(13)
まるでヨルムンガンドの頭が膨れ上がった様に砕け散り、ステンドグラスが爆風で割れ落ちて、奴の死を教えてくれる。
フェンリルがくれた加護は、全てを見せてくれた。見たくないものも。
爆心地の間近にいたフェンリルは吹き飛び、何度も床に跳ね転がってやっと止まった。
折れた腕だけでなく、蹴られた胸からの激痛に堪え立ち上がる。
奴の爪や爆発の影響からも、逃れられるぐらい強く蹴られたんだ。ヒビぐらいで済んでたとしたら幸運だ。
一呼吸すらも痛みを訴える体を動かし、フェンリルに近づく。
側で膝をつくと新しい血溜まりがビシャッと音を立てる。
見開いたままの紅い瞳はもう何も映してないように見え、触れると爆発の残熱かそれとも命の残り火か、その身体は温かった。
暗闇に動く白い影に気づきそちらを見ると、ナーガが自らを貫いた槍を引き抜き、こちらに近づいて来るところだった。
助けて・・・舌が張り付いたように動かず言葉にならない。
それは返ってくる答えが、わかっていたからかも知れない。
僕の視線に気づいたナーガは、ゆっくりと頭を左右に振った。
こうしている間にも足元の血溜まりは広がり、闇の中でもはっきりと見えていたナーガの姿が、段々とぼやけて見づらくなっていく。
フェンリルの加護が消えかけているんだ。
僕は呟く。僕が言葉にするしかその意味を成さない言葉。
呟きを聞き取れる距離にいないはずのナーガが、その呟きの意味に気づき茫然とその場に立ち尽くす。
ごめんねナーガ。約束守れない。




