でも閲覧できるようなものではない。限られた知識人のみが触れることが出来る。そもそも文字を読むということ自体が誰でも出来ることではなく、内容が専門的であればそれだけで読めるとも限らない。

 リュグレムシアは魔術の研究において最先端を走ると言われており、その中身を知るのは容易ではない。


「だけどその前にもっと街を見ていこう。この先にある神殿は最近生まれた建築技術で建てられていて、携わった職人はこの国でも指折りの名工なんだ」

「それはぜひとも見てみたい!」


 大理石を複雑に組み合わせて生まれた神殿は外観と堅牢さの両立させた見事なもので、モナガンだけでなくついつい通りすがりの人にも説明を頼んでしまった。その際にピーシースからの圧力を感じたが努めて無視した。

 アギアたちは呆れていたが、こういった知識を得られる機会はそう多くはない。この機会に少しでもこの国の文化に触れようと熱は高まる一方だった。

 先代、現在のズニェールの父である者はこの地域に根づいている宗教を排除しようとしていたが、今はそこまで厳しい態度は取らず、神殿の建築にも口出しをすることはなかった。

 これも今のズニェールが他国に侵略する上での基盤づくり、内乱を防ぐための施策の一つだろう。

 その後も外側だけだが図書館や商店なども紹介された。魔術とあまり関係ないものが続いたのでアギアは退屈そうだったが、シレナは興味深そうに顔をキョロキョロと見回していた。


「どう?」


 その間もずっと貼り付けたような微笑を作っていたリィンに話しかけた。彼女にとっては改めて感動を覚えるようなこともなく、神殿は初めて完成したのを見たらしいがだからといってさほど驚くこともなかったようだ。


「なんてこともないよ、あたしに気にせず楽しんでちょーだい」

「悪いね」


 わざとらしく微笑んでみせたリィン。


「いいよ、こんなに楽しそうに街を歩いてる人も珍しいから。それを見てるのも面白いよ」

「そ、そうなんだ……」

「うん。こんな息苦しい街でそんな顔を見ることになるとは思わなかったよ」


 どんな顔をしていたのだろうか。そこまで表情に出るタイプではないと思っていたが、それだけこの街を堪能していたということだろうか。

 確かに剣呑な空気を感じることもあったが、それを含めて知識欲を掻き立てられる。全てが目新しく、久しぶりにこの世界が生まれた場所から遠く離れているのを思い出させてくれた。


「じゃあそろそろ私の家に向かうとしよう」

「やっとか~」


 露骨に嬉しそうにするアギアを見ながら中央地区の端にあるモナガンの工房かつ、自宅へと歩いていく。

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