(10)
背中を揺すられ、いつまで寝てやがんだ!の声に叩き起こされる。
頭がぼやっとして自分が何処にいて、何をしていたのかが中々理解出来ない。
目の前には光る壁があって、ナーガとフェンリルの姿が見える。
ズキンと頭が痛み、何をしていたのか思い出し立ち上がる。
「そんなに長くは持たないぞ」
今は魔法攻撃を、ナーガの光壁で防いでいるんだ。
「たくっ勝手な事しやがって。まあ意識を失っても武器を放さなかった事だけは褒めてやるぜ」
右手には短剣がしっかり握られている。
ナーガとフェンリルは、僕が意識を失う前よりも傷が増えている。
「ごめん・・・僕・・・」
僕を守りながら戦ってたからだ。
いくら奴が僕は後回しと言っても、いざとなれば先に殺して終わらせる事も出来るし、守らない訳にはいかない。
「済んでしまった事はもういい。それよりもこれからどうするかだ。正直もう打つ手がない」
遠くから笑みを浮かべながら、魔法を放っている奴には今だにかすり傷一つない。
「まだとっておきが残ってんじゃねーか。俺様の封印を解け」
致し方ないと同意するナーガ。
今まで頑なに拒んでいたのに・・・それだけ追い込まれているんだ。
「封印を解いたら、奴の光壁を破る事が出来るの?」
「さあな?解放された力を全部注ぎ込んで五分五分ってとこだな」
力の器はいわばダムで力は水だ。
封印はその水を使えなくする。
使えなくてもそこに存在しているから、新しい力をそこに溜める事は出来なくなり、結果的に弱くなる。
力は使えば失くなる。
チャンスは一度切り、しかも光壁を破っても次を張られる前の一瞬で、致命傷を負わせなければいけない。
光壁を破るだけでも、自信家のフェンリルが五分って言うなら、本当はもっと可能性は低いはずだ。
「早くしな!」
封印の解除を急くフェンリル。
何も出来ない僕には見守る事しか出来ない。
額から流れる血が目に入り、視界が悪くなった瞬間に浮かぶ考え。
「待って!」
「時間がね~んだ」
待ったをかける僕に、苛立つフェンリル。
蛇は奴が昔、創り出したと聞いた。
じゃああれは・・・思考が目まぐるしく巡り一つの結論に辿り着く。
奴が造り出したなら、その能力を奴が持っていてもおかしくはない。
「聞いて」
ほんの少しでも勝つ可能性を上げるんだ。
僕の作戦を聞いてフェンリルは「俺様はそれに乗るぜ。トカゲはどうすんよ」とナーガに振り「私はマスターの決めた事に従うだけだ」と同意する。
三人がやるべき事は決まった。
ナーガの光壁が奴の魔法に破られ、僕とフェンリルが左にナーガは右に分かれる。
「短剣を貸しな。力は何かに集中させた方が集めやすいからな」
フェンリルに短剣を渡す。
「ちったぁマスターらしくなったじゃねーか」
笑うフェンリルに、照れ臭いながらも笑みを返す。
部屋全体がナーガの力で歪んでいき、僕は組んでいた光壁を発動させフェンリルと自分を守る。
僕等の持っていたもの、僕等の旅で得たもの、すべてを奴にぶつけるんだ。




