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狼竜物語  作者: レオ
87/255

(4)

 迫る兵士と剣を交える事なく、風の刃と氷の槍で捩じ伏せながら、ナーガとラルクは駆ける。


「頼むぜナーガ」


 鞄の中から力を集束させ、三つ目の門を氷に閉じ込める。


「残りは北門だけだ」


 休む事無く次の門に向かう。


「聞こえたか?」


 鞄からナーガ。


「聞こえてねぇ俺は聞いてねえぞ」


 否定するラルク。


 また暫くして、今度は連続で否定しようない爆発音が城から聞こえる。


「くそっ!フェンリルは何してやがるんだ」


「負け犬に静かにしていろと言うのが無理な話だ」


 実際はフェンリルのせいではないのだから、酷い濡れ衣だ。


 これも日頃の行いの賜物だろう。


「ラルク・・・いや今はサイと呼ばせてもらおうか。まだ私達に隠している事があるな」


「何でそう思うんだ」


「ならば聞くが、何故そこまで人間世界の後の事まで気にする必要がある。違反者の討伐を優先するなら、東門の連中は囮として負け犬と合流した方が合理的だ」


 本当に鋭いなと呟き、馬を駆るラルク。


「隠してたとかそんな上等なもんじゃないのさ。俺自身も最近迄、忘れてたんだからな」


 氷の槍で迫り来る兵士を倒しながら、ナーガはラルクの次の言葉を待つ。


「何しろ十年以上前に、オーディン様からナーガの紋章が入った衣を受け取った時に、伝言だなんて言われてな」


 伝言は一言リリオルを頼む。


 誰からの伝言なのかすらも言われなかった。


 その時にはリリオルと関わっておらず、忘れていたのも当然だろう。


「貴様も何処の誰だかも知らない伝言一つで、苦労をしょい込むとは難儀な性格だな」


 ラルクは、苦笑を浮かべる。


「だな。だけど今俺達はリリオルにいる。間違いなくルークに関わる誰かのお願いだと思わないか?」


 最後の一つ北門が、その視界に入って来る。


 そして北門を通り抜け、門に向かう騎馬の一団。


「マズイぞ。間に合わなかったか」


 このまま行かせてしまえば作戦は破綻する。


 一番懸念された事だ。


 門を封鎖する間、ラインハルトとパパスを守るのは、雇った少数の兵だけだ。


 どちらかが討ち取られれば後の事はままならず、リリオルの未来は成り行きに任せるしかなくなる。


 後の北門を封鎖して懸命に馬に鞭を入れるが、走り疲れた馬では逆に離されていく。


 遥か遠くを走る一団を見て歯がみする。


「ナーガお前一人なら追いつけるか?」


 予定変更せざるを得ない事態に、鞄に手をかける。


 その時、城のバルコニーから見ていたフェンリルが、ドランのリュックを無理矢理剥ぎ取り、火をつけ騎馬の一団に向けて放り込んだ。


 何だありゃ?と思う間もなく、リュックは大爆発を起こし空を赤く染め、地面がクレーターと変わる。


「追いついてたら、俺達も巻き込まれてたな。勝手な事しやがって・・・なんて事は言えないな。助かったぜ」


 怯える馬を宥め、東門に向けて駆け出す。


「さあそろそろ出番だぜ。打ち合わせ通り頼むぞ」


 簡単に討ち取られてるなよラインハルト・パパス!

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