(4)
迫る兵士と剣を交える事なく、風の刃と氷の槍で捩じ伏せながら、ナーガとラルクは駆ける。
「頼むぜナーガ」
鞄の中から力を集束させ、三つ目の門を氷に閉じ込める。
「残りは北門だけだ」
休む事無く次の門に向かう。
「聞こえたか?」
鞄からナーガ。
「聞こえてねぇ俺は聞いてねえぞ」
否定するラルク。
また暫くして、今度は連続で否定しようない爆発音が城から聞こえる。
「くそっ!フェンリルは何してやがるんだ」
「負け犬に静かにしていろと言うのが無理な話だ」
実際はフェンリルのせいではないのだから、酷い濡れ衣だ。
これも日頃の行いの賜物だろう。
「ラルク・・・いや今はサイと呼ばせてもらおうか。まだ私達に隠している事があるな」
「何でそう思うんだ」
「ならば聞くが、何故そこまで人間世界の後の事まで気にする必要がある。違反者の討伐を優先するなら、東門の連中は囮として負け犬と合流した方が合理的だ」
本当に鋭いなと呟き、馬を駆るラルク。
「隠してたとかそんな上等なもんじゃないのさ。俺自身も最近迄、忘れてたんだからな」
氷の槍で迫り来る兵士を倒しながら、ナーガはラルクの次の言葉を待つ。
「何しろ十年以上前に、オーディン様からナーガの紋章が入った衣を受け取った時に、伝言だなんて言われてな」
伝言は一言リリオルを頼む。
誰からの伝言なのかすらも言われなかった。
その時にはリリオルと関わっておらず、忘れていたのも当然だろう。
「貴様も何処の誰だかも知らない伝言一つで、苦労をしょい込むとは難儀な性格だな」
ラルクは、苦笑を浮かべる。
「だな。だけど今俺達はリリオルにいる。間違いなくルークに関わる誰かのお願いだと思わないか?」
最後の一つ北門が、その視界に入って来る。
そして北門を通り抜け、門に向かう騎馬の一団。
「マズイぞ。間に合わなかったか」
このまま行かせてしまえば作戦は破綻する。
一番懸念された事だ。
門を封鎖する間、ラインハルトとパパスを守るのは、雇った少数の兵だけだ。
どちらかが討ち取られれば後の事はままならず、リリオルの未来は成り行きに任せるしかなくなる。
後の北門を封鎖して懸命に馬に鞭を入れるが、走り疲れた馬では逆に離されていく。
遥か遠くを走る一団を見て歯がみする。
「ナーガお前一人なら追いつけるか?」
予定変更せざるを得ない事態に、鞄に手をかける。
その時、城のバルコニーから見ていたフェンリルが、ドランのリュックを無理矢理剥ぎ取り、火をつけ騎馬の一団に向けて放り込んだ。
何だありゃ?と思う間もなく、リュックは大爆発を起こし空を赤く染め、地面がクレーターと変わる。
「追いついてたら、俺達も巻き込まれてたな。勝手な事しやがって・・・なんて事は言えないな。助かったぜ」
怯える馬を宥め、東門に向けて駆け出す。
「さあそろそろ出番だぜ。打ち合わせ通り頼むぞ」
簡単に討ち取られてるなよラインハルト・パパス!




