(6)
辿り着いた神殿は、小さな村には似つかわしくない程立派だった。
全てを真っ白な大理石で形作られ、入口の上にはナーガみたいな、竜の像が鎮座していた。
ここでナーガは、何を話してくれるんだろ?
山の頂上にある神殿から見渡せば、島は意外に大きく川もあれば森も海もある。
ただ海の上には僕等が抜けて来た、牛乳のような濃い霧が、今日も漂っている。
暫くすると、空に白いシルエットがこちらに向かって飛んで来るのが見え、登るのが大変だったのに、飛べるのってやっぱりズルイと一点を見つめる。
目の前に降り立った白いシルエットの持ち主は、ルークを見つけると「待たせてしまったみたいだな。眼が赤いが何かあったのか?」と目を細める。
「ううん、大した事じゃないよ。ちょっと嬉しい事があっただけ。それよりも見てよあれ、ナーガにそっくりでしょ」
入口の上にある像を指差す。
「似ていて当たり前だ。あれは私をモチーフにしているのだからな」
ナーガをモチーフにしているんなら似てて当たり前だ。
でも、それじゃまるで・・・
「神様みたいだね」
単純に思った事を言葉にしただけだったんだけど、ナーガの答えにビックリさせられた。
「みたいではなく、私は実際神と呼ばれる存在なのだ」
ただの魔獣じゃないとは思っていたけど、いきなり神様だなんて言われて僕は混乱していた。
「ここではなく中で話そう。全てを聞けば、神と呼ばれる存在に対してのイメージも変わるはずだ」
神殿の中に向かって歩きだすナーガに続いて、僕も中に歩いていく。
神殿の中は塵一つないぐらい綺麗に掃除されてて、この神殿が村の人達にとても大切にされているのがわかる。
神殿の一番奥に、びっしりと文字が彫られた大きな石版があって、僕とナーガはその前で歩みを止める。
「この石版はラグナロクについて書かれている。マスターはラグナロクをどのくらい知っている?」
九つの世界の終末戦争てのは授業で聞いた冒頭の部分で、その後は疲れて寝てたなんて口が裂けても言えない。
ばれないように急いで石版を読むと、すぐに僅かな知識と食い違う部分を見つける。
「一番偉い神様ってオーなんちゃらっだったような気がするけど、ナーガが神様達の長になってる」
「オーディンだ。だが人間に伝えられているラグナロクも、ここに書かれているラグナロクも、実際にあった大戦を元に作られた、嘘で塗り固められた作り話だ。その大戦の長は、私でもなければオーディンでもない」
作り話?何でそんな事をする必要があったんだろう?
それからナーガが語ってくれたのは、真実の物語。
もしそれがナーガの言葉じゃなければ、僕もよく出来た作り話だねって笑っていたかも知れない。
だってそうでしょ?
ナーガが語り始めた真実の物語は、一万年以上も生きていると言っていたナーガが産まれる、ずっとずっと昔から始まっていた。




