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狼竜物語  作者: レオ
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(5)

 濃い霧は街全体を覆っているようで、視界はかなり制限されており、触れると一瞬ナーガに触れたような既視感に襲われる。


「もしかして、この霧ナーガが作り出してるの?」


 フェンリルは頷き「真昼間から奴以外にこんな事しね~よ。早く行かね~と奴に先を越されるぜ」と霧に飛び込む。


「ラルクさん僕もリタイアします。後は任せても大丈夫ですか?」


 任せろと親指を立てるラルクさんを見て、僕もフェンリルに続いて霧に飛び込む。


 チラチラと先を動く影に「フェンリル待ってよ」と叫ぶと影は屋根に登っていき、横から「何処にいこ~てんだ?こっちだ」の声。


 どうやら猫か何かを追い掛けてたらしく、慌てて声のした方に方向転換すると顔面を強打する。


「いたたた…何でこんなとこに木が・・・」


 フェンリルが顔面を押さえ疼くまる僕に近づき「おめぇは一人で何やってんだ?しゃーねぇなぁ乗れ」と背中に乗せ走り出す。


「この霧は普通の霧じゃないの?」


「普通の霧さ。ただとかげの魔力を通してある、俺様達の居場所も把握してるはずだ」


 触れた時にナーガを感じたのはそれらしい。


 霧はフェンリルとルークの姿を隠し、新たな襲撃を受ける事なく街を駆けぬける。


「それだけじゃねーぜ。奴にとってはホームみてぇなもんだ。赤毛は俺様達を罠にかけたと思い込んでたんだろうが、罠を張ってたのはとかげで、かかったのは赤毛だ」


 魔法は力の具現化で、現象を生み出す。


 炎は物体の分解によって可燃性の気体を生じ、それが燃焼する事によって炎となる。


 力によって可燃性の気体を生み出すのが炎の魔法。


 力の具現化といっても酸素だったり、必要な物は自然界から取り入れる。


 障壁によって魔法を防げるのは、力で生み出した可燃性の気体を打ち消すからだ。


「とかげの氷だって空気中の水分を使ってんだ。最初から密度を濃くする事で発動は速くなる。零から始めるより一から始めた方が完成が早いって寸法さ」


 難しくてよくわからないけど、準備万端て事だね。


「で、何処に向かってんの?」


「赤毛の臭いを片っ端から追い掛けてやるさ。先にやってとかげの悔しがる顔がみてぇからな」


 流石トリプルSと呆れる。


 オラァ!とフェンリルの気合いの一撃で霧の中殴り倒される男。


 残念ながら赤毛ではなく外れだ。


 フェンリルの嗅覚で追い掛けてるはずなのに、何故違う男に辿り着いたんだろう?


 僕が倒れた男の胸元をまさぐると、出てきたのは男物の下着。


 ばっちいからと指二本で持ち上げる僕と、それを見て激高するフェンリルの叫び。


「俺様にパンツを追っ掛けさせやがって!ぜって~見つけてぶっ殺す!」


 赤毛は新たにフェンリルの怒りを買ったようである。


 リイムの数ある建物の中の二階に、セイドリックは少ない配下と共に潜んでいた。


 人の出入りで目立たない様に、見張りからの報告は一括で自らがしている様に、配下の魔術によって配管でされている。


 窓には厚いカーテンと臭いが洩れぬ様に、目張り迄する念の入れようである。


 傍らにいる魔術師の配下に声を掛ける


「おい、次の報告はまだか?」


 配下からはまだとの返答。


 最初の報告で獲物は二手に別れたと聞いているが、そろそろ来るはずの次の報告が来ない。


「そろそろ何処で、どいつから狩るか決めなきゃいけね~んだがな」


 全く無能共は使えね~ぜと、独りごち鎧を付け帯剣する。


 配下の魔術師が不思議そうに「まだ報告が来てませんが何処に?」とセイドリックに聞くと「お前この部屋から出てみな」と言われドアを開けたと同時に、配下の背中から銀色の刃が突き出し床に倒れる。


 床に広がる配下の血溜まりと、部屋に飛び込んで来る二人組の男。


 既に抜剣していたセイドリックは、自分に突き出される男の腕を斬り飛ばし、それを見て一瞬躊躇したもう一人を袈裟がけに斬り伏せる。


 部屋に響き渡る片腕を斬られた男の悲鳴は「うるせーよ、他人の家じゃ静かにしろってママから教わってねーのか?」とセイドリックが剣を振ると悲鳴は止まった。


 ついで軽くセイドリックは剣を振り、付いていた血液は剣から離れ床に縦の紋様を付ける。


「でっ、お前ら誰よ?」


 既に絶命している男達からの返答はない。


 剣を鞘に収め「まっ誰でもいっか。俺には人の怨みを買う覚えはねーんだがな」と何事も無かったかの様に部屋を出て、階段を降りていく。


 一階には先程迄部下だった者達が、物言わぬ姿に変わり果てている。


「無能共とは言え、声も出させね~様に殺るたぁ中々いい腕じゃね~か」

 

 中々いい腕と言った男達を、剣を交える間もなく切り伏せた男の言葉とも思えない。


 明らかに侵入者は自分を狙っていた。


 どうして自分の居場所が知られたのか?


 大方連絡役の部下が喋ったのだろう。


 セイドリックは部下に忠誠心など求めていない。


 あるのは使えるか使えないかだけだ。


 セイドリックは、部下の横をそのまま通り過ぎドアを開け、真っ白な世界を目にして立ち止まる。


「何も見えね~ぜ、こいつは参ったな」


 触れた霧から一瞬ピリッとした刺激が伝わる。


 昼間から霧に包まれた街。


 途絶えた部下からの報告。


 見知らぬ襲撃者。


「もしかしてこいつは、俺が罠にかけられたのか?」


 濃い霧の中で、羽ばたき降り立つ何か。


 白い霧に浮かぶ二つの金色の瞳。


「そうか・・・こいつはてめ~の仕業か」


 金色の瞳の持ち主は答える。


「見つけたぞセイドリック。貴様に受けた借り、返しに来た」


 予定は変わったが、こんなのも面白いとセイドリックは剣を抜いた。


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