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狼竜物語  作者: レオ
76/255

(7)

 ナーガは素早く思考を巡らせる。


 セイドリックの使い魔である飛竜は地面に縫い付けており、位置も魔力を通した霧により把握出来る。


 徹底的に利を活用すれば、セイドリックは手も足も出なくなるはずだ。


 そう判断したナーガは霧の中にその身を溶かし、空からのロングレンジの攻撃を選択する。


 常人なら視界の悪い中かわす事など出来ぬ槍を、セイドリックがかわしていくのを感じ取り、ナーガは僅かながらの焦りを感じる。


 気象条件に合わぬ生み出した霧を、維持するのにもかなりの力を使っている。


 かわしようのない絶対零度結界は、力を使いすぎて倒せなければ完全に後が無くなる。


 霧の中からセイドリックが挑発する。


「なんでえ芸のない奴だな。さっきから馬鹿の一つ覚えみてえに、安全なとこから撃って来るだけ。それとも俺とまともにやり合うのが怖いか?」


「そんな挑発は無駄だ。現に貴様は手も足も出ないではないか」


 セイドリックがいる場所が、放射状に明るくなる。


「だな、やっぱり同じ高さにいなきゃ不公平ってもんだろ」


 放射状の明りが、ナーガに向かって飛んで来る。


 先程セイドリックが入った家で手に入れたのだろう、火のついた瓶がナーガの数メートル手前で力を失い落ちていく。


「射て!」


 セイドリックの号令と共に響く無数の風切り音。


 霧は相手の視界を妨げるが、ナーガ自身の視界も狭める。


 完全にかわすのは無理だと判断して、的を小さくすべく身体を小さくしていくが、翼や肩口に矢が突き刺さる。


 人が周辺に集まって来ていたのは知っていた。


 霧で人の位置を把握は出来るが、それがセイドリックの配下なのか、ただの街人なのか迄はわからない。


 何よりセイドリックに、配下を呼びに行く間等無かったはずだ。


 地表に不時着し、身体に刺さった矢を抜いていく。


「これで平等ってもんだな」


 完全に槍をかわすのは無理だったのだろう。


 無数の切り傷を刻んだセイドリックが、ナーガに近づいて来る。


「ん~?俺の無能部下どもが集まって来たのが不思議な顔だな。人間ってのは本当に駄目な生き物だと思わね~か?せっかくお前に助けられたってのに、金をちらつかせたら簡単にお前を裏切るんだぜ」


 セイドリックの配下を呼んで来たのは、あの人質になっていた夫婦かと納得する。


 ナーガは素早く自分の状態を確認する。


 まだ飛べる、そしてまだ戦える


「人間なんて皆こんなもんさ」とセイドリックは笑い、持っている瓶に火をつけ投げる。


 瓶はナーガの間近で割れ炎を上げた。


「まあまあ楽しかったぜ。名残惜しいが終わりだ、射て!」


 セイドリックの号令は、そのまま霧に溶け静寂へと変わる。


「貴様はろくな人間に会って来なかったようだな。私は恐怖にも屈っせず絶対に裏切る事の無い人間を知っている」


 もっとも私もあの少年に出会う迄、似た様な考えだったとナーガは自嘲する。


 霧の中からその少年の声が聞こえて来る


「ナーガ大丈夫?」


 続いて狼の声。


「ぶひゃひゃひゃやっぱやられてやんの。俺様に露払いさせてねーでさっさと変わりな」


 貴様は余計だとナーガは立ち上がる。


「小細工無しの第三ラウンドといこうか」

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