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狼竜物語  作者: レオ
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(8)

「ナーガの加護は、どんな能力を上げてくれるの?」


 ナーガは、いぶかしげな目で僕を見る。


 なんかマズイ事を、また言ったかな?


「私は加護について、それ程詳しく話してないはずだが・・・」


 黙っている訳にもいかず「あのね・・・フェンリルから加護をもらったの」と白状すると、何だかものすんごく嫌そうな顔。


「まずかった?」


 ナーガは渋面のままだ。


「まずくはない。だが奴の後塵を拝すなど屈辱だ」


 いつもクールな感じなのに、意外なナーガの一面を見れた。


 その後ナーガの加護を受けたんだけど、ナーガの加護は魔法の抵抗力や威力を上げてくれるんだって。


「今なら答えられる事には、何でも答えよう。何か聞きたい事はあるか?」


 う~ん、考えると沢山疑問はある。


「ここに来たのは何の為?ナーガから聞いた話なら、別にここじゃなくても聞けたよね」


「私の力を少しでも取り戻す為だ。信仰の対象が目の前に現れれば、信仰は嫌でも強くなる」


「ちょっとおかしくない?魂の契約で僕の魂を糧にしてるのに、本来の信仰も糧に出来るの?」


 魂の契約でマスターの魂を糧に出来て、信仰も糧に出来るならそっちのが得じゃない。


「私やフェンリルは、真の名で強制的に契約を結んだ訳ではないからな。本来契約とは力を失った者を治療する為に考えられたもので、私とマスターが結んでいるのは魂の契約と似て非なるものなのだ。同じ魂と一度しか契約出来ない、マスターと同じ世界に縛られる、マスターが死ねば使い魔も命を落とすのは一緒だがな」


 ナーガの説明によると、力を得るために何度も同じ魂と契約したり、力を奪うだけ奪ってからマスターを殺して逃げるのを防ぐ為の制約も、同時に課せられる。


 生命活動に必要な力を全てマスターに委ねる事によって、そのまま手に入れた糧を力に変えられるのが本来の契約らしい。


「じゃあナーガは強くなって、違反者にも勝てるようになった?」


 あれ?あまり浮かない顔。


「確かに少しは力は回復したが、ここにいる人間の数はたかが知れている。逆に力を蓄えている違反者との力の差はひらいているはずだ。何故遠回りして迄ここに来たのか?」


 ナーガが悩みだしたから、質問を変えよう。


「ナーガやフェンリルは、違反者を討伐する為に呼び出されたんだよね?」


「マスターは古き神と契約を出来る存在、私は神界側の古き神だ。そこまでは理解出来るが、何故、魔界側のフェンリルがいる?」


・・・質問したのに逆に疑問で返された。


 質問がまずかったのか、空気がどんどん重くなる。


「え・・・と、じゃあ別の質問!この島はナーガのお父さんが造ったんだよね」


「そうだ。残った最後の力で、父はこの島を造った。私と神界の者のみが出入り出来る様に結界を張り、私を信仰の対象とした」


 少し空気が和らいだ気がする。


「この島が造られたのを知ったのは、父が消えた後だ。私も兄弟達と同じく、力を使い果たし消えるつもりだったのに、何故父は私だけに、この島を造ったのだろうか?」


 疑問形で返され、言葉に詰まる。


「父が消えた後、私は何もして来なかった。それでもこの島がある為に存在し続けて来た。何の事はない、駄目な大人とは私の事だ」


「この世界を造ったのはナーガのお父さんでしょ!親ってのはね、子供の事が一番大切なんだって僕の父さんは言ってた。きっとナーガのお父さんは、皆消えて欲しくなかったんだと思うよ。でも力が足りなくてナーガの分しか島を造れなくて悲しかったはずだよ。ナーガには生きて自分の造った世界の行く末を見届けて欲しいんだよきっと」


 そうなのだろうかと、尚も迷うナーガの胸をしっかりしろと小突く。


「きっとナーガのお父さんは物凄く優しかったんだと思う。だってそうでしょ?真の名を使った契約は縛られはしても死にはしない。ナーガのお父さんは皆に死んで欲しくなかったんだよ」


 怒っているはずの、僕の目尻に涙が溜まる。


 ナーガはそんな僕を見てやっと笑う。


「マスターが、そう思うならきっとそうなのだろう。マスターは不思議な人間だな。いつも泣いていると思えば、私を神と知っても殴る」


 そんないつもってぐらい泣いてるかな?


「じゃあ最後の質問!人間は死んだら皆魔界に行って、魂を食べられちゃうの?」


「寿命で死んだ魂は、力を使い果たした状態だからその場で消えてしまう。行くのは寿命を使い果たさず死んだ人間の魂だ。その内の極一部だけは神界が回収して転生をさせる」


 転生て生まれ変わるって事だよね。


「極一部ってどんな魂?」


「特に信仰が厚い人間の魂だ。そういった魂は転生しても信仰厚い人間になる。そんな人間は周りにも影響を与えるので、信仰を糧とする神界にとっても得難い人材だ。かと言って転生させるのには相当な力が必要となる。やるのは数十年に一人と言った頻度だ」


「魔獣も?」


 意外な質問だったのか、ナーガは眉根を寄せる。


「魔獣の魂は力を使い果たす迄その場で留まる。可能だとは思うが、そんな事をするような酔狂な者はいないと思うぞ」


 可能ならここに来る時に会った魔獣は、そうかも知れないよね?


 それだけでも僕が、ここに来た意味はあった。


「何かさ・・・一日しか離れていないのに、物凄くフェンリルに会いたくなっちゃった」


 途端に険しい顔になるナーガ。


 あ~もうっ!無理矢理ナーガの口角を掴んで上げ笑顔にする。


 人間も、神様も、魔獣も、僕等は世界という箱に入っているいびつな積木みたいなもんなんだ。


 だから中々上手くは納まらない。


 でも小さな三つぐらいの積木なら、奇跡的にピッタリはまる事もあるよね?


 僕等がそうだといいな。


 こんな恥ずかしい事、口に出してなんてとても言えないけどね。

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