(15)
見えたのは闇ではなく冷たい石畳と石の壁。
なんでぇ俺様は死んでねーのか?しょーもない夢見ちまった。
身体は痺れたように動かないが、意識は段々としっかりしてくる。
胸に温もりを感じ、そして聞こえる夢で聞いた音。
‐ドクン‐
何時でも共にありながら、気にする事のなかった命のポンプの音。
それが力強く、全身に命を送り込む。
まさか!
心臓につけられた傷が、塞がっていくのを感じ確信する。
心臓の治癒。
この場で治癒が使えるのは一人しかいない。
側に佇むナーガを見つけ叫ぶ。
「何してやがるとかげ止めさせねーか!気づいてねーのかこいつの魂が持つ訳ねぇ!こいつが死んだら、俺様だけじゃなくおめぇも死んじまうんだぞ!」
聞こえているはずのナーガは動かない。
力強くなっていく鼓動に比例して、深まっていく絶望にフェンリルは目を閉じた。
耳に届くマスターと呼んだ少年の声に、驚きで再度その目は開かれる。
「我ルークは、魔狼フェンリルとの契約を破棄する」
魂を縛っていた鎖が外れ、自由になったのをフェンリルは感じた。
魂の契約は破棄され自由になった魂と逆に、まだ痺れる身体を無理矢理動かしフェンリルはルークを見上げる。
そこにあったのはいつもと変わらぬ少年の笑顔で、もう何も触れられなくなった手をフェンリルの頬に伸ばす。
「フェンリル・・・ナーガ・・・大好き」
身につけていた衣服を残し、ルークの姿は完全に掻き消えた。




